【Figureで振り返る】第66回腎臓学会(2023)で印象に残った10のポイント前半戦 〜心不全・電解質・糸球体腎炎〜

専攻医

腎臓学会のオンデマンド配信終わっちゃったな。全部は見きれなかったけど、どんな内容があったかな

こんな人のための記事です。

2023年腎臓学会はオンデマンド配信があったこともあり、たくさんの講演を拝聴することができました。

おちばは昔からバンド好きなんですが、大学生の頃はフェス(サマソニとかモンバスとかフジロックとか)に時々参加していました。

学会って、「フェス」に近い雰囲気はあるので結構好きなんですよね。笑

今回の記事では、自分が視聴できた講演の中で

●面白かった!

●臨床で役に立ちそう!

と感じた内容を、フィギュアとともに書き残しました。

今回は、前半戦として

心不全/ARNI、電解質、糸球体腎炎

に絞ってポイントを上げていきます。

学会に参加できなかった人はもちろん、実際に講演を聞かれた方にとっても復習となるかと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください〜!!

おちば

引用元の論文も掲載しているので、興味のある方はPubMedで読んでみてくださいね。

※この記事では、おちばの備忘録としてまとめていますので、あくまで実臨床での使用についてはご自身の責任で判断ください!m(_ _)m

※図表は、すべてfree articleで読める論文から引用しています。

観客, バックライト付き, コンサート, 群衆, 夜, お祭り, ライト, 屋外
目次

心不全/ARNI

1) 退院時のBNPは、予後に関与する

Predischarge B-type natriuretic peptide assay for identifying patients at high risk of re-admission after decompensated heart failure. J Am Coll Cardiol. 2004 Feb 18;43(4):635-41. 

非代償性うっ血性心不全で入院した患者の、退院直前のBNPが再入院や死亡率と関連している、という報告がありました。

体液量を整えてから退院させることが大事なようです。

2) ARNIは、ACE-I/ARBに比較して左室逆リモデリングを来しやすい

Wang Y, Zhou R, Lu C, Chen Q, Xu T, Li D. Effects of the Angiotensin-Receptor Neprilysin Inhibitor on Cardiac Reverse Remodeling: Meta-Analysis. J Am Heart Assoc. 2019 Jul 2;8(13):e012272. 

左室逆リモデリングとはつまり、HFrEFの患者さんの「EFを上げてくれる」ってこと。

HFrEFの患者さんなら、ARBやACE-iをARNIに置き換える意識は大切ですね。

3) ARNIは、アルブミン尿を減らしにくい…腎保護作用は議論あり。

Damman K, Gori M, Claggett B, Jhund PS, Senni M, Lefkowitz MP, Prescott MF, Shi VC, Rouleau JL, Swedberg K, Zile MR, Packer M, Desai AS, Solomon SD, McMurray JJV. Renal Effects and Associated Outcomes During Angiotensin-Neprilysin Inhibition in Heart Failure. JACC Heart Fail. 2018 Jun;6(6):489-498. 

心不全に対してARNIを使うと腎機能は下がりにくくなります。

一方で、8ヶ月時点での尿タンパクは低下せず、なんなら少し増えてしまっています。

尿タンパクが増えるのは、腎保護作用としてはどうなん?という議論はまだあるよう。

おちば

どんなCKD患者にも、ACE-I/ARBよりARNIっしょ!とは現時点で言えない印象です。

4) ARNIを入れても副作用が出にくい患者の特徴4つは?

・60歳未満

・収縮期血圧125 mmHg以上

・右心機能が良い人(TAPSE>16 mm)

・ACEi/ARB高容量をもとから使っている人

は、ARNIを入れても副作用が少ないようです。

Visco V, Radano I, Campanile A, Ravera A, Silverio A, Masarone D, Pacileo G, Correale M, Mazzeo P, Dattilo G, Giallauria F, Cuomo A, Mercurio V, Tocchetti CG, Di Pietro P, Carrizzo A, Citro R, Galasso G, Vecchione C, Ciccarelli M. Predictors of sacubitril/valsartan high dose tolerability in a real world population with HFrEF. ESC Heart Fail. 2022 Oct;9(5):2909-2917. doi: 10.1002/ehf2.13982. Epub 2022 Jun 15. PMID: 35702942; PMCID: PMC9715790.

電解質

5) 体液量評価に、肝静脈や腎静脈のエコーが役に立つ

Koratala A, Reisinger N. Venous Excess Doppler Ultrasound for the Nephrologist: Pearls and Pitfalls. Kidney Med. 2022 May 19;4(7):100482. doi: 10.1016/j.xkme.2022.100482. PMID: 35707749; PMCID: PMC9190062.

