【ココが変わった!】グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023(ステロイド性骨粗鬆症ガイドライン)の、2014年版からの変更点・要点8つ

専攻医

ネフローゼ症候群の症例にステロイド投与しなきゃ…骨粗鬆症の薬はいっぱいあるけど、どれを使えばいいんだろう?

専攻医

通常の骨粗鬆症とステロイド誘発性骨粗鬆症で対応なにが違うのかな

こんな人のための記事です。

ステロイド投与をする時、大切になってくることの一つが骨粗鬆症の予防です。

膠原病内科の先生はもちろん、腎臓内科、呼吸器内科、総合内科、整形外科などステロイド骨粗鬆症が絡む患者さんは多いですよね。

とはいえ、骨粗鬆症予防なんてビスホスホネートしか使ったことないよ、という人も少なくないと思います。

そんなみなさんへ、今年の夏に新しく出版されたガイドラインを紹介します!

それがこちら!

旧版「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン」は2014年に出版されているので、10年ぶりの改定になります!

今回は、このガイドラインを、サクッと読めるボリュームにまとめてみました。

ぜひ最後までご一読ください!

目次

グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023のポイント

①大幅にボリュームが増えた

まず、もとのステロイド骨粗鬆症ガイドラインは、8ページでした。

2-3分でぱーっと読めるくらいの分量です。

しかし、今回のガイドライン2023は150ページ程度まで増えています。

かなり分量は増えて、内容(細かいエビデンス)が充実しています。

②投与開始基準のフローチャートは大きく変わらず

ガイドライン2023より引用

いちばん大事な骨粗鬆症に対しての治療適応についてのアルゴリズムは、2014年のものと比べてもパッと見でわかるほどの大きな変更はありませんでした

2014年版より引用

こまかいですが、変更された点としては、

薬物療法の中身が変わった(SERMや抗RANKL抗体が入り、第1選択薬とそれ以外の区別がなくなった)

定期的な検査の内容が表の注釈に入った(6ヶ月〜1年に1回の腰椎X線+骨密度測定)

③カラーになった

の3点です。

③開始時点で椎骨Xpは撮影。定期的にDEXA・胸腰椎Xp

グルココルチコイド(GC)を開始する際には、椎体骨折の評価(胸腰椎Xp)、投与中も半年〜1年に1回は骨密度測定をしておく必要があります。

GCによる脆弱性骨折は、最も好発なのが椎体です。そのため、椎体の評価として胸腰椎のXp検査は初期にしておくことが重要ですね。

ステロイド開始時は、骨密度検査に加えて胸腰椎X線検査も忘れないようにしましょう。

④薬物療法の推奨度一覧がなくなり、CQ一覧に変わった←重要

2014年ガイドラインには、薬物療法の推奨度一覧がありました。

2014年版より引用

ただ、今回のガイドラインは一覧表がなくなり、CQ一覧でエビデンスの高さと推奨度、同意度の3つの軸で、評価が記載されています

2023年度版より引用。(赤線はおちばが引いたものです。)

2014年版の一覧表、結構シンプルで見やすかったので、なくなってしまったのがちょっと残念💦

それぞれの製剤の推奨度は、はっきり書いてある章とそうでない章がありました。

具体的に、ビスホスホネートについては「科学的根拠のまとめ」に推奨度の記載がありましたが、表一覧にはなっていませんでした。

専攻医

ふーん。表がなかったなら、作ってしまえばいいじゃない

おちば

・・・作ります😭

ということで、次の章でまとめてみました。

⑤標準治療はやはりビスホスホネート。製剤ごとのエビデンスも。←重要!

