J-OSLERをやってるけど、並行して腎臓内科専門医の取得のために準備したほうがいいことはあるのかな。
研修医の時点で、腎臓内科を目指したいと思っているけれど、今から気をつけておくことはあるかな…
こんな人のための記事です。
腎臓内科に興味はある、あるいは目指しているけれど、具体的に何をしたらいいか、イマイチ良くわからない人は多いのではないでしょうか?
僕自身、研修医〜内科専攻医の初めの数年は、J-OSLER対策と日常業務に追われて、腎臓専門医のことをリサーチする暇がありませんでした。
ところが、腎臓専門医や透析専門医の準備(レポート作り)をいざ始めてみると
●J-OSLERに〇〇な症例を使わなければよかった〜!💦
●研修医のうちに〇〇をしておけばよかった〜!💦
様々な後悔をしています。笑
みなさんには同じ過ちを繰り返してほしくない!
そんな気持ちで、今回は、腎臓内科志望の研修医・専攻医が知っておきたいコツやポイントをまとめてみました。
この記事では、腎臓&透析専門医の取得を見据えた上で
- レポート作成で注意しておきたいこと
- 症例登録・病歴要約を作っていく上で知っておきたいこと
- 腎臓&透析専門医取得に必要な要件として早めにやっておきたいこと
を解説します。
専攻医はもちろん、研修医にも役に立つまとめになってるよ
効率よく専門医を取得して、自分のやりたいことに集中できるように頑張っていきましょう!
症例登録のポイント
①J-OSLERの症例登録は、「専攻医2年目以降に経験した腎臓症例」をなるべく多く登録しておく
まず知っておきたいことは、腎臓版J-OSLER(J-OSLER-JIN)の症例登録のシステムについてです。
J-OSLER-JINでは
- 最低160症例(入院症例112例+外来48例)の症例登録
が必要です。
J-OSLERでもたくさん症例登録をしなければならなかったのに、さらにJ-OSLER-JINでも症例を登録していくのは本当に大変ですよね。
しかし、J-OSLERで登録した症例はJ-OSLER-JINに使いまわすことができるということ。
すなわち、J-OSLERに大量に腎臓症例を登録しておくことで、それをJ-OSLER-JINに移行(コピペ)して症例数が稼げるんです。
一粒で二度美味しいなんて、J-OSLERの症例を使わない手はないよね
さらに学会に確認したところ、
- J-OSLERからJ-OSLER-JINに流用する症例数に上限はない
- 同じ患者でも、入院症例と外来症例は別症例として使える
- J-OSLERで登録した疾患群が腎臓以外であっても、腎臓疾患の症例なら使ってOK
とのことでした。
160症例という量ですが、意外とサクッと集まる感じがしてきますね!
ただし、いくつか注意点があります。
J-OSLERからJ-OSLER-JINへ移行するときの注意点
- 初期研修〜専攻医1年目までの症例は移行できない※
- 腎臓内科の指導医が指導した症例のみ移行できる
(※J-OSLER3世代までは、特別措置で専攻医1年目のときの症例も使えます)
この記事を見ている人はJ-OSLER4世代以降の人が多いと思いますが、基本的には内科専攻医2年目(医師4年目以降)の症例しか使えないことに注意しましょう。
また、指導医が腎臓内科医であることにも注意が必要ではあります。
(ただし、こちらについてはそこまで厳密なものではない印象です。)
他の診療科をローテーションしている時の症例でも「腎臓内科の指導医に相談しながら治療した症例」であれば使ってOKとのことでした。
たとえば、「自分が他の内科でローテーションしている時にたまたまAKIをきたした症例」を経験した場合、そのAKI診療を腎臓内科指導医に相談しながら行っていればOKのようです。(学会に問い合わせて確認済み)
腎臓内科で入院中の患者さんだけじゃなくても良いっていうのