最近、エベレンゾに始まり、ダーブロック、マスーレッドなど様々なHIF-PH阻害薬が群雄割拠していますね。
今回は、新薬を使う上で気をつけたいことをまとめてみました。
HIF-PH阻害薬を使うなら、
①鉄動態チェック
②悪性腫瘍
③眼科
④肝機能
⑤血栓症
に注意する
※エベレンゾについて気になる方はこちらもどうぞ
使う前のチェックリスト
①鉄は足りているか
HIF-PH阻害薬を使用すると、
①利用効率が急激に上がる
②鉄不足では血栓塞栓のリスクがある(後述)
といった理由で、鉄補充は必須です。
また、普段CKD患者さんを見ている通り、TSAT>20%。フェリチン>100ng/mLになっているかどうかを確認しましょう。
HIF-PH阻害薬の開始1ヶ月後には再度マーカー評価しましょう。
なお、補充には経口鉄が従来よりも期待できるとのことです。
②悪性腫瘍のスクリーニング
HIFの活性化とさらにその下流での癌細胞の増殖が起きるとされています。
使用前には一般的な悪性腫瘍スクリーニングをしましょう。
特に、腎癌については最もリスクが高いとのことなので、
少なくとも年に1回程度はMRI、造影CT、エコーなど適切な画像検査でスクリーニングが必要です。
一般的な透析病院では誕生日検査など年に1回はスクリーニングされていることが多いですが、中にはそういった検査を定期的にしていない病院もあります。
急性期病院で入院した際、DPCのことを考えると「ついでにMRI」は難しいかもしれませんが、なにか他の理由があれば画像スクリーニングはしておきたいですね。
癌ではないですが、同様の理由で嚢胞の増大のリスクがあるため、多発性嚢胞腎、あるいは後天性腎嚢胞の患者は注意しましょう。
③眼科診察
VEGFによる血管新生作用があるため、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性症は注意が必要です。
使用開始前に、眼科へ診察依頼を出しましょう。
④肝機能のチェック
HIF-PH阻害薬の使用により肝機能障害が起きることがあるようです。
また、Child-Pugh分類B以上の肝機能障害があると、最高血漿中濃度上昇やAUCinfが上昇するそうで、
そういう患者は減量を検討しましょう。
なお、Child-Pugh Cの患者では検討されていないらしいので、使わないほうが無難かも。
⑤血栓塞栓症(DVT、肺塞栓、心筋梗塞、脳梗塞)
急激に血液が粘稠になるため、貧血のコントロールには、Hb 0.5g/dL/週のペースを超えないように注意しましょう。
Hbの変化に応じた量の調整方法は添付文書に細かく記載されています。
心筋梗塞など血栓症が既往にある患者でも、添付文書上で禁忌というわけではありません。
リスクベネフィットを考えて使用を検討が必要かと思います。
また、鉄欠乏があると血栓塞栓症になりやすいので鉄補充は重要です。
その他
高血圧、高カリウム血症、血管石灰化に注意するようにとされていますが、
これらはルーチンでチェックされているかと思います。
また、良いのか悪いのか分かりませんが、LDL−コレステロール低下作用もあります。
まとめ
HIF-PH阻害薬を使いたいときは
HIF-PH阻害薬を使うなら、
①鉄動態チェック
②悪性腫瘍
③眼科
④肝機能
⑤血栓症
に注意する
に、気をつけましょう!
参考文献
今回の記事は、日本腎臓学会が出している
適正使用に関するrecommendation(日腎会誌 2020;62:711-716)
を参考にまとめてみました。
・HIF-PH阻害薬のReviewは、
・Kuriyama et al. Renal Replacement Therapy (2020) 6:63
が読みやすいです。
おまけ
・HIF-PH阻害薬は、海外では、HIF stabilizer(HIFを安定させる薬)と言われてますね。
ごちゃごちゃになって「HIF阻害薬」なんて言い方をしないように気をつけたいものです。笑
■おすすめの本2選
・ビジュアルアブストラクトで読み解く 腎臓論文ベストセレクション
こちらも最新の論文が揃っています。
HIF-PH阻害薬についても載っていますよ!
・プロフェッショナル腎臓病学
腎臓界隈の清書の中で一番新しいものだと思います。
COVID-19のことも載っていておすすめです。
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J-OSLERや、腎臓版J-OSLERについての記事も作っています。
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