4月からは研修医生活が始まりますね。
今回は、初期研修医時代に100冊以上本を購入した立場から、
「これだけは読んでおきたい!」
「この本に助けられた!」
と思える本を、実際に使ってみた感想を含めながら、ランキングTOP10という形で発表したいと思います。
初期研修で学ぶべき重要な分野は大きく3つと言われています。
①救急
②感染症
③総合内科
これらの分野において役に立つ、読みやすくて、安くて、繰り返し読む価値のある本を厳選しました。
ジャンルも分かれているので「この10冊を揃えればとりあえず大丈夫」と言える10冊になっています。
是非参考にしてみてください!
研修医にオススメの本ランキング
第10位 レジデントのための腹部画像教室
救急で必須の腹部画像が網羅されています。
図が大きくて見やすいのがポイント。
腹部画像の読影は救急で必須のスキルです。
救急外来で夜間に当直している時に、一晩に数人は必ず腹痛の患者が来ます。
腹痛を主訴に受診される方は、ただの「感染性腸炎」だけでなく、
- 尿路結石
- 大動脈解離
- 腸閉塞
- 虫垂炎
- 憩室炎・・・
など、様々です。
特に、内視鏡や手術など夜間に緊急の治療が必要な場合、外科の先生へコンサルトする時には最低限の知識を持ったうえでコールしたいところです。
(「画像とりあえず見てもらえませんか?」というコンサルトで、とんでもなく怒られた研修医を見かけたことがあります。。。)
また、この本は画像が大きく画質も良いので、記憶に残りやすいです。
腹部の画像についてはこの本があれば安心!と言えますね。
第9位 胸部X線・CTの読み方 やさしくやさしく教えます!
胸部画像の基礎がシンプルにまとまってます!
X線もCTも1冊でカバー。
胸部画像については、基本的なサインからマニアックなサインまで様々なものがあります。
が、研修医のレベルで知っておくべき画像所見はそこまで多くありません。
本書はX線、CTの「研修医が最低限知っておくべき内容」が載っています。
マニアック過ぎないので、最初の1冊にもってこいです。
また、それぞれの章の終わりには、Q&Aで問題形式があるため復習しやすいです。
※ちなみに、これと迷ったのは「やさしイイ胸部画像教室」。
こちらも病態について詳しく書いてあり分かりやすいのですが、「やさしく」の方が値段が安くかつコンパクトなので、最初の1冊としてはそちらをおすすめしました。
呼吸器内科や循環器、腎臓内科など胸部画像を見まくる診療科を希望している場合は、こちらも迷わず買うべき良本だと断言できます。
第8位 プレゼンテーションの具体的なポイントとコツ
プレゼンの方法が具体的に書いてあるため、実践的。
シチュエーションに応じた具体例が載っているのが◎。
医師として必要なスキルの一つにプレゼンテーションのスキルがあります。
どの診療科においても必要ですが、まとめて勉強したり教えてもらう機会は少ないです。
つまり習うより慣れろってされがちです・・・笑
本書は、そんなプレゼンについての教育を重要視している研修病院(天理よろづ相談所病院)で生まれた本で、研修医が独学でプレゼンテーションを学べる1冊です。
プレゼンと一言でいっても、
- 患者が救急外来で受診し、入院の可否を上級医に相談する時
- その患者が入院し、翌朝に引き継ぎをする時
- 入院中の患者が急変し、他科へ転科する時
など、同じ患者で同じ疾患でもシチュエーションによって話す内容は異なりますよね。
この本を読めば、それぞれの状況ごとの時間配分や内容、ポイントを知ることができます。
また、プレゼンを勉強する中で
- 疾患についてのクリニカルパール(大事な医学知識)も学べる
のもこの本の良い点といえるでしょう。
◆下の記事ではこの本の内容も踏まえた上で、プレゼンの準備やコツをまとめています。
第7位 ジェネラリストのための内科外来マニュアル
内科初診外来には必携の書です!鑑別だけでなく疾患頻度や検査・治療も載っていてわかりやすい!
