専攻医GLP-1受容体作動薬ってよく処方するけど、注意点って何があるんだろ?吐き気くらい?



2024年にRecommendationの第2版が出ていたけど、ちゃんと読んでなかった・・・!
こんな人のための記事です。
インクレチン関連薬の使用頻度は高まっており、もはや糖尿病内科以外の内科医も知識をきちんと押さえる必要がありそうですね。
✓ インクレチン関連薬をよく処方するが、最新の注意点を整理したい
✓ GLP-1受容体作動薬とインスリンの切り替えに不安がある
✓ 高齢者への処方で「ちょっと待てよ」と思う場面がある
こういった場合に役立てるため、2024年のrecommendationを復習したいと思います。



それでは早速、いってみましょう〜!
※情報はあくまで2024年の時点のものなので、最新の知見は糖尿病内科の先生にご確認を!
インクレチン関連薬とは(おさらい)
インクレチンとは、食事摂取に応じて消化管から分泌されインスリン分泌を促す消化管ホルモンの総称。
GIPとGLP-1の2種類が同定されている。
| 種類 | 代表薬 | 主な対象 |
|---|---|---|
| DPP-4阻害薬 | シタグリプチンなど | 非肥満・インスリン分泌不全 |
| GLP-1受容体作動薬 | リラグルチド、セマグルチド | 肥満・インスリン抵抗性 |
| GIP/GLP-1受容体作動薬 | チルゼパチド | 肥満・インスリン抵抗性 |
単独では低血糖リスクが低いのが特徴だが、他剤との組み合わせや患者背景によって話が変わってくる。
① 重症低血糖:SU薬・インスリンとの併用に要注意



SU薬を飲んでる患者さんにDPP-4阻害薬を追加しようとしてるんだけど、そのままでいいですか?



高齢者や腎機能低下がある患者さんなら、まずSU薬を減量してから追加するのが必須だよ。
高齢者・腎機能低下者(軽度も含む)では、SU薬にDPP-4阻害薬を追加する際に重症低血糖が散見されています。
SU薬の上限目安(DPP-4阻害薬追加前に減量)
- グリメピリド(アマリール):2mg/日以下に
- グリベンクラミド(オイグルコン・ダオニール):1.25mg/日以下に
- グリクラジド(グリミクロン):40mg/日以下に
GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬をSU薬に追加する場合も、DPP-4阻害薬に準じた慎重な観察が推奨されています。
② インスリンからGLP-1へ切り替え:死亡例あり
インスリンを中止してリラグルチドまたはチルゼパチドに切り替えた後にDKAを発症し、死亡に至ったとされる症例が報告されています。



GLP-1に切り替えたら「インスリンがやめられる」って思ってる患者さん、多いんですよね…



GLP-1受容体作動薬はインスリンの代替薬じゃないんです。内因性インスリン分泌が高度に低下してれば、切り替えで血糖が急悪化するリスクがある。
切り替え前に確認すべきこととしては、以下の項目があります。
- 内因性インスリン分泌能の評価(CPRなど)
- (腎機能低下者では分泌能の正確な評価が難しい点に注意)
- 2型糖尿病でも慢性高血糖放置でインスリン分泌が高度に低下することがある
切り替えの可否に迷ったら、糖尿病専門医へのコンサルトが大事ですね。
③ 高齢者・低BMI:サルコペニア・フレイルのリスク
※高齢者にチルゼパチドを開始後、死亡に至った症例が報告されているそうです。
国内治験には主に肥満傾向の非高齢者が参加しており、以下の患者群では安全性・有効性が十分に評価されていません。
| 対象 | 注意点 |
|---|---|
| BMI < 23 | 安全性・有効性の評価が不十分 |
| 75歳以上(後期高齢者) | 安全性・有効性の評価が不十分 |
| 65歳以上 | 消化器症状の発現割合が高い(東アジアでの治験統合解析) |



