【初期研修医向け】腎臓内科を選んで良かった事と悪かった事を本音で書いてく【診療科選び】

専攻医

将来の進路は内科系で考えている。
腎臓内科で働くって、どうなんだろう

専攻医

腎臓内科と糖尿病内科で迷っているけれど、どうしようかな

こんな人向けの記事です。

腎臓内科は比較的少ないので、興味があっても情報が少なくて、イメージが湧きにくいことが多いです。

腎臓内科は、面白い分野であり、かつほどよい働き方のできる、良い内科です。

今回はそんな腎臓内科の魅力とイマイチなポイントを、医師6年目(腎臓内科専攻医)の視点から独断と偏見を踏まえてお伝えしていきます!

おちば

よろしくおねがいします!

おちばのプロフィール
・30歳前後の腎臓内科医
・妻、子の3人暮らし
・初期研修は一般市中病院、その後はとある医局へ入局して腎臓内科の病院を転々としている

目次

腎臓内科を選んで良かったこと

まずはじめに、腎臓内科を選んで良かった事をご紹介します。

腎臓内科のメリット①学ぶ知識がの汎用性が高い

1つ目は、知識の汎用性が高い、つまり「どこでもツブシが効く」スキルが得られることです。

腎臓領域は、腎炎や透析など、一見マニアックなイメージが先行しています。

しかし、市中病院で働く場合は、

■体液管理(脱水、心不全、輸液、栄養など)

■電解質・酸塩基平衡(カリウム、ナトリウム、カルシウム、リン、マグネシウムなど)

■慢性疾患(糖尿病、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症など)

■腎障害(急性でも慢性でも)

などが中心です。

これらは、研修医〜ベテラン医師まで触れることの多い、いわば内科医としての「基本のキ」といえるような内容です。

言い換えるなら、どの病院に行っても役に立つ知識です。

今後、10年、20年と続ける中で将来のキャリアはどうなるか分からず、一生ずっと同じ診療科を続けていくかどうかはわかりませんよね。

自分のサブスペ以外の内科(内科開業や、慢性期病院の一般内科への変更、訪問診療医への変更など)にキャリア転換をおこなう人は少なくありません。

そんな時に腎臓内科としてある程度のキャリアを経験しておくと、輸液でも電解質でも丁寧に診ることのできる、そんな(それなりにきちんとした)医師になれるのは間違いありません。

おちば

カッコよく言うならば、「専門性を兼ね備えた総合内科」って感じです!(ちゃんと勉強していれば、の話ですが笑)

腎臓内科のメリット②ワークライフバランス

次は、ワークライフバランスが取りやすい点です。

腎臓内科は、手技の多い内科と比較して緊急の呼び出しは少なめです。

内科の中で、ぼく個人の感覚としては、こんなイメージです。(病院によって差はありますが・・・)

内科のワークライフバランス(イメージ)
■ワークライフバランスが取りやすい→ 腎臓内科、膠原病内科、糖尿病内分泌内科
■ワークライフバランスが取りにくい→ 消化器、循環器
■病院によって差が激しい→ 呼吸器内科、血液内科、神経内科

腎臓内科は結婚や出産などライフステージが変化しても、続けやすい診療科な印象です。

おちば

特に、結婚して子どもが生まれてからは、緊急での呼び出しが少ないことのメリットを強く感じています。

また、透析のバイトはゆったり働けるし、給料も高めなので、お金の面でも安心です。

将来的には再生医療が発展して透析患者が激減すると予想されますが、僕たちが働いている向こう20年くらいは食いっぱぐれることはないのではないかと考えています。

腎臓内科のメリット③癌を診ない

腎臓内科の特徴として、「癌の治療にあたることがない」が挙げられます。(腎癌は一般的に泌尿器科が診てくれることが多いです)

