【内科医なら知っておきたい】KDIGOのCKDガイドライン2024の押さえておきたい重要ポイント9選を解説!

専攻医

KDIGOのCKDガイドライン2024が出たって噂で聞いたけど、どんなこと書いてあったんだろう…

こんな人のための記事です。

ガイドライン読んでみたシリーズ、今回は最新の海外のCKDガイドラインを紹介します!

研修医や専攻医の先生は、「KDIGOってなにそれ?」と思うかもしれませんが、いわば腎臓学会の世界規模バージョン(ざっくり)といえるようなもので、

腎臓内科医ならKDIGOガイドラインはしっかりフォローしておきたい!

そう思えるような国際的な組織です。

今回、2024年4月にKDIGOのCKDガイドラインの改訂がありました!

個人的な感想としては、

おちば

もう、コレと日本のCKD診療ガイドライン2023読んでおけばCKD診療は大きく外さんやろ(暴論)

そう思えるようなクオリティでした。

でも・・・

ぜんぶ英語です。(当たり前)

しかもまあまあなボリュームあります。(PDFで198ページ

DeepLやChat-GPTを駆使したとしても、読むのに結構な時間かかります…

専攻医

そんな時間ないから読めんわ!

という忙しい方のために、今回は「忙しい方のためのKDIGOのCKDガイドライン2024まとめ」として、ダイジェスト版を作ってみました。(※独断と偏見で個人的に興味深いと思った内容を多めに取り上げています。)

ぜひ最後までお楽しみください〜!

※注 この角に折り目がついたカードに書かれている英語は、ガイドラインからの引用文です

※注 ガイドラインとはいえ、海外の文献ではあるので、診療において実際に適応するかどうかは、各医療機関で上司や他スタッフとご相談して検討くださいね👍

※ちなみに、もしもまだ日本のCKDガイドライン2023をちゃんと読めてない…!という方は、1秒でも早くそっちを読んでください!!マストです!約束ですよ!(しつこい)

目次

KDIGO CKDガイドラインの重要ポイント5つを解説!

結論:この診療フローチャートのチェックはマスト!

忙しい人のために、スクショで保存しておきたいページを置いときますね。

KDIGO 2024 CLINICAL PRACTICE GUIDELINE FOR THE EVALUATION AND MANAGEMENT OF CHRONIC KIDNEY DISEASE

これ見ておくだけでもう研修医の先生なら100点満点です(というかKDIGOガイドラインをちゃんと押さえてる研修医なんてほぼいないので120点くらいあげたい)

では、順に解説していきますね。

①クレアチニンが当てにならないときはシスタチンCをうまく使おう

Recommendation 1.2.2.1 We recommend using eGFRcr-cys in clinical situations when eGFRcr is less accurate and GFR affects clinical decision-making (1C).

ひとつめは、「eGFRCrが正確でない可能性がある状況では、シスタチンCの併用を提案する」という内容です。

コレは腎臓内科外来をしてる方にとっては割と当たり前の話だと思います。

「筋トレプロテイン大好きな若い方が、Crが高くて健診異常で受診してきた」というパターンはあるあるです。

では、なぜこのrecommendationをわざわざポイントのひとつに入れたかというと、「クレアチニンeGFRとシスタチンeGFRが乖離する状況を図でええ感じにまとめたTableがある」からです。

こんな感じ。

KDIGO 2024 CLINICAL PRACTICE GUIDELINE FOR THE EVALUATION AND MANAGEMENT OF CHRONIC KIDNEY DISEASE

…はい。字多くてごめんなさい…涙

まあ要するに、体格・筋肉量の他に、
・喫煙
・癌
・心不全
・肝硬変
・ステロイド使用
・抗菌薬

など、Crが当てにならない(かも)なシチュエーションがコンパクトにまとめて記載されています。

シスタチンCをなんとなく使っている方にとっては、これを機にしっかり読んでおくのがオススメです。

② タンパク制限は ゆるめに。0.8g/kgは維持を。

Recommendation3.3.1.1We suggest maintaining a protein intake of 0.8 g/kg body weight/d in adults with CKD G3–G5 (2C).

次は、タンパク制限について。上記を訳すと、「CKDG3-5の患者には0.8g/kgBW/日の蛋白摂取を維持することを提案する」になります。

もともとCKDというと「タンパク制限をかけなきゃ!」というイメージがあるかもしれません。

日本の基準は、いまだに慢性腎臓病に対する食事療法基準2014(10年前…!)で、CKDG3以下といえば0.6-0.8g/kgBW/日とされていますしね。

しかし、上記の蛋白制限は、高齢者において逆にフレイル・サルコペニアをきたすリスクがあるとされています。

そのため、「タンパク制限そんな厳しくせんでもええんちゃうか」という議論が多いです。

今回のガイドラインではむしろある程度はとっておこうね というニュアンスの記載が多かったです。(全身状態が悪い患者や、高齢者)

③診察室血圧は、120mmHg未満まで厳格に!

Recommendation 3.4.1 We suggest that adults with high BP and CKD be treated with a target systolic blood pressure (SBP) of <120 mm Hg, when tolerated, using standardized office BP measurement (2B).

3つめは、「高血圧合併のCKD患者は、忍容性があるなら診察室血圧120未満を目指そう」という話です。

120mmHgって結構低くてびっくりですよね。

これはSPRINTという試験で厳格な血圧調整がCVDリスクを減らすことが示唆されているためです。

もちろん、高齢の方など転倒リスクが高い方などは避けておくのが無難です。

ただ、若いしっかりした方や、中年の腎機能がまだまだ保たれている方にはきっちり降圧していくことが重要ですね。

④【重要!】RASi使用による高カリウム血症の場合、できるだけRASiの減量中止以外の方法で、カリウムコントロールを。

Practice Point 3.6.3: Hyperkalemia associated with use of RASi can often be managed by measures to reduce the serum potassium levels rather than decreasing the dose or stopping RASi.

Practice Point 3.6.7: Continue ACEi or ARB in people with CKD even when the eGFR falls below 30 ml/min per 1.73m2

はい。いわゆる「RASi使ってる患者さんの高カリウム血症/腎機能悪化でどこまで頑張ってRASi入れ続けるか」問題ですね。(長い)

結論、「なるべく頑張って入れろ」というメッセージを強く感じます。

この図がわかりやすいです。

KDIGO 2024 CLINICAL PRACTICE GUIDELINE FOR THE EVALUATION AND MANAGEMENT OF CHRONIC KIDNEY DISEASEにおちばが補足

先日あった、腎臓内科のエキスパートとして有名な長澤 先生の電解質のWebセミナー(※)でも、「食生活を制限せずロケルマを飲ませつつRASiを続けるのが、治療しやすいよね」というお話をされていました。

腎機能が30%以上悪化した場合でも、すぐにRASiをビビって中止するのではなく、他の利尿薬を切る、腎動脈狭窄症などないかチェックするなどできることをきちんとしてから、それでもダメなら中止する、という記載でした。

おちば

要するに、なるべく頑張って入れ続けましょう。

※(2024/4/18「絶対おさえたい低Na血症と、コワ~い高K血症」医学書院)

⑤T2DMでeGFR≧20にはSGLT2iを推奨

Recommendation 3.7.1:We recommend treating patients with type 2 diabetes (T2D), CKD, and an eGFR ≧20 ml/ min per 1.73 m2 with an SGLT2i (1A).

これは、CKDガイドライン2023と同様の内容ですね。

とくに、「一度始めたのであれば、透析導入あるいは移植をするまでは継続しよう」というメッセージは強く感じました。

KDIGO 2024 CLINICAL PRACTICE GUIDELINE FOR THE EVALUATION AND MANAGEMENT OF CHRONIC KIDNEY DISEASE

⑥【重要!】eGFR 20-45では、尿アルブミン/Cr比<200でもSGLT2iを提案

Recommendation 3.7.3: We suggest treating adults with eGFR 20 to 45 ml/min per 1.73 m 2 with urine ACR <200 mg/g (<20 mg/mmol) with an SGLT2i (2B).

