【これだけは知っておきたい】HIF-PH阻害薬の使い方②「エベレンゾ」について

研修医

エベレンゾって、名前おもしろいですよね。エベレストみたい。

専攻医

HIFが低酸素の場所=山の上で発現することから連想して業者がつけたみたいやね。

研修医

じゃあ国産のHIF-PH阻害薬が出たら「フジサンゾ」とかになるんですかね!爆

専攻医

・・・ごめん、「エナロイ」ってやつが、もう鳥居薬品から出てるんよ

研修医

・・・

目次

HIF-PH阻害薬の代表:エベレンゾ

最近腎性貧血に対し頻用されている、HIF-PH阻害薬。

慢性炎症のある患者など、一部のESA低反応性の腎性貧血に対して有用な薬です。

今日は、その代表格のエベレンゾ(=ロキサデュスタット)についてまとめてみました。

少しでも参考になれば幸いです♪

はじめに:HIF-PHD阻害薬一覧

HIF−PHD阻害薬を強い順に並べてみる(イメージ)

エベレンゾ(=ロキサデュスタット)

ダーブロック(=ダプロデュスタット)

エナロイ(=エナロデュスタット)

バフセオ(=バダデュスタット)

マスーレッド(=モリデュスタット)

強さは、上から順番に造血効果が強い。(イメージ)

エベレンゾは一番効果が強い印象。

エベレンゾ=ロキサデュスタット

薬剤の特徴

■作用機序

ロキサデュスタットは、転写因子である低酸素誘導因子(HIF:hypoxia inducible factor)の分解に関わるHIF-プロリン水酸化酵素(HIF-PH)を阻害します。

HIF-αの分解が妨げられてHIF経路が活性化され、エリスロポエチンが増加することにより、赤血球形成が促進されると考えられています。

■製剤:錠剤(20mg、50mg、100mg)

■開始タイミングの目安(ESA非使用の場合)

保存期CKD、腹膜透析:Hb11g/dL未満

血液透析:Hb10g/dL未満

■半減期 15-20時間程度 (HD患者、保存期CKD,PD患者で同等)

投与量と調整方法

■開始用量

ESA未使用の場合:1回50mgで開始、週3回で経口投与

ESAから切り替える場合:1回70mgまたは100mgを開始用量とし、週3回経口投与

※切り替え時の目安は以下の通り

エリスロポエチン製剤(IU/w)ダルベポエチン(μg/w)エポエチンベータ(μg/4週)エベレンゾ(mg/回)
4500未満20未満100以下70
4500以上20以上100超え100

※いずれも最高用量は1回3.0mg/kgを超えないようにする(60kgなら180mg以下)

■投与量の調整

基本的に、4週毎に調整する

※4週以内にHb2.0g/dL以上の変化した場合は、減量または休薬

4週前からのHb変化10.5g/dL未満10.5-11.5g/dL11.5-12.5g/dL12.5g/dL-
-1.0g/dL未満1段階up1段階up変更なし休薬
-1.0〜+1.0g/dL1段階up変更なし1段階down休薬
+1.0〜+2.0g/dL変更なし1段階down1段階down休薬
+2.0g/dL以上1段階down1段階down1段階down休薬

一度休薬したら、Hbが11g/dL未満になった時点から1段階減量して再開

投与量調整は、下記表に従って上下する

段階12345678
投与量20405070100120150200

■投与禁忌:妊婦、妊娠している可能性のある女性

相互作用

■併用注意

・セベラマー(フォスブロック、レナジェル)、ビキサロマー(キックリン

・多価陽イオンを含む経口薬剤(カルシウム、鉄、マグネシウム、アルミニウム等を含む製剤)

エベレンゾの効果が低下するため、1時間以上間隔を空けて内服

・HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)→スタチンの最高血中濃度(Cmax)が上昇するため、筋障害の増強リスクあり注意する。

・プロベネシド→エベレンゾの効果が増強するため、エベレンゾ減量を。

投与前のチェック項目

以下のページにまとめています

知っておきたいエベレンゾの豆知識

・ESAと比べてMACE+(MACEに入院を要する心不全または不安定狭心症を加えた評価項目)を減らす参考文献

高カリウム血症を起こしやすい(NEJM. 2019;381:1011–1022.NEJM. 2019;381:1001–1010

・保存期CKD患者では、代謝性アシドーシスが多い(NEJM. 2019;381:1001–1010

・用量依存性に血小板低下のリスクがある(ESAでは血小板上がりすぎてる人もいるので、ちょうどいいかもしれない)

LDL-Cを下げる作用がある(HIF-1の作用を下げるため)

・他にも腎機能悪化のスピードをゆっくりにするかも?など、様々な効果が噂されています。

まとめ

■エベレンゾは、特に慢性炎症の症例などで有用な薬剤ですが、急激な貧血の是正に伴う血栓のリスクなどから、投与量調整は慎重に行う必要があります。

添付文書通りに使わないと有害事象で痛い目をみる可能性があるので注意しておきたいですね。

■P吸着薬やカルシウム・マグネシウム製剤、スタチンなどは併用している症例は少なくないです。

内服タイミングを眠前にするなど、他の薬剤とずらす工夫が必要です。

さらに興味のある方には、HIF-PHD阻害薬の他の4剤も含めてエビデンスがまとめられているReview(Kidney Int Suppl . 2021;11(1):8-25.)がおすすめです!

以上です!お疲れ様でした〜!

■参考文献:

・エベレンゾ 添付文書

Haase VH. Hypoxia-inducible factor-prolyl hydroxylase inhibitors in the treatment of anemia of chronic kidney disease. Kidney Int Suppl (2011). 2021;11(1):8-25.

■おすすめの本

・ビジュアルアブストラクトで読みとく腎臓論文ベストセレクション

腎性貧血を含め、最新のエビデンスが、たくさんの図と共に載っています(^^)

各分野の第一人者たちが紹介する論文、面白いですよ!

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この記事を書いた人

アラサーの男性医師。内科専門医/透析専門医/腎臓専門医。
腎臓内科医として市中病院で勤務しつつ、フルタイム妻と一緒に実家遠方子育て中。(育児休業後)
忙し過ぎる若手医師向けに、医師のキャリア・専門医試験/レポート対策・仕事のコツ・医学の勉強などお役立ち情報を発信しています。
医師として頑張りたい、けれど家庭やプライベートも同じくらい大切にしたい!
そんな人の力になれたら嬉しいです。
趣味は音楽、読書、公園巡り。

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