がんは、最近は医療が進歩しているとはいえ、基本的には悪化していき最後は緩和医療に進みます。

そのため、人によって「合う、合わない」が分かれる領域だと感じます。

おちば

ぼく個人は、がん診療にそこまで興味を持てませんでした💦

がんの先進的な治療よりも、体液管理、ステロイド治療、電解質調整など幅広い領域を勉強したい!という方には腎臓内科がおすすめです。

逆に、緩和医療に興味があったり、抗がん剤の使い分けに興味があったりする場合は、腎臓内科だと物足りないと思います。

がんの診療を中心的に行わないとはいえ、最近では、免疫チェックポイント阻害薬による腎障害など、担癌患者を診ることも多くなっています(onconephrologyと言われる分野です)。最低限の癌の勉強は避けては通れないですね🤔

腎臓内科のメリット④シンプルにめっちゃ面白い

最後は、とっっても個人的な感想ですが、腎臓分野がめっちゃ面白いことです。

ぶっちゃけ、これが一番ぼくの中の決め手でした。笑

CKD、電解質分野の診療は、一般市中病院では非常にニーズが多いし

糸球体腎炎、透析、集中治療、手術などの分野は専門性が高く、専門性として手に職を得られます。

腎臓分野は、「検査でA→治療はBをやる」みたいな機械的に答えが出ることは少なく、パズルや謎解きみたいな感じで、「Aの検査でこういう結果、Bの検査でこういう結果、Cの検査でこういう結果だった。これらを合わせて考えると、Dという結論になる」みたいな、いわば「病態の正確な把握」が大切で、これが面白さにつながります。(オタク特有の早口)

おちば

尿検査、高血圧、電解質異常、心エコー結果など、ありふれた一つ一つの検査でも、腎臓内科にしか気づけないこともあり、何気ない日常診療の「解像度」が上がっていく感覚が楽しいです。

また、慢性腎臓病の初期〜透析導入後まで、患者さんの人生に粘り強く寄り添っていく姿勢が大切になる診療科です。一見地味に思うかもしれませんが、年齢を重ねるに従い、地域の病院で総合診療寄りにシフトする医師は多いですし、この視点も重要かと思います。

総合診療分野に興味がある方にも、非常にオススメです♪

腎臓内科を選んで悪かったこと

続いては、腎臓内科に進むデメリットです。

正直に全部言いますね。笑

腎臓内科のデメリット①エビデンスが少ない(特に透析)

腎臓内科分野は、他の診療科と比較してエビデンスが少ない感じがしています。

正確に言うならば、「エビデンスだけに頼れない」、といった感覚でしょうか。

★エビデンスが使いにくい理由
①「腎機能」というアウトカムがそもそも評価しにくい
②海外と日本で透析の環境が異なる(日本は衛生面が整いすぎ)
③患者ごとに、合併症がありすぎて背景が違いすぎる(特に透析患者)

たとえば、透析中の血圧はどのくらいにすべきか?というシンプルな質問でも、結局ハッキリした結論は出てません。

(日本透析医会雑誌 Vol. 31 No. 1 2016 より引用)
専攻医

血圧が120-170mmHgで死亡率は特に変わらないなんて・・・
何を信じれば良いんだ!

(※ざっくり140-160くらいにはしておこう、と言われています)

そのため、腎臓内科は、最新のエビデンスを知っていることが賢いというよりは、ひとりひとりの患者背景や病歴の把握、検査結果の把握などが重要視される感覚があります。

おちば

腎臓内科は、「エビデンスにうるさい」というより「患者の病態にうるさい」医師が多い印象です。(笑)

