先生、J-OSLERの症例登録のレポートって、個性はあったほうがいいんでしょうか?
特に求められていないと思うよ。
それなら、テンプレートを作って大量生産していくのは手っ取り早いのではないでしょうか?
たしかに・・・
症例登録のテンプレを作ってみた
J-OSLERでは、症例登録という作業があります。
これは200(最低でも160)個の症例を簡潔にまとめて、レポートにすることを指します。
(※2024/10追記 J-OSLER第7世代(2024年研修開始世代)以降は、最低で120症例へ変更となりました)
一つ一つの症例の字数は500字以内と短いですが、これだけ多くの症例を登録していくのは時間がかかりますよね。
症例登録はテンプレを使って作成していくことで、効率よく作っていけます。
僕は、レポート用にテンプレート、フォーマットを作成することで、160個を専攻医2年目までに終わらすことができました。
この記事では、症例登録で穴埋めすれば(ほぼ)そのまま使えるテンプレートを載せてみました。
コピペ自由なので、参考になれば嬉しいです!
※前回作った、病歴要約の検査結果のテンプレはこちら↓
症例登録のテンプレ【症例の概略】編
救急外来に受診、そのまま入院したVer
穴埋めしていけば、自動的に文章になるようにテンプレです。
common diseaseである、肺炎や尿路感染など急性期疾患の症例で使えるフォーマットです。
例えば、こんな感じ。
例)
認知症、脳梗塞の既往のある患者。発熱、酸素飽和度低下、喀痰増加のため1月1日に救急外来を受診。血液検査で炎症反応上昇を認め、胸部X線検査で下肺野優位に浸潤影、胸部CT検査で背側優位の浸潤影を認めた。喀痰検査ではpolymicrobial patternを認めた。誤嚥性肺炎と判断して、アンピシリンスルバクタムの投与を行った。治療に際して、アレルギー、下痢、腎機能障害などの有害事象はなく経過した。治療開始後に炎症反応は改善傾向であったため、1月7日に抗菌薬投与は終了となった。その後、順調に経過し、1月14日に退院となった。
(症例はフィクションです。)
あとは、お好みで入院時バイタルとか、採血項目とか、抗菌薬の具体的な量、苦労したポイント等を好きにトッピングしてください★
もちろん、こんな風に治療がうまくいく症例ばかりではないと思うので、治療に難渋した症例等では適宜内容をアレンジして追記してみてくださいね。
(ただし、シンプルなストーリーにしたほうが書きやすいかと思います)
※ちなみに、J−OSLER公式が出している症例登録の例文はこんな感じです。
脳梗塞の既往のあるpolyvascular diseaseの高齢男性。 突然発症した胸痛を主訴に近医を受診し、ST上昇型急性 心筋梗塞を疑われて搬入された。心電図では下壁誘導のST 上昇と2:1房室ブロックを認め、急性下壁梗塞に高度房室ブ ロックの合併と判断して一時的ペースメーカを挿入の上で緊急 冠動脈検査を行った。右冠動脈#3に完全閉塞病変を認め、 薬剤溶出性ステントを用いた冠インターベンション治療を実施した。術後に心不全や機械的合併症なく、2:1房室ブロックも改善したため第2病日にペースメーカを抜去した。その後、順調に経過し、第10病日に退院した。
https://www.naika.or.jp/jsim_wp/wp-content/uploads/J-OSLER/Mihon_Shourei.pdf より
ちなみに:日付の記載のしかたは、第●病日?それとも●月●日?
個人的には第●病日と書くより、●月●日で書くほうがオススメです。
なぜなら、日数を数えるのがめんどうだから。
学会発表など公の場に出るものであれば丁寧に第●病日と記載したほうが良いと思いますが、J-OSLERの症例登録をするぶんには問題ないはず。
まあ、もし指導医の先生から指摘されたら直してください。(ちなみに、僕の指導医は何もおっしゃりませんでした)
あと、他に押さえておきたいポイントとしては・・・
いま忙しいので、別にポイントとかいらないです。
テンプレ、他にないですか?
・・・
はい。読む気になったら読んでください・・・↓
外来フォロー中の患者が、予定入院したVer
後半は救急入院バージョンとほぼ同じですが、入院までの経過を少し詳細まで書いたほうがいいかも。
慢性期の患者さんの検査入院などは、むしろこちらのテンプレのほうが使いやすいと思います。
例)
高血圧性腎硬化症、糖尿病性腎症を原疾患とした慢性腎臓病G5A3で当院へ通院加療している患者。2022年1月に内シャントを造設されていた。腎機能が悪化傾向であり、浮腫、血圧高値、高カリウム血症を呈したため、血液透析導入目的に3月1日に入院となった。3月2日より、透析導入を行った。導入に際して、不均衡症候群、血圧低下などの有害事象はなく経過した。透析による除水、除質を行うことで、浮腫、電解質異常は徐々に改善した。その後、順調に経過し、3月14日に退院となった。
(症例は、フィクションです。)
こちらも自分好みにアレンジして使ってみてくださいね^^
症例登録のテンプレ【自己省察】編
自己省察での内容は、「医学的な事項」と「社会的な事項」の2つについて書くべきとされています。
しかし、全ての症例において社会的な事項を書く必要はなく、適宜省略して書いても問題ないです。
前半の医学的な事項については、使い勝手がいいと思います。
後半の社会的な事項については様々なパターンがあると思うので、オリジナリティを出してみてください。
ただし、そこまで困ったことがなかったのであれば、無理して「傾聴できなかった」「認識していなかった」とか自分をダメ出しする必要はないです。
例)
診察した際に喀痰塗抹検査でpolymicrobial patternを呈していたが、誤嚥性肺炎を示唆する所見であると認識できなかった。グラム染色について、さらに学習しておく必要があると感じた。患者家族は、患者が脳梗塞発症後から誤嚥性を繰り返していることから、今後の療養に不安を感じていたと思われるが、入院当初、自分はその点について認識できていなかった。病状説明の際には時間をかけて傾聴を行い、これらの不安に適切に対処することが重要と考えられた。
参考例としてJ−OSLER公式による症例登録の例文は、こんな感じ。
搬入時、心拍数40、血圧90/50 mmHgとショックを呈していたが右室梗塞や房室ブロックと認識できなかった。右冠動脈領域の急性冠症候群における血行動態管理についてさらに学習しておく必要があると感じた。
患者家族は脳梗塞後遺症がある上、心筋梗塞を発症し、今後の療養に不安を感じていたと思われる。ケースワーカーが自宅での生活状況を傾聴し、その不安を聞きだしていたが、自分はその不安を認識していなかった。患者やその家族にとっては退院は診療の終了ではなく新たな出発点であることを改めて認識した。また傾聴しなければこれらの不安に適切に対処できないことを痛感した。
https://www.naika.or.jp/jsim_wp/wp-content/uploads/J-OSLER/Mihon_Shourei.pdf より引用
「〇〇についてさらに学習しておく必要があると感じた」は、使いやすくて便利な表現ですね。
まとめ 症例登録はテンプレを使って時短しよう
今回は、J-OSLERの症例登録のテンプレを作ってみました。
基本的な骨組みはある程度決めておいたほうが書きやすいし、時間短縮になります。
みなさんの時短につながれば幸いです。
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病歴要約を作る時、考察で困ったらAIを使うようにしましょう。
あっという間に英語文献を3-5個程度手に入れる事ができるので、めちゃくちゃ時短になります。
内科専門医試験の合格体験記・試験の具体的な対策をまとめています。
■おすすめの本
時短をするためには、やることを絞ることが大切です。
そのための手段のひとつに、「自動化」があります。今回の記事のテンプレ作りも、自動化の一つですね。
時間のない専攻医の皆さんに、以下の2冊がおすすめです。
↑「エッセンシャル思考」すなわち「より少なく、より良く」の重要性を述べています。
↑「エフォートレス」、つまり「無駄なしんどさをなくす」の重要性について述べています。
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