体液量評価には心エコーを使うことが一般的ですが、肝静脈の波形も併用することで体液量評価ができるかも?という報告がありました。

ほかにも、頸静脈の波形をエコーでみて評価する、なんて方法もあるようです。

体液量を評価するのは本当に難しいですよね・・・

新しい便利なツールが標準化されるのが楽しみです!

※体液量の評価方法についてまとめてみました。

6) 高カリウム血症に、ロケルマは(イオン交換樹脂と思えないほど)効きまくる

Sodium zirconium cyclosilicate for treating hyperkalaemia
Technology appraisal guidance [TA599] Published: 04 September 2019 Last updated: 24 January 2022

ロケルマ、使ってる方は感覚として分かると思うんですが、カリウムがすっっごい勢いで下がりますよね。

腸管内のイオン交換樹脂とは思えないような、数時間単位で劇的に下げてくれます…

以前は「K>6mEq/Lは全例で入院」としていた長浜先生も、ロケルマが出た今では、K=6でも外来である程度粘れる、とお話されていました。

別の発表で、ロケルマは、HCO3-を上昇させる作用もある(=アシドーシスを改善させる)とのことで、そういった作用もKを下げるのに役立っているのかもしれませんね。

Fernandez-Prado R, Villalvazo P, Avello A, Gonzalez-de-Rivera M, Aguirre M, Carrasco-Muñoz CG, Fernandez-Fernandez B, Martin-Cleary C, Carriazo S, Sanchez-Niño MD, Perez-Gomez MV, Ortiz A. Sodium zirconium cyclosilicate and metabolic acidosis: Potential mechanisms and clinical consequences. Biomed Pharmacother. 2023 Feb;158:114197. doi: 10.1016/j.biopha.2022.114197. Epub 2023 Jan 4. PMID: 36916426.

7) HD患者のPTHは「the lower the better」の可能性あり

Evenepoel P, Jørgensen HS. Parathyroidectomy Versus Calcimimetic: The Lower the PTH the Better? J Clin Endocrinol Metab. 2022 Jul 14;107(8):e3532-e3533. doi: 10.1210/clinem/dgac211. PMID: 35427422; PMCID: PMC9282264.

日本のiPTHの目標値は海外と比べて低めですが、低ければ低いほど、予後が改善されるかも?という話が出ています。

もともとの論文は、PTxはシナカルセト(レグパラ)より予後が良い、というRCTの話でした。

Komaba H, Hamano T, Fujii N, Moriwaki K, Wada A, Masakane I, Nitta K, Fukagawa M. Parathyroidectomy vs Cinacalcet Among Patients Undergoing Hemodialysis. J Clin Endocrinol Metab. 2022 Jun 16;107(7):2016-2025. doi: 10.1210/clinem/dgac142. PMID: 35277957.

iPTH>500の二次性副甲状腺機能亢進症の治療としては、PTx(腫大した副甲状腺を摘出)をするか、シナカルセト(レグパラ®)などのCaSRで保存的に乗り切るか、どちらかという話になります。

PTxをして副甲状腺を取っちゃうほうがiPTH、P、Caはガッツリ下がるのですが、このRCTによると、6年後の全死亡率はPTx群がシナカルセト群より下がった(つまり、PTx群のほうが予後がよかった)、という内容でした。

PTHは、低ければ低いほうがいい、という時代が来るかもですね!

おちば

そういえば、CKDガイドラインも新しくなったことだし、そろそろ透析学会のガイドラインも2009年くらい以降の、新しいのを出してほしい…!まだかな〜

糸球体腎炎

8) IgA腎症に対しての新薬いろいろ

Stefan G, Mircescu G. Hydroxychloroquine in IgA nephropathy: a systematic review. Ren Fail. 2021 Dec;43(1):1520-1527. doi: 10.1080/0886022X.2021.2000875. PMID: 34779707; PMCID: PMC8604447.

HCQがIgA腎症に効くかも?という報告がなされているようです。

SLEに対するHCQはもはや市民権を得ている印象ですが、HCQの蛋白尿減少効果は他疾患に対しても適応となるかもしれません。

IgA腎症に対する新薬としては他にも、sparsentan(エンドセリン受容体・アンジオテンシン受容体デュアル拮抗薬)、抗APRIL抗体など、様々な新薬が期待されています。

SGLT2阻害薬もIgA腎症に対して有効かも、というDAPA-CKDの解析も報告されてますよね。

IgA腎症は扁桃摘出、RAS阻害薬、ステロイド(pozzi法あるいは仙台法)というのが基本でしたが、今後の治療の変化が楽しみです(^^)

9) 膜性腎症は、特異抗体(特にPLA2R抗体)が治療や予後評価にも有用

Akiyama S, Imai E, Maruyama S. Immunology of membranous nephropathy. F1000Res. 2019 May 24;8:F1000 Faculty Rev-734. doi: 10.12688/f1000research.17589.1. PMID: 31168358; PMCID: PMC6537914.

膜性腎症といえば、PLA2RやTHSD7Aなどが有名ですが、これらの血清抗体を使うことで病勢を評価し、治療終了時期を考えることもKDIGOガイドライン2021で推奨されているようです。

市中病院ではなかなか測定できる環境が整っていないところも多いと思いますが、高齢者に多いことも考えると、腎生検を行わずに済んだり、ステロイドを必要以上に投与しなくて済むようになる可能性があるのは楽しみですね!

10) C3腎症に対して、MMF+ステロイドや抗補体療法が効果あり

Caravaca-Fontán F, Díaz-Encarnación MM, Lucientes L, Cavero T, Cabello V, Ariceta G, Quintana LF, Marco H, Barros X, Ramos N, Rodríguez-Mendiola N, Cruz S, Fernández-Juárez G, Rodríguez A, Pérez de José A, Rabasco C, Rodado R, Fernández L, Pérez Gómez V, Ávila AI, Bravo L, Lumbreras J, Allende N, Sanchez de la Nieta MD, Rodríguez E, Olea T, Melgosa M, Huerta A, Miquel R, Mon C, Fraga G, de Lorenzo A, Draibe J, Cano-Megías M, González F, Shabaka A, López-Rubio ME, Fenollosa MÁ, Martín-Penagos L, Da Silva I, Alonso Titos J, Rodríguez de Córdoba S, Goicoechea de Jorge E, Praga M; Spanish Group for the Study of Glomerular Diseases GLOSEN. Mycophenolate Mofetil in C3 Glomerulopathy and Pathogenic Drivers of the Disease. Clin J Am Soc Nephrol. 2020 Sep 7;15(9):1287-1298. doi: 10.2215/CJN.15241219. Epub 2020 Aug 19. Erratum in: Clin J Am Soc Nephrol. 2020 Dec 7;15(12):1817. PMID: 32816888; PMCID: PMC7480558.

MPGNは、相変わらず疾患概念が難しく感じました…

形態学的にMPGNと考えたとして、その形態異常に至った原因は何かを考えるのが大変ですよね。

Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Glomerular Diseases Work Group. KDIGO 2021 Clinical Practice Guideline for the Management of Glomerular Diseases. Kidney Int. 2021 Oct;100(4S):S1-S276. doi: 10.1016/j.kint.2021.05.021. PMID: 34556256.

KDIGOガイドラインにはこんなフローチャートがあり見やすかったです。

Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Glomerular Diseases Work Group. KDIGO 2021 Clinical Practice Guideline for the Management of Glomerular Diseases. Kidney Int. 2021 Oct;100(4S):S1-S276. doi: 10.1016/j.kint.2021.05.021. PMID: 34556256.

このうちC3腎症は、他のMPGNと比べて予後が悪いようです。

しかし、それに対してMMF+ステロイドが効果があるのではないか?という報告がありました。

最近ANCA関連血管炎で使われ始めているアバコパンなども、補体に対する薬なので、MPGNにも使える日が来るかもしれませんね。

まとめ

観客, バンド, クラブ, コンサート, 群衆, ダンシング

今回の記事では、腎臓学会の振り返りをしてみました。

得られる情報の多さや、現場へ行く手間が省けること、スマホですきま時間に見られる便利さなどなどを考えると、やはりオンデマンド配信に限りますね(^^)めっちゃおもろい!

次回の記事では、後半戦としてAAVのことやCOVID-19のことなどについてもまとめてみようと思います!

■関連記事

CKDガイドライン2023は、全内科医におすすめできるわかりやすさ&情報量の多さです。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

アラサーの男性医師。内科専門医/透析専門医/腎臓専門医。
腎臓内科医として市中病院で勤務しつつ、フルタイム妻と一緒に実家遠方子育て中。(育児休業後)
忙し過ぎる若手医師向けに、医師のキャリア・専門医試験/レポート対策・仕事のコツ・医学の勉強などお役立ち情報を発信しています。
医師として頑張りたい、けれど家庭やプライベートも同じくらい大切にしたい!
そんな人の力になれたら嬉しいです。
趣味は音楽、読書、公園巡り。

コメント

コメントする

目次