【内科医なら知っておきたい】体液量評価でチェックすべき8つの指標とその注意点

専攻医

肺炎で入院していた患者さん、脱水だと思っていて輸液していたら心不全を起こしてしまった💦体液量の評価をするのは難しいな…

専攻医

低ナトリウム血症の患者が入院したら、まずはvolume評価というけれど、具体的にどうやって評価したらいいのか分からないな💦とりあえずBNP取っとく?

こんな人のための記事です。

体液評価は、輸液の調整や電解質補正の際にどの内科でも必要とされるスキルですよね。

特に腎臓内科では、AKIや低ナトリウム血症、透析患者の管理などで体液評価は避けては通れない内容です。

↑こんなふうに、体液量の評価はとっても大切です。

ただ、実際に体液評価をするとなると

●教科書に分かりやすくまとまっていない(身体所見のことが色々載っているけどイマイチ実践的でない)

●1対1対応でのわかりやすい指標がない

●指標をどう解釈したらいいか分からない(ある指標は溢水なのに、ある指標は脱水を示しているなど)

といった理由で、苦手意識を持っている人は少なくありません。

今回は、研修医・内科専攻医に向けて

体液量の評価のときに見るべき8つの指標

検査時のピットフォール

をまとめていきます!

今回の記事を最後まで読めば、体液量評価をより正確にできるはず!

おちば

それでは早速解説していきます〜!

※この記事では、バリバリにアカデミックな最先端なマニアックな知識ではなく、内科医の視点で最低限やるべきことや、普段やっていて悩むことについて、自分の備忘録としてまとめています。

絶対的な正解はないと思うので、あくまで参考としていただき実臨床での使用についてはご自身の責任で判断くださいm(_ _)m

目次

体液量評価のための8つの指標と注意点

まずは、結論から!

体液量評価をするためには

①体重(+飲水・尿量測定)

②血圧

③酸素投与量

④胸部レントゲン(+CT)

⑤心エコー

⑥BNP  (またはNT-ProBNP、hANPなど)

⑦身体所見(浮腫)・バイタル・病歴聴取

⑧その他(BUN/Cr、FENa、FEUNなど)

漏れなく、かつ時系列で評価しましょう。

おちば

実践の場では「基準値ではなく、時系列で評価する」ことがめちゃくちゃ大切です。

体液量評価の8つのポイントと、それぞれの所見のピットフォール

①体重(+飲水・尿量測定)

まず、体重の推移は参考になります。

volume評価したい患者さんは、迷わず入院時指示に、毎日の体重測定+飲水量測定、尿量測定を入院時指示に入れましょう。

ここ数週間で体重が極端に変化してきているのであれば、脱水か溢水かの大きなヒントになります。

特に、CKDの患者さんは浮腫になったり利尿薬によって脱水になったりしやすいので、腎臓内科の外来では体重測定されていることが多いです。

外来の体重を知っていれば、入院時点の体重で体液評価がしやすくなります。

さらに、入院中も体重測定を頻回におこなうことで、in-outの計算より正確にその人に過剰輸液なのか、輸液が足りないのかわかります。

飲水量と尿量測定も合わせて行うことで、より正確な評価ができるようになります。

★体重測定のピットフォール

・入院初日の体重は、病衣ではなく自宅から着てきた服のままで測定されて重めに出ることがある

・ADLが低い場合、吊り下げ式の体重計を使うため正確に測りにくい

・さらに、吊り下げ式の体重測定は病棟看護師さんの負担になるので頻回におこなうことが現実的に難しい

・数ヶ月前の体重だと、その後に痩せたり太ったりしていて、その人にとってのベストな体重が変わってきていることがある

おちば

現実的には、ADLの低い患者さんは週1-2回くらいしか体重を測れないことが多いです。その場合はin-outの計算(食事量のチェック+飲水・尿量測定)や身体診察、画像評価を駆使してどうにか推定するしかない、という状況によく直面します。

②血圧

血圧推移は重要です。

●高めが続いているなら溢水ぎみ

●低めが続いているなら脱水ぎみ

を示唆する所見です。

★血圧測定のピットフォール

・血圧を評価するときは、必ず血圧に関わる薬、つまり降圧薬・利尿薬、昇圧薬もチェックする必要があります。

・当たり前でしょ!と思うかもですが、「血圧が低すぎるから脱水だ!」と決めつけていたら、実は降圧薬をかかりつけでたくさん出されていてそれをDoしていた…なんて状況になっている患者さんは意外と見受けられます。

動脈硬化が強い患者の場合は、血圧が高くても体液過剰はないことがあります。こういう患者さんに対して、「血圧が高いから」という理由だけでどんどんドライウェイトを下げていくと、ふいに透析中に急激な低血圧で嘔吐…なんてことになってしまうことがあるため、ある程度のところで降圧薬に頼るようにします。

専攻医

透析患者さんは内服薬が多いから、持参薬をDoされがちよね。

③酸素投与量

次は、酸素投与量です。

当たり前ですが、酸素投与量が増えている場合は、体液過剰と判断する材料になります。

もともと酸素が投与されている患者でも、入院中にだんだん増えてきている場合は、溢水を示唆する所見のため注意が必要です。

★酸素投与量のピットフォール

・喘息、肺炎、COPDなど呼吸器疾患を合併している場合は体液過剰でなくても酸素化が悪化します。

・重症の患者、高齢の患者の場合は、メインの病態が心不全か?肺炎か?という議論はよく問題になります。

・こういった場合はCTや心エコーなど他の指標を参考にしながら慎重に判断しましょう。

④胸部レントゲン(+CT)

●レントゲンで心拡大や胸水を過去のものと比較します。

所見としては、血流再分布(redistribution)が心不全早期にみられます。

CTR>55%、VPW>70mmも心不全を示唆しています。

おちば

自分は上司から、入院中の透析患者さんの併診をしている場合は、特に体重に問題がなさそうでも最低2週間に1回は胸部レントゲンを撮るように指導されてました。

●胸部CT検査もvolume評価に有用です。

心拡大や胸水はもちろん、間質(小葉間隔壁)の肥厚の所見も溢水の評価に有用です。

引用元:レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室 p191

また、腹部まで写っているのであれば、IVC(下大静脈径)が明らかに拡張 or 虚脱している場合は、心エコーを取らずとも体液評価の参考になることがあります。(ただし、リアルタイムの呼吸性変動は分からないため、あくまで参考です。)

★胸部レントゲンのピットフォール

・もともと慢性心不全や慢性胸水、肺がんope後などの場合は評価が難しい

・撮影の条件でだいぶ見た目が変わる。(座位や臥位、ポータブルでの撮影だと心陰影が大きく見えてしまう)

・CTR>50%で心拡大と言われるが、CTRは測定者によって結構異なることが多いため、あくまで参考にとどめる必要あり。

※胸部画像のみかたについては、こちらの本が圧倒的に分かりやすくてお薦めです。

※ちなみに最近知ったのですが、放射線科の先生が作られていたAntaaのスライドがすごく勉強になりました。

血管内・血管外に分けた評価がレントゲンでできるとは知りませんでした。

毎回全てチェックするのは難しいでしょうが、細かい所見のみかたを一度勉強しておくと、正確に評価につながるかもしれません。

⑤心エコー

心エコーは、体液量(特に血管内)の評価をするのにとっても有用です。

心不全になると肺高血圧になることが多いため、肺高血圧の診断に有用なIVC(下大静脈径)や、TR-PG(三尖弁逆流圧較差)が間接的に溢水の所見として参考になります。

引用元:日内会誌 107:202~207,2018 心エコー図による 肺高血圧症の評価について

・ドプラエコーで測定された三尖弁逆流速度(TRV)>3.4 m/秒、もしくはeRVSP>50 mmHg の場合には肺高血圧症が存在する可能性が高い。

・推定右室収縮期圧(eRVSP)=TRPG+RAP(右房圧)

引用元:肺高血圧症治療ガイドライン(2017 年改訂版) p37

上記をまとめると、IVC>21mmで呼吸性変動が低く、かつTRPG>35mmHgだと肺高血圧の可能性が高いと言えます。

★心エコー(IVC)のピットフォール

IVCは、呼吸アシスト時(人工呼吸器やNPPV使用中)や、腹腔内圧上昇時などでは、有用でない場面もあります。

また、IVCはあくまで肺高血圧の所見なので、volume以外に肺高血圧をきたす異常(肺炎や肺気腫、膠原病など)がある場合は、参考になりません。

上記のように、IVCやTRPGだけでは修飾因子が多いので、心エコーでは他の所見も参考にします。

左心系(左室、左房)の拡大・・・ざっくりLAD>35、LVDd>50など

MR(僧帽弁逆流)の増大

拡張能障害(HFpEF)の所見=E/e’、e’、LAVI

などの異常があれば、溢水ぎみと判断できます。

引用元:肺高血圧症治療ガイドライン(2017 年改訂版) 

ちなみに、肺高血圧のガイドラインにも、肺高血圧の確定診断には右心カテーテルが推奨されています。

もしもvolume評価の難しい患者さんが入院中に心臓カテーテルを行う予定がある場合は、右心カテーテルによるウェッジ圧(PCWP)の測定依頼をすることもあります。

※すこし脱線になりますが、TRV(三尖弁逆流ピーク血流速)の測定も肺高血圧の診断に有用として知られていますが、ルーチンでエコー室の技師さんが測定してくれるイメージはありません…測定できるのであれば、参考になるかもですね。

引用元:肺高血圧症治療ガイドライン(2017 年改訂版) 

⑥BNP (またはNT-ProBNP、hANP)

6つめは、BNP、NT-ProBNP、hANPなどのバイオマーカーです。

こちらも、極端に増えていれば判断しやすいですが、症例ごとに結構ベースラインが違うので、基本的には時系列でチェックします。

急性・慢性心不全診療ガイドライン2017年改訂版では、「BNP≦100 pg/mLもしくは NT-proBNP≦400 pg/mL の場合は急性心不全の可能性は低い」という文言にとどまっています。

引用元:急性・慢性心不全診療ガイドライン2017年改訂版

透析患者さんのvolume評価の場合は、腎障害の影響を受けにくいと言われるhANP(基準値は50〜100pg/mL以下)を使うことが一般的です。

★BNP(バイオマーカー)のピットフォール

・心不全のバイオマーカーは、心房細動などもともとの心疾患の影響を受けやすい

・CKDの患者は高値となりやすい

・肥満の場合は、BNP、NT-proBNPは低値となりやすい(脂肪細胞から分泌される物質(neutral endopeptidase)により分解されるため)

・保険上、3つのバイオマーカーのうちどれか1つを月に1回しか採取できない。入院中にずっと取り続けるのは基本×。

⑦バイタル・浮腫(身体所見)・病歴聴取

身体所見は、体液評価で手軽かつ一番有用な指標なので、面倒でも必ずチェックすべきです。

特に、浮腫は一番大事です。

浮腫がなくても溢水がないとは言えませんが、浮腫があれば体液過剰の検査前確率はかなり上がります。

★浮腫のピットフォール

・低アルブミン血症や甲状腺機能異常、Ca拮抗薬(アムロジピンなど)の使用で浮腫になることもある

・臥位の患者は、下腿浮腫がなくても体幹浮腫になっていることがあるため腹部も診察

・下肢の蜂窩織炎やリンパ性浮腫など、他の下肢浮腫の原因があると、評価が難しい

あとは、脱水ぽい所見があるかどうかをチェックします。

・口の中を見て乾燥具合を確認、口渇感も問診(口渇感はあまり当てにならないという報告もある)

・ツルゴールの低下を確認(僕は胸骨あたりでシワができるかみてます)

・CRT(爪床を圧迫してからピンク色に戻るまでの時間)

・聴診で雑音の確認。頻脈もないかどうかチェック(頻脈は脱水を示唆)

身体診察の際は、病歴聴取も合わせて行いましょう。

・嘔吐下痢、消化管出血の有無

・食事量の確認

・感染の有無を確認

・溢水・脱水を起こしそうな病歴の聴取

これらは入院してから数日経過しているのであれば、経過表である程度確認することもできますが、本人に聴いたらより正確に状態がわかることがあります。

おちば

めんどくさくても、病室で問診・診察をして一次情報を取りに行くのは大切ですね。

⑧その他の検査項目 (BUN/Cr比、FENa、FEUNなど)

・BUN/Cr比
・尿酸
・FENaやFEUN
・尿中Cl
・(透析患者であれば)透析中のBV 

BUN/Cr比上昇は脱水を示唆します。

また、急性腎障害のときは、FENa低下(1%以下)、FEUN<35%などが脱水を示唆する所見です。

これらも一発で診断するというよりは、経時的な変化が大切です。

利尿薬を使用している場合は尿中Naが影響を受けるので、FENaではなくFEUNを見ましょう。

あとは、代謝性アルカローシス+尿中Clの低下<20mEq/Lは嘔吐を示唆します。

また、直接の体液評価ではありませんが、透析患者に限定した場合、透析中のBV(ブラッドボリューム)をみると除水速度の評価の参考になることがあります。

ΔBV=-15%以内におさえるのが望ましいとされていますが、患者さんによっては-5%でもしんどくなる人もいれば-20%でも平気な人もいるので、その患者さんの普段と比較するのが大切です。