様々な薬についてのコメントがありましたが、ビスホスホネートはエビデンスA,推奨度1、同意度9.0と評価マックスでした。

やはり昔から使われている薬なだけあって、エビデンスが豊富ですね。

スクロールできます
製剤薬剤名商品名推奨度ザックリ説明
ビスホスホネートリセドロネートアクトネル1新たなエビデンスあり(椎体骨折予防効果、若年者でもアルファカルシドールに比べて骨密度up)、特に推奨度高い。第1選択薬。月1回内服あり。
アレンドロネートボナロン1新たなエビデンスはない。けれど引き続き第1選択薬。静注製剤(月1回)あり。
イバンドロネートボンビバ1GC7.5mg以上の場合に椎体骨折の予防効果あり。静注製剤あり、椎体骨折に対してGC3ヶ月未満の一次予防効果あり。非椎体骨折の抑制効果あり。経口製剤は、閉経後女性でのRCTで骨密度がプラセボより優越性あり。
ゾレドロネートリクラスト1RCTでリセドロネートより優位に椎体骨密度up。5〜17歳でZスコア増加率高い。椎体骨折抑制効果は他のBPと同様。静注製剤あり。年1回製剤あり。
ミノドロン酸リカルボン2椎体骨折抑制効果のエビデンス少ない。アルファカルシドール併用でアルファカルシドール単剤と比較して骨密度が増加、骨形成・吸収マーカーを優位に抑制。1日1回or4週に1回
エチドロネートダイドロネル記載なし新たなエビデンス乏しいし、使用頻度少ないので推奨なし。

ごちゃっとしてしまって申し訳ないですが、結論から言うと

ビスホスホネートで迷ったら、アレンドロネートかリセドロネートを使おう

って話になりますね。はい。

とはいえ、ビスホスホネートは、内服方法が煩雑で、かつ使用3-4年目以降は弱まるため、新規薬剤への期待が高いとされています。(p83)

そこで、次の章が大切になってきます。

⑥テリパラチドや抗RANKL抗体も、歴史は浅いが推奨度高い←重要!

CQ13で、ビスホスホネート以上にテリパラチド(フォルテオ/テリボン)・抗RANKL抗体(デノスマブ)を推奨されていました。2014年時点の一覧表ではまだエビデンスが少なかったため推奨度はCでしたが、最近いろいろとエビデンスが出てきていることから推奨度は高くなってきています。

現時点ではビスホスホネートよりも確実に強いとは言えませんが、今後のエビデンスの蓄積次第では、ファーストチョイスとなってくるかもしれません。

特に、遺伝子組み換えテリパラチドについては骨折の危険性が高い重症骨粗鬆症の症例に使用を推奨されています。

遺伝子組み換えテリパラチドは、エビデンスは少ないもののビスホスホネートよりも骨密度増加や骨折予防効果が強いという報告あり。重症骨粗鬆症で骨折リスク高い場合はコスト面も考慮した上で使用検討する。

⑦SERMは、骨密度は上げるものの、骨折予防効果の明らかなエビデンスなし

閉経後女性に対してSERM(ラロキシフェン、バゼドキシフェン)については、骨密度は上がるものの骨折予防のエビデンスが明らかなものがなく、推奨度は低めでした。

おちば

ときどき閉経後女性のIgA腎症に対してSERMとかどうなのかな、と思ったりしたこともあったのですが、エビデンスを見る限りはそこまで積極的に使う気にはなりません。

Twitterでも、pozzi法(IgA腎症に対してのステロイド投与法。ステロイドパルスを3回+隔日内服を30mgからだんだん減らしていく方法)のときの骨粗鬆症予防はアレンドロン酸やビタミンDを使う人が多いようでした。

⑧ビタミンDは、エルデカルシトールが一番よさそう

2014年版ではアルファカルシドール、カルシトリオールは同立で推奨度B、エルデカルシトールが推奨度Cでした。

一方、今回のガイドラインでは、エルデカルシトールがアルファカルシドールより骨密度増加効果が強いRCTがあることが示されていました。

カルシトリオールは、天然型ビタミンD+カルシウム群との間に有意差を認めなかったとの報告もあったようです。

そのため、ガイドラインの内容をまとめると下記のようになります。

活性型ビタミンDエルデカルシトールアルファカルシドールより骨密度増加効果が優れている
アルファカルシドール天然型ビタミンDより骨密度増加が優れている
カルシトリオールRCTで骨密度増加が天然型ビタミンD・カルシウム群と差を認めず(観察期間が短かったから?)
2023ガイドラインを参考におちば作成

