入院患者の腎臓分野でのトラブルシューティング的なReviewをみつけたから紹介

専攻医

あーーーー腎生検大変だったなあ。そろそろ昼ごはん食べようかな・・・

上級医

あ、先生、他科診察の依頼来てたから、あとはよろしくね★

専攻医

・・・ああ・・・

目次

腎臓内科の大切なスキルの一つ、コンサルト

腎臓内科って、他科からのコンサルトが多いですよね。

主科で診ている患者さんは少なくても、透析患者さんだったりAKIだったり電解質異常だったりと様々な理由で他科診察依頼を受けることが多くててんやわんやしてます。

そこが面白いっ!って思える人、ぜひ一緒に腎臓内科医を目指しましょう^^

今回は、院内で腎臓内科へコンサルトを受けた時に役に立ちそうな知識について特化したコーナーを雑誌を見つけたのでご紹介します。

内容は、一般的によく出会うシチュエーションなので、総合内科に興味のある人も楽しめる内容だと思います!

●こんな人におすすめ
・総合内科、腎臓内科に興味がある研修医
・内科専攻医

他科からのコンサルトで役に立つ豆知識

この文献を読んで分かったことをまとめると・・・

この文献を読んで勉強になったこと

VCM+TAZ/PIPCの併用は、VCMと他の薬剤併用と比較して、AKIのリスクが高い。→文献1

②(サイアザイド使用などによる)低Kを伴う低Na血症において、K補充による血清Na上昇は、低Na血症の過剰補正につながるから注意→文献2

尿中好酸球は、急性間質性腎炎(AIN)の鑑別に有用ではない。→文献3

④低Na血症の患者において、(尿中Na+尿K)/血清Naが0.5未満であれば、水分制限により血清Naが上昇する可能性が高い→文献4

⑤末期腎不全患者のAFで、アピキサバン(エリキュース®)の使用は、ワーファリンと比較して有害事象が少ないかも。→文献5  

↑AHAの心房細動のガイドラインでも弱いながらも推奨あり。→文献6

⑥HDされている末期腎不全患者において、ヨード造影剤の使用によってvolume overloadのリスクや残存腎機能の低下リスクは上がらない。→文献7文献8

以下は、論文の紹介です!

Clinical pearls in hospital nephrology

JOURNAL OF COMMUNITY HOSPITAL INTERNAL MEDICINE PERSPECTIVES 2021, VOL. 11, NO. 3, 327–333 より

●入院中の腎臓分野の異常にスポットを当てた、Reviewになります。

●よくありそうなシチュエーションQ&A形式でまとまっていて、読みやすいです。

例えば・・・

76歳男性,老人ホーム入居者,四肢麻痺の既往あり,仙骨部の大きな褥瘡による紅斑と臭気を評価するために救急外来を受診した。潰瘍の痛みのため、来院時にイブプロフェン2錠を投与された。既往歴には慢性腎臓病(CKD)ステージ3(ベースラインのクレアチニン1.8mg/dL)あり。内服歴はオメプラゾールとアスピリンである。皮膚は仙骨部に紅斑と悪臭を伴う直径9cmの潰瘍を認めた。初回の血液検査では、クレアチニンが1.8mg/dL、血中尿素窒素(BUN)22mg/dL、白血球数(WBC)17000/Lであった。入院患者はバンコマイシンとピペラシリン/タゾバクタムの投与を開始した.オメプラゾールは継続投与された。3日後、クレアチニン2.6mg/dLであった。補体量は正常であった。尿検査では、3〜5個のヒアリン円柱/hpfを認めたが、それ以外は正常であった。

Q.腎機能悪化の主因として最も考えられるのはどれか。

(A)バンコマイシン

(B)オメプラゾール

(C) イブプロフェンおよびオメプラゾール

(D) バンコマイシンとピペラシリン/タゾバクタム

(E)感染症関連糸球体腎炎

正解は・・・コチラ!

(D) バンコマイシンとピペラシリン/タゾバクタム

●知ってるよ!という内容もありますが、全体的に読みやすくて面白かったです。

●個人的には、低K血症を合併した低Na血症患者において、K補正する分を考えて過剰補正にならないように気をつけるってのは、大事だなあと感じます。

●あと、末期腎不全患者のAFにワーファリンに代わりエリキュースのエビデンスが出てきているという内容も初耳でした。観察研究なのでエビデンスの質として高いわけではないですが、Wfと比較して、大出血のリスク、血栓塞栓リスク、死亡率の低下と関与している可能性があるとのこと。

透析患者のヨード造影剤の使用についても興味深かったです。

ヨード造影剤という濃い液体が血管内に入ることになるので、

①volume負荷→溢水のリスク

②残存腎機能の低下のリスク

の2点から、検査を避けたほうがいいのかも?検査後に早めにHDをしたほうがいいのか?という疑問がわくことは多いと思います。

しかし、このReviewによると、

①のリスクはいくつかの研究で否定されています。1287人を後ろ向きに調べても、1人も早めのHDセッションが必要になった人はいなかった。

②の残尿量についても、(42人と少数ではありますが、)1日尿量は造影剤を使用した群とそうでない群で有意差はなかったようです。

●色々な新しいエビデンスが出てきますが、少しづつキャッチアップして、地道に整理していきたいですね!

Journal of Community Hospital Internal Medicine Perspectives(JCHIMP)について

●ちなみに、この雑誌、聞き慣れないですよね。僕も今回初めて知りました。

●調べてみたところ、公式ホームページには以下のような説明がありました。

Journal of Community Hospital Internal Medicine Perspectives(JCHIMP)は、地域病院に関連する情報を発信する、査読制の国際的なオープンアクセス学術誌です。

本誌はGreater Baltimore Medical Centerの協力のもと発行されています。

JCHIMPは、地域病院の医療従事者に内科分野の最新情報を提供し、臨床教授、研修医、医学生が地域病院のプログラムに関連した研究を発表するためのプラットフォームとなることを目的としています。

本誌は二重盲検法による査読を行っています。

(公式ホームページより)

●めっちゃ地域病院(community hospital)であることを推しますね。総合内科、総合診療科が求められている日本の今のご時世に合っていて良い気がします。

●インパクトファクターを「Academic Accelerator」というページで調べてみましたが、見当たりませんでした。あまり有名ではなさそう。

●open accessで、比較的わかりやすい文体で読みやすいので良いなあと思いました。

まとめ

●院内コンサルトは腎臓内科医の腕の見せどころの一つ。

●様々な知識が必要になるので、たくさん勉強が必要ですが💦

●素朴な疑問に対してもしっかりエビデンスを持って応えられるよう、日々精進していきたいと思います。

●比較的新しいエビデンスなので、臨床で使用する場合は注意してください!

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この記事を書いた人

アラサーの男性医師。内科専門医/透析専門医/腎臓専門医。
腎臓内科医として市中病院で勤務しつつ、フルタイム妻と一緒に実家遠方子育て中。(育児休業後)
忙し過ぎる若手医師向けに、医師のキャリア・専門医試験/レポート対策・仕事のコツ・医学の勉強などお役立ち情報を発信しています。
医師として頑張りたい、けれど家庭やプライベートも同じくらい大切にしたい!
そんな人の力になれたら嬉しいです。
趣味は音楽、読書、公園巡り。

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