入院患者の尿閉をみたら

上級医

入院中のAさん、尿が出にくいらしい。どーする?

専攻医

・・・(無言で泌尿器科への対診を書き始める)

上級医

・・・・・

目次

尿閉をみたら考えること

今日は、尿閉の患者さんを診察したので、最低限覚えておきたいことをまとめてみました・・・。

今日のまとめ

●尿閉をみたら、大きく2つの原因を考える。

●主な原因2つに対する治療で知っておくべきこと

●コリン作動性クリーゼについて

●読んでおきたい文献たち

尿閉の原因は?

急性の尿閉は、高齢男性に多いですよね。

どこまで泌尿器科への対診を出さずにやるかはいつも悩ましいですが。

よくある原因は、以下の2つです。

●末梢神経障害による神経因性膀胱(DM、パーキンソン、脳梗塞など)
●前立腺肥大症(BPH)による下部尿路閉塞

※下部尿路閉塞・・・

男性:BPH、急性前立腺炎、前立腺がん、尿道狭窄

女性:外尿道口狭窄、子宮脱、膀胱瘤、骨盤内腫瘍

男性も女性も:膀胱炎、膀胱腫瘍、便秘、消化管腫瘍の浸潤、神経因性膀胱など

腰痛を伴っていたら:脊髄疾患に注意

また、

strong>寒冷刺激(交感神経刺激→前立腺部の収縮up)

アルコール(前立腺腫脹、排尿筋収縮抑制)

抗コリン薬

ADL低下

も、尿閉の発症原因となりえます。(内科診断リファレンスより)

専攻医

ADL低下している人ばかりだけどな・・・

また、自験例では、ひどい便秘の患者さんも尿閉になったのをみたことがあります。

便秘による膀胱感覚の一時的な麻痺が原因と考えられています。

治療をどうするか

特に頻度の多いBPHと神経因性膀胱での対応を考えてみます。

BPHの治療

大まかに、夜間尿が1回→経過観察、2回→薬物治療、3回→手術 が目安のようです。(内科診断リファレンス)

カテーテル挿入時、あるいは抜去前にα1遮断薬を開始、2-3日でカテーテル抜去して尿量を確認するのが一般的。

・シロドシン(ユリーフ)はα1Aへの選択性が高く、タムスロシン(ハルナール)、ナフトピジル(フリバス)の順にα1D拮抗作用が強くなります。

前立腺サイズが30ml以上なら、デュタステリド(アボルブ)併用を検討します。5α還元酵素を阻害することで、ジヒドロテストステロンを抑制し、前立腺を縮小させ、尿流の改善を促します。

過活動性膀胱症状が明らかな場合(OABSS6点以上)なら抗コリン薬の併用を検討します。

神経因性膀胱の治療

コリン作動薬:膀胱収縮力を上げる。

ジスチグミン(ウブレチド)は効果が強いです。

ベサコリンは頻尿になること、耐性が出ることがありますが、コリン作動性クリーゼの報告がなくウブレチドより安全性が高いそう。

αブロッカー:尿道抵抗を下げる。

・BPHでも使用できますが、神経因性膀胱でも有用です。

・前立腺部尿道括約筋にはα1Aが,血管平滑筋にはα1B,膀胱知覚過敏にはα1D受容体が関与する.

・夜間尿を改善させるだけならα1D拮抗作用が高い方が優れる。

・女性には、ウラピジル(エブランチル)、ドキサゾシンメシル(カルデナリン)を使用するが、α1B作用が強いため低血圧に注意。

認知症の患者は、コリン作動性クリーゼに注意

コリン作動性クリーゼになると、コリンエステラーゼが必要以上に阻害されることで、消化管運動促進による下痢・嘔吐、縮瞳、徐脈、発汗、唾液分泌過多など副交感神経刺激症状が出てきます。

血液検査でコリンエステラーゼが著明に低下するのが特徴。

重症では循環不全や呼吸不全を起こすことがあるみたいです。

コリンエステラーゼ阻害剤といえば、アルツハイマーに対する薬として

●ドネペジル(アリセプト®)

●ガランタミン(レミニール®)

●リバスチグミン(イクセロンパッチ®)

がありますね。

おちば

これらは最近、腎機能の低下を抑制するかも?と期待されています。

あとは、重症筋無力症の患者にも、抗コリンエステラーゼ剤(マイテラーゼ、メスチノン、ウブレチドetc)が使用されることがあります。

これらの患者へのコリン作動薬は注意が必要ですね。

まとめ:

●急性尿閉は前立腺肥大症と神経因性膀胱をチェック

●治療には、BPHならα遮断薬が中心、OABならコリン作動薬、α遮断薬など

●特に認知症、重症筋無力症の患者は、コリン作動性クリーゼに注意する

読んでおきたい文献

尿閉のreview Urinary Retention in Adults: Evaluation and Initial Management. Am Fam Physician. 2018 Oct 15;98(8):496-503.

尿閉のレビュー。α遮断薬の使い方など、わかりやすく書かれています。

前立腺肥大症ガイドライン2011

日本語だから分かりやすい。無料で読めます。

女性下部尿路症状診療ガイドライン2019

こんなのあったのか・・・となりました。過活動性膀胱について、載ってます。無料で読めます。

●内科診断リファレンス

みんな持ってる人気の本です。(最新かどうかはともかく)読みやすくて好きです。

初学者が気になることが大体なんでも載ってます。

認知症のケア ケアの立場からみた薬物療法の選択

認知症の薬について、わかりやすかったページ。

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この記事を書いた人

アラサーの男性医師。内科専門医/透析専門医/腎臓専門医。
腎臓内科医として市中病院で勤務しつつ、フルタイム妻と一緒に実家遠方子育て中。(育児休業後)
忙し過ぎる若手医師向けに、医師のキャリア・専門医試験/レポート対策・仕事のコツ・医学の勉強などお役立ち情報を発信しています。
医師として頑張りたい、けれど家庭やプライベートも同じくらい大切にしたい!
そんな人の力になれたら嬉しいです。
趣味は音楽、読書、公園巡り。

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