尿蛋白が出ていなくても、SGLT2i使っていいんじゃない?という提案です。

尿アルブミンの少ない患者も入れていたEMPA-KIDNEY試験では、腎保護作用は尿アルブミンに依存するという結果が出ていました。(<30では差なし)

コレの下のほうのやつですね↓

N Engl J Med 2023;388:117-127

しかし、

●SGLT2iは2年以上の長期間(long term)のeGFR slopeの改善については、どんな尿アルブミンの患者においても一定の効果が見込めるという話

●SGLT2iがAKI、入院、高カリウム、溢水、高尿酸血症などCKDに合併しがちな色んな有害事象を減じてくれる

といった観点から、

KDIGOの中の人

もう、良いこといっぱいあるから、CKDある人で忍容性あるなら入れちゃいなYO!

って感じのテンションになってる印象です。(イメージ)

でも、SGLTiは高級なので、医療費面が心配になりますよね。

ところがどっこい、これについても、「入院や透析に比べたら安上がりやろ。まあ国によってシステム違うから、患者さんの負担を考えてから使いなされ〜」という記載でした。

Resource use and costs. Health economic analyses are required in people with CKD without diabetes and low levels of albuminuria to establish their level of cost-effectiveness. From a healthcare system perspective, reducing the cost burden of hospitalizations and dialysis is highly desirable, and QoL may be preserved longer from their avoidance. Specifics as to whether people bear the costs of these medications will be country-dependent.

KDIGO 2024 CLINICAL PRACTICE GUIDELINE FOR THE EVALUATION AND MANAGEMENT OF CHRONIC KIDNEY DISEASE S218

あまりにべた褒めすぎてKDIGOとアストラゼネカのCOIどうなんかなコレ…と不安になりますが、実際いい薬はいい薬なので、入れる適応がある人ならば、隙あらば入れていきたいですね、SGLT2i。(特にCOIありません)

おちば

もちろん、日本のCKDガイドライン2023では、蛋白尿を有さない場合はエビデンスないってありましたし、KDIGOでも推奨度2Bとかなんで、全例に入れるぞーってするのはちょっとイマイチな気がしています。それでも、この記載が載っている事自体が凄く大きいことなのではないかなと思っています。(感想)

CKDガイドライン2023より

⑦RASi入れたT2DMでeGFR>25、高Kなし、ACR>30なら、MRAを入れることを提案

Recommendation 3.8.1: We suggest a nonsteroidal mineralocorticoid receptor antagonist with proven kidney or cardiovascular benefit for adults with T2D, an eGFR >25 ml/min per 1.73 m2 , normal serum potassium concentration, and albuminuria (>30 mg/g [>3 mg/mmol]) despite maximum tolerated dose of RAS inhibitor (RASi) (2A).

MRAって、腎臓内科やってても意識しないと入っていない人多いですよね。(循環器の先生のほうが速やかに入れてるイメージ)

ちょっと入れるための条件がややこしい印象ですが、要するにeGFR>25で尿蛋白出てるなら、RASiの次に入れようって書いてあります。

SGLT2iとMRAをどっち優先して入れるかですが、さきほどのフローチャートを参照すると、あくまでCKD単品なら、SGLT2iが優先順位高そうです。

KDIGO 2024 CLINICAL PRACTICE GUIDELINE FOR THE EVALUATION AND MANAGEMENT OF CHRONIC KIDNEY DISEASE

SGLT2iは高カリウム血症などMRAの有害事象を予防してくれる(Lancet. 2024 Jan 27;403(10424):379-390.)って言いますし、忍容性があるなら先に入れておいたほうが後々入れやすいかもしれないですしね。

⑦T2DM合併CKDで、メトホルミン+SGLT2iでも血糖コントロールができないなら長時間作用型GLP-1RAの使用を推奨

Recommendation 3.9.1: In adults with T2D and CKD who have not achieved individualized glycemic targets despite use of metformin and SGLT2 inhibitor treatment, or who are unable to use those medications, we recommend a long-acting GLP-1 RA (1B).