食欲が落ちてきた後期高齢者に、体重減少効果のある薬を出すのは確かに怖いですね…



ADLや認知機能が落ちてると有害事象への対応も遅れるから、本当に注意が必要。過度の体重減少や嘔気・嘔吐が出たら減量か中止を考えてね!
BMIの低い高齢者への使用可否については、糖尿病専門医へのコンサルト検討ですね。
④ 水疱性類天疱瘡(BP):DPP-4阻害薬に特有
DPP-4阻害薬使用中に水疱性類天疱瘡(BP)の発症が報告されている。まれだが見逃しやすいです。
BPのリスク因子
- 男性
- 高齢者
- HLA-DQB1*03:01の保因者
- 選択性の低いDPP-4阻害薬の使用
全身の皮膚に多発する掻痒を伴う浮腫性紅斑と緊満性水疱が特徴。口腔粘膜病変が生じることもある。
⚠️ BPが疑われたら:皮膚科専門医へコンサルト → DPP-4阻害薬を中止 → ステロイド外用・内服 → 血糖管理について糖尿病専門医へコンサルト
※GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬では、BPは2024年発表時点で問題視されていないそうです。
⑤ 膵疾患:膵炎・膵癌
| 薬剤 | 急性膵炎リスク | 膵癌リスク |
|---|---|---|
| DPP-4阻害薬 | 有意な上昇あり(頻度低) | 上昇なし |
| GLP-1受容体作動薬 | 上昇なし | 上昇なし |
| GIP/GLP-1受容体作動薬 | 上昇なし | 上昇なし |



アルコール多飲や胆石持ちの患者さんには特に気をつけておいた方がよさそうですね。



2型糖尿病自体が膵炎・膵癌のリスクを上げることも覚えておいて。上腹部痛・嘔気・嘔吐があれば薬の有無にかかわらず迅速に対応が必要ね。
⑥ 胆道系疾患:長期使用ほどリスクが高まる
DPP-4阻害薬・GLP-1受容体作動薬ともに、使用期間が長いほど・投与量が多いほど胆石・胆嚢炎・胆管炎・胆汁うっ滞性黄疸のリスク上昇が報告されているそうです。
機序はGLP-1の胆嚢収縮抑制作用による胆石形成促進と考えられているそう。
⚠️ 使用前ならびに使用中に腹部超音波検査等で胆石の有無を確認することが大事ですね。
上腹部・右季肋部の不快感・鈍痛・発熱があれば迅速に診断・治療を。
⑦ RS3PE症候群:DPP-4阻害薬使用中に出たら疑う



RS3PEって正直、あまり意識したことなかったです…



まれだし不定愁訴と混同されやすいから見落とされやすい。DPP-4阻害薬使用中に出たら念頭に置いておいてね!
RS3PE症候群の3徴
- 対称性滑膜炎による末梢関節痛
- 両側手背・足背の圧痕を残す浮腫
- 手指屈筋腱の炎症による疼痛
💡 疑ったら:膠原病・リウマチ専門医へコンサルト → DPP-4阻害薬中止 → ステロイド内服 → 血糖管理について糖尿病専門医へコンサルト
💡 GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬ではRS3PEは現時点で問題視されていない。
まとめ:専門医コンサルトが推奨される場面
- 高齢者・腎機能低下者でのSU薬+DPP-4阻害薬追加の用量判断に迷う時
- インスリンからGLP-1受容体作動薬・チルゼパチドへの切り替えを検討する時(特に腎機能低下者)
- BMIの低い高齢者へのGLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬使用を検討する時
- DPP-4阻害薬使用中の皮疹・関節腫脹など薬剤性副作用が疑われる時の血糖管理



インクレチン関連薬は確かに使いやすい薬だけど、「単独では低血糖リスクが低い」という印象に引っ張られすぎないようにしたいところ。特に高齢者・腎機能低下者・低BMIの患者さんでは一歩立ち止まって考えることが大事ですね〜
※Claudeに手伝ってもらいながらまとめました。
出典:日本糖尿病学会 薬剤の安全使用に関する委員会「インクレチン関連薬の安全な使用に関するRecommendation 第2版」2024年5月18日
https://www.jds.or.jp/uploads/files/recommendation/incretin.pdf
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