この点は、慢性期を診る膠原病内科や糖尿病内分泌内科とは少し異なるポイントだと思います。

※もちろん、だからといって「最新のエビデンスを勉強しなくてもいい」わけではないので、日々の勉強は必要です。

このブログでは少しづつではありますが、最新の論文も載せていってます。(読んでもらえたら嬉しいです。)←小声

デメリット②なかなか病状が良くならない

2点めは、

おちば

病状がなかなか良くなりにくい・・・

という点です。

慢性腎臓病の患者さんは、腎臓内科にかかる時点で

●動脈硬化が進んでいる

●長い期間での糖尿病や高血圧により臓器合併症が既に出ている

●高齢者が多い

など、ある程度病状が進んでいる方が多いです。

そのため、

❌病気を治すではなく、

悪くなるのをできるだけ遅らせる

というスタンスになりがち。

蛋白尿をへらすために薬をいくつか追加したり、逆に腎機能に悪そうな薬をソッと整理したり・・・と、いわば縁の下の力持ち的なポジションです。

そのため病気をドンドン治したいという方には、おすすめできません。

スッキリなおる病気といったら、微小変化型ネフローゼに対するステロイド投与したときくらいでしょうか。再発することも少なくないですが・・・☹️

デメリット③勉強内容が多い

3つめは、勉強すべき内容が多すぎる、ということです。

どの診療科も言えるかもしれませんが、腎臓内科の分野はとにかく広いです。

輸液電解質に始まり、膠原病、循環器、病理など、他の診療科と関連する分野が多く、勉強しだしたらキリがありません・・・

そのため、一人前になるのに時間がかかると言えます。

●マイナー科の5年目の医師は一人前に患者をガンガンさばいている
●一方で、腎臓内科は5年目でも、こまめに上級医と相談している

という日常風景は、良くも悪くも見受けられます。

まあ、前向きに捉えれば、一人前になった時の付加価値がより高い、と考える事もできます・・・笑

おちば

実際、優秀な腎臓内科の先生と一緒に働いたことがありますが、ハンパないです(語彙力)。マジで。
そのへんの内科医が束になってもかなわない論理的思考能力と知識を持ってます。

勉強が嫌いでないならば、面白い分野なんですけど、知らないことが多すぎてたまにツラい気持ちになります・・・

デメリット④専門医の人数が少ないので医局に頼らざるを得ない

腎臓内科医は、メジャーな内科と比べて人数が少なめ。そのため、activityが高い腎臓内科で信頼・尊敬できる上級医と一緒に働ける病院は医局関連のことが多いです。(一部の地域を除く)

消化器内科や呼吸器内科などでは一般市中病院でひとり立ちできるような病院も少なくないですが、しっかり勉強したいのであれば、若いうちは医局に入らざるを得ないシチュエーションは多いと思います。

大学の主催する勉強会に参加できたり、専攻医の同期と仲良くなれたのは財産です。

しかし、人事によって大きく生活が振り回されたり、大学病院の雑務に忙殺されるリスクもあるので、家庭との両立が難しい可能性は考慮したほうがよいかもしれませんね。

おちば

僕は家庭の事情で専門医取得後に医局を離れさせてもらいましたが、昨今の働き方改革が進んで労働環境が改善されてくるのであれば医局に属すのもアリだと思います。

まとめ:腎臓内科は内科志望ならオススメ

■腎臓内科のメリット
・学んだ知識が一生モノ どこでも役に立つ
・ほどよいワークライフバランス
・癌は診なくてOK
・勉強内容がめっちゃ面白い ←主観

■腎臓内科のデメリット
・エビデンスが少ない・使いにくい
・病状が良くなりにくい
・勉強内容が多い
・専門医が少ない。若いうちは入局がほぼマスト

バリバリ体育会系でもないし、かといってハイポ志向ってわけでもない。

腎臓内科の分野は、内科が好きかつ、そこそこに頑張りたい人にオススメですよ。笑

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この記事を書いた人

アラサーの男性医師。内科専門医/透析専門医/腎臓専門医。
腎臓内科医として市中病院で勤務しつつ、フルタイム妻と一緒に実家遠方子育て中。(育児休業後)
忙し過ぎる若手医師向けに、医師のキャリア・専門医試験/レポート対策・仕事のコツ・医学の勉強などお役立ち情報を発信しています。
医師として頑張りたい、けれど家庭やプライベートも同じくらい大切にしたい!
そんな人の力になれたら嬉しいです。
趣味は音楽、読書、公園巡り。

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