GLP-1受容体作動薬は、メトホルミンとSGLT2iつかって血糖コントロール悪ければ使おう という推奨です。

日本のガイドライン2023の時点ではそこまで明確に推奨されていませんでしたが、かなりプッシュされていますね。

高齢のやせやせな方には使いにくいですが、肥満がある若い人とかは特に使っていきたいですね。

⑧無症候性の高尿酸血症に対して、CKD進行を予防する目的での尿酸降下薬は使用しないことを提案

Recommendation 3.14.2: We suggest not using agents to lower serum uric acid in people with CKD and asymptomatic hyperuricemia to delay CKD progression (2D).

尿酸降下薬、「無症候性なら投与をしない」という流れが来てるよねーという話題。

もちろん、症候性(痛風の既往や尿酸結石)の方には入れておくのがよいと推奨されています。

しかし、無症候性の高尿酸血症の治療によるエビデンスは乏しいです。

しっかり適応を考えて使用したいですね。

※実際、2023年CKDガイドラインでも、2018年のCKDガイドラインとは異なり、「8以上で開始、6以下を目指す」みたいな記載はなくなってますよね。「行うことを考慮してもよい」というフワっとした記載になっています。

⑨50歳以上ならスタチン±エゼチミブを推奨(透析・移植例は除く)

Recommendation 3.15.1.1: In adults aged ≧50 years with eGFR <60 ml/min per 1.73 m 2 but not treated with chronic dialysis or kidney transplantation (GFR categories G3a–G5), we recommend treatment with a statin or statin/ezetimibe combination (1A).

Recommendation 3.15.1.2: In adults aged ≧50 years with CKD and eGFR ≧60 ml/min per 1.73 m 2 (GFR categories G1–G2), we recommend treatment with a statin (1B).

CKD患者さんにはスタチンとエゼチミブを入れよう!という推奨です。

腎臓内科外来に来てる人、ほとんどが50歳以上ですからね。ほぼみんな適応になるレベルです。

透析患者さんには予後改善効果が低め。
KDIGO 2024 CLINICAL PRACTICE GUIDELINE FOR THE EVALUATION AND MANAGEMENT OF CHRONIC KIDNEY DISEASE

2022年の動脈硬化性疾患予防ガイドラインでも「Lower the better」の可能性は言及されていますが、頭蓋内出血のリスクが増えるかもとの記載もありますし、あくまでガイドラインの管理目標値以内を目指すでよいかと思います。

動脈硬化疾患予防ガイドライン2022 p71より

個人的には、透析患者さんへのスタチン投与のエビデンスが今後増えてきたら良いなあ…と期待しております。

まとめ:KDIGOのCKDガイドライン2024の気になったポイント9選を解説

最後に、もう一回今回のガイドラインの総まとめ的なフローチャートをおいておきますね。

KDIGO 2024 CLINICAL PRACTICE GUIDELINE FOR THE EVALUATION AND MANAGEMENT OF CHRONIC KIDNEY DISEASE

ご紹介したのは本当に一部(個人的に興味がある)だけで、他にも様々なことが書いてありましたし、Recommendationの理由となった文献の紹介がぎちぎちに書いてあります。

現在のCKD診療の時代の流れを知るのにもってこいの二次資料です。

腎臓内科医だけでなく、総合診療や糖尿病内科、循環器内科の先生なんかもぜひ読んでおくのがオススメです♪

参考になれば幸いです!

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このブログでは、ガイドラインを読んでまとめていたりします。

■未就学児の育児と日常業務に忙殺されて余裕のない日々を送っていましたが、医局をやめて時間外業務が大きく減った結果、家族との時間や論文/文献を読む時間をゆとりを持って確保できるようになりました。

忙しすぎてしんどい…という方は、働き方を再考しても良いかもしれません。

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この記事を書いた人

アラサーの男性医師。内科専門医/透析専門医/腎臓専門医。
腎臓内科医として市中病院で勤務しつつ、フルタイム妻と一緒に実家遠方子育て中。(育児休業後)
忙し過ぎる若手医師向けに、医師のキャリア・専門医試験/レポート対策・仕事のコツ・医学の勉強などお役立ち情報を発信しています。
医師として頑張りたい、けれど家庭やプライベートも同じくらい大切にしたい!
そんな人の力になれたら嬉しいです。
趣味は音楽、読書、公園巡り。

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