おちば的補足

骨粗鬆症については、割と地味めで、モチベーションが上がりにくく、かつ難しめな分野なので、苦手意識満載でした…(そういう方、結構多いのではないでしょうか?)ただ、今回ガイドラインをざっと読んでみると、エビデンスがしっかり理解できてよかったです。

まず、前提にはなりますが、それぞれの章を読んでいく中で、骨密度増加効果はサロゲートマーカー、椎体/非椎体骨折予防効果はハードエンドポイントとして異なることは、論文読む上で注意しなきゃいけないなと再認しました。骨密度増えることだけでも大事ですが、しっかり骨折予防してないとエビデンスとしては弱い印象。

今回興味深かったのは、これまで「なんやかんやビスホスホネート一択やろ」という感覚を持っていましたが、意外とそんなでもなさそうな時代が近づいているような雰囲気をガイドラインから感じた点です。特に、テリパラチドとデノスマブの立ち位置が2014年版と比較し、かなり前面に出てきている印象があり、今後のエビデンスに期待できるように思います。(COIも多少はあるかもしれませんが…)個人的には使用経験がほぼないため、使い慣れている先生から色々と今のうちに教えてもらっておきたいと思っています。

ちょっぴりイマイチだった点として、薬の推奨度の一覧は2014年版のように作ってほしかったです…推奨度の記載もビスホスホネートは商品ごとにありましたが、その他の製剤は記載なく、結局どう使い分けるか悩ましいと感じました。

あと、コレは余談ですが、腎臓内科的にはCKDG4以降の保存期腎不全&透析患者の骨粗鬆症対策の、新しい知見がほしいところです。CKD-MBDガイドライン、新しいのできないかなあ。いい薬できないかな〜。

今後、骨粗鬆症関連でちゃんと読みたいものとしては、

①CKD患者の骨粗鬆症のAJKDのレビュー

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015の読み直し

透析会誌2022の、骨粗鬆症の総説

このあたりはきちんと読んで勉強しておこうと思います。

おちば

おまけとして、透析専門研修指導マニュアルにあった骨代謝マーカーの使い方と、骨粗鬆症治療薬の投与上の注意の図も置いておきますね。

透析専門研修指導マニュアル第5版  p284より引用

まとめ

今回は、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023を読んでみました!

特に、ビスホスホネート、テリパラチド、デノスマブのエビデンスは、本書の解説部分を一度読んでいただき、確認してもらうのがオススメです。

CKDガイドライン、血尿ガイドラインに続き3冊目の企画でしたが、やっぱガイドラインはコスパ・タイパ抜群です。

今後もガイドラインいっぱい読んで知識をつけていきたいです(^^)

最後まで読んでいただきありがとうございました!

■関連記事

他にもガイドラインを読んでレビューしたりしています。

J-OSLER/内科専門医試験の対策記事を作ったりもしています。たくさん読んでいただいています!

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この記事を書いた人

アラサーの男性医師。内科専門医/透析専門医/腎臓専門医。
腎臓内科医として市中病院で勤務しつつ、フルタイム妻と一緒に実家遠方子育て中。(育児休業後)
忙し過ぎる若手医師向けに、医師のキャリア・専門医試験/レポート対策・仕事のコツ・医学の勉強などお役立ち情報を発信しています。
医師として頑張りたい、けれど家庭やプライベートも同じくらい大切にしたい!
そんな人の力になれたら嬉しいです。
趣味は音楽、読書、公園巡り。

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