この本は主訴に対して鑑別が豊富なのが素晴らしいです。
それに付随して鑑別・検査・治療がコンパクトにまとまっているのも使いやすいです。
実は、最近になって厚生労働省が出している初期研修医のカリキュラムの一つに
- 一般内科外来を必須とする
という動きがあるようです。
主に紹介状を持たない初診患者あるいは紹介状を有していても臨床問題や診断が特定されていない初診患者を担当しする外来を指し、また地域医療を担う病院においては、上記に加えて特定の臓器でなく広く慢性疾患を継続診療する外来も含みます。
つまり、救急外来の知識だけでなく、内科初診外来の知識も必要なんです。
救急外来と内科初診外来の考え方は根本的に異なることは知っておくべきです。
救急外来で当直をしていると、緊急性のある疾患は自然に鑑別に上がるようになります。
一方で、総合内科外来で出会うような緊急性は低いが重要な疾患については、なかなか勉強する機会が少ないです。
救急だけやっておけば総合内科ができるようになるわけじゃないのね。
内科初診外来では、膠原病や慢性感染症などの慢性疾患も含めて
- 鑑別をしっかり挙げ
- それらのために必要な検査をその場で考え
- 検査・治療の計画を立てる(その日に行うか、後日行うか)
ことが必要です。
この本があれば、鑑別・検査・治療が適度な分量で網羅されているので外来でも安心です。
第6位 竜馬先生の血液ガス白熱講義150分
血液ガスは研修医のうちに学ぶべき知識の一つ。
そんな血液ガスをお手軽にマスターできるのが、この本です。
近年、血液ガス検査の読み方は非常に重要視されています。
医学生の方はあまりイメージがわかないかもしれませんが、
患者さんの血液検査を提出する際には、
- 生化学
- CBC
- 凝固
- 血液ガス
など、様々な項目があります。
そのうちの血液ガスは、その中でも最も早く結果が返ってくる検査です。
そのため、解釈の仕方が分かっていれば「患者が重症かどうか」を一瞬で見極める武器として使える一方で、解釈できなければ、ただの紙切れです。
スピードが求められる救急外来では重要な検査で、医師の実力が試される知識と言えます。
本書ではそんな血液ガスの実践的な使い方を、わずか150分で学べるコスパのいい一冊です。
今後の救急外来での診療能力が劇的にUPすることを考えると、買って損はないはず。
※ちなみに、この本の姉妹書として、「帰ってきた竜馬先生の血液ガス白熱講義22問」があります。
問題集形式で解説も読みやすいので、2冊を一緒に購入するのがオススメです。
第5位 ジェネラリストのための内科診断リファレンス
引用文献のオンパレードなので、レポートでかなり役に立ちます。
思わず「へえ〜」と言ってしまうような医学知識での「トリビアの泉」と言える面白い内容です。(トリビアとは言っても、もちろん実践で役に立ちます)
(※2024年4月追記 第2版が出ました)
このジェネラリストのための内科診断リファレンスは、繰り返し読んでいくにつれ力がついていく本といえます。
疾患ごとの、色んな身体所見、検査所見が
- どの所見が
- どのくらい診断に関わっているか
を数字で知ることができるのが面白いところ。
また、その情報を羅列するだけでなく、どの所見が重要かひと目で分かる図が載っているのが非常に良心的です。
この本は実臨床で使えるのは勿論ですが、初期研修医のレポートやJ-OSLERで大活躍します。
疾患ごとの診断・治療のエビデンスを記載する必要がありますが、引用文献が細かく載っているため、参考になるからです。
※J-OSLERのすすめかたについてはこちらにもまとめています。
※セットで購入しておきたい本として、こちらの「内科診療フローチャート」もあります。(2024年4月追記 第3版が出ました)。診断リファレンスが診断寄りの内容である一方、内科診療フローチャートは治療に関しても言及がされています。
これらの本を読んだあとにUpToDateを読むと、読んだときの頭への入り方が全然違いますよ👍
第4位 感染症プラチナマニュアル
コンパクトですが情報量は多く、感染症はこの1冊で十分戦えます。
感染症は、初期研修のうちに学ぶべき分野の一つです。
感染症といえば、よく必携と言われるのは、コチラの本が有名です。
感染症で有名な青木先生が書いているので、通称「青木本(あおきぼん)」と言われています。
しかし、この本は分厚すぎるのがネックです。
コスパ、網羅性、分かりやすさは「プラチナマニュアル」がダントツでした。
それぞれの疾患についての基本知識だけでなく、実践で使える作りになっていて
- 薬ごとの特徴、実際の使い方、腎機能に応じた投与量の調整
- 微生物ごとの特徴
- 疾患ごとの薬の選び方
に分かれており、それぞれ非常にわかりやすい内容になっています。
箇条書きでコンパクトにまとまっている分、読むのにも時間がかからないです。
また、本自体も小さいため、持ち歩きにも便利です。
毎年新版が出て情報が更新されているため、常にアップデートされているのもポイントです。
第3位 京都ERポケットブック
最近出版された本ですが、非常に売れている1冊です。
なんといっても「主訴別アプローチ」が使いやすく、語呂合わせも豊富で頭に残りやすい内容になっています。
マイナーな分野のネタも載っているのがありがたい。
残るもあと3冊になりました。第3位は京都ERポケットブックです。
救急外来で間違いなく大活躍する1冊です。
この本の目玉は、なんといっても「主訴別アプローチ編」。
主訴別に
- 最初に何を考えるべきか
- 見落としてはいけないポイントは何か
- 鑑別は何か
- よくある疑問とそれに対する答え
が載っており、実践の場で使える内容となっています。
また、この本は少しマニアックな主訴の外来患者に対する対応(=「マイナーエマージェンシー」)も言及されています。
- 創傷処置
- 熱傷
- 皮膚科
- 耳鼻科
- 整形外科救急
などを網羅しており、しかも読みやすい。
マイナー科の分野は遭遇する機会や良い入門書が少なく勉強がおろそかになりやすいんですが、この本があれば安心です。
「当直中にポケットに潜ませて、繰り返し読む1冊」にピッタリだと思います!
第2位 総合内科病棟マニュアル
後期研修医になっても役立っている「純国産」のマニュアル本です。
「かゆい所に手が届く」の一言!
この本は、診断についてだけでなく入院後の管理方法について載っている本です。
マニュアル本で(すこし厚めですが)持ち運びやすい大きさでありながらも内容は濃く、第4位に載せた「感染症プラチナマニュアル」の病棟管理バージョンとも言えます。
この本の特筆すべき点は、よくある疾患(=common disease)だけでなく、ややレアな疾患についても抑えておくべき知識がまとまっていることです。
RS3PE症候群、漢方の使い方、癌性疼痛、リフィーディング症候群など、他の本でまとまっていないものも多数載っています。
初期研修の間は色々な診療科をローテーションするかと思いますが、入院症例が当たったらこの本でその患者の疾患についてサラッとでも読んでおくだけで理解がグッと深まります。
(ただし、感染症の分野に関しては前述の「感染症プラチナマニュアル」のほうが詳しいです。また、膠原病についても他の教科書と合わせて使ったほうがおすすめ。)
「純国産」という触れ込みがある通り、あまりエキセントリックな内容は載っておらず、日本での保険適応などを踏まえて、専門の医師が疾患ごとに執筆しているため、使いやすいです。
第1位 救急外来 ただいま診断中!
間違いなく初期研修医の間で最も役に立った本。
救急外来の最初の1冊としておすすめです。
救急外来での診療では
- よくある(=common)疾患
- 緊急性の高い(=critical)疾患
- 治療可能な(=curable)疾患
の3つ(=3Cと呼ばれています)についての知識を特に重点的に深める必要があります。
本書はマニュアル本のようにコンパクトではありませんが、これらの3Cにあたる主訴/疾患について、「読み物」として非常に読みやすい設計がされています。
第3位の京都ERのように広範囲には渡っていませんが、その分ひとつひとつの章での内容は深く、
「当直の前に読んで予習し、当直の後に気になる部分を読み復習する」
というプロセスを繰り返すだけで基本的な診療能力が身につく書だと言えます。
グラフや図も豊富で、デザインもよいのでとても見やすいです。
章の最後には研修医と指導医の会話形式での症例提示があり、復習もできます。
ちょっと分厚いですが、当直のたびにこの本を持っていってました!
まとめ:研修医にオススメの本ランキングTOP10
初期研修医向けの本は種類が多くあり、悩むことも多いかと思います。
これらの本を読んでおけば初期研修に必須な「総合内科」「感染症」「救急」の3つの分野については網羅できるかと思います。
参考になれば幸いです!
◆こんな記事も書いています。
・研修医の勉強法で絶対やってはいけないことについて書いています。
プレゼンがめちゃくちゃ苦手だった自分が、どうにかこうにか普通レベルまでできるようになったので、そこに至るまでに意識したコツをまとめてみました。
指導医と話すのはしんどいですよね。良い感じにコミュニケーション取るのが苦手な人のために、対策をまとめてみました。
※病院から家に参考書を毎回持って帰るのは大変なので、研修医になるまでの時間を生かして、本を電子書籍化(自炊)をするのがおすすめです。
記事も書きました。
自炊は、医師になって早い段階で開始しておくほうがラクだと思います。
「電子版の購入」という選択肢もありますが、アプリが使いにくかったり、pdfデータとして持っておけないなど不便なことが多いので、自炊が圧倒的におすすめです!
参考になれば幸いです!
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