★ピットフォール

BUN/Cr比・・・出血で上昇する。BUNは慢性の肝疾患や低栄養の患者で低くでる。

FENa・・・利尿薬の影響がある

BV・・・個人差がある。

おちば

ただ、ぶっちゃけるとFENaやFEUNだけで腎前性腎不全か腎性腎不全かを判断することは少ないです。あくまで1つの指標として、他の病歴や上記①〜⑦とあわせて体液量の判断をすることが多いですね。

実践で、これらの指標を使うときに意識していること2つ

以上が8つのポイントです。

1つ1つの指標のことは知っていても、自分の患者さんの体液状態について、これらをすべて網羅して把握している人は、(腎臓内科や循環器内科でない限り)多くはないのではないでしょうか。

ひとつひとつの指標は特に難しくはありませんが、実際に臨床では

モレなく全て評価する

時系列を把握する

が必要になりますので、意識してみたら良いと思います。

おちば

専攻医になったばかりの僕は、評価し忘れている項目だらけだったので、上級医から「あの項目も取ってない!この項目も把握していない!」と厳しく指導されました。はじめのうちは、語呂合わせでもなんでもいいので上記(特に①〜⑦)を丸暗記して、体液評価すべき患者では絶対に漏れがなくかつ時系列でどうなっているのかを把握するようにするという意識が大切だと思います。

パラレルで動いているときは分かりやすいです。

しかし、迷う症例の多くは、「ある項目は溢水なのに、ある項目は脱水を示唆している」と別々に動いていることが多いです。

そんなときに、それぞれの検査の弱点(ピットフォール)を思い出した上で、1つの所見に引っ張られずに総合的に体液量を判断していきたいですね。

まとめ:体液量評価は、案外むずかしい

体液量を評価するためには

①体重(+飲水・尿量測定)

②血圧

③酸素投与量

④胸部レントゲン(+CT)

⑤心エコー

⑥BNP  (またはNT-ProBNP、hANPなど)

⑦身体所見(浮腫)・バイタル・病歴聴取

⑧その他(BUN/Cr、FENa、FEUN、BVなど)

を、漏れなく、経時的に評価しましょう。

上記の検査を提出していれば、体液量のおおよその目処はつくはず。

繰り返しになりますが、初診ならまだしも、過去の受診歴や経過の長い方なら、1回の検査だけで評価しようとするのはかなり難しいので、過去と比較するようにしましょう。

おちば

過去の情報は宝の山。面倒でもカルテを漁る時間は確保しましょう!

もしも自分で判断するのが難しければ、腎臓内科や循環器内科など、常日頃から体液量のことばかり考えている診療科にご相談するのがよいかと思います。

みなさんの中にも色々な工夫をされていると思うので、こんなふうにやってるよ!とか、コレはもっと重要でしょ!みたいなご意見があれば、遠慮なくコメント欄で教えてもらえたら嬉しいです!

自分も、勉強する中で新たな知見や気付きがあれば、適宜更新していきます。

参考になれば幸いです!

参考文献・サイト(青字をクリックしたらリンクに飛べます)

急性・慢性心不全診療ガイドライン2017年改訂版 2022年更新

肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)2021年12月更新

The Conundrum of Volume Status Assessment: Revisiting Current and Future Tools Available for Physicians at the Bedside(Cureus. 2021 May 26;13(5):e15253. )…浮腫がないけれど心不全だった、という患者さんのケースをもとに作られたReviewです。溢水の時のエコー所見が動画で載っていて分かりやすい。肺エコーは慣れていれば使えるかもですが、僕は自信ないです…

・レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室・・・作者の長尾大志は、呼吸器内科医でありながら総合診療寄りでわかりやすく画像の読み方をレクチャーしている先生です。レジデント向けの本もたくさん作られています。この先生もブログを作られています。

・ジェネラリストのための内科診断リファレンス: エビデンスに基づく究極の診断学をめざして・・・2014年に作られた本ですが、いまだにお世話になっています。レポートの考察にも使いやすいので研修医は必携です。

心エコー図による肺高血圧症の評価について(日内会誌107:202~207,2018)

IVCがVolume評価に使えない10のシチュエーション・・・今日なに読もう〜病院総合診療医の論文ブログ〜の記事です。このブログの管理人の長野先生も色々と本を作られてますね。総合診療に興味のある先生は要チェックです!

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この記事を書いた人

アラサーの男性医師。内科専門医/透析専門医。腎臓内科として市中病院で勤務しています。
忙し過ぎる研修医〜専攻医を含め若手医師向けに、医師のキャリア・専門医試験/レポート対策・仕事のコツ・医学の勉強・資産形成などのお役立ち情報をまとめています。
仕事も家庭も大切にしたいと思うひとの力になれたら嬉しいです。
趣味は音楽、読書、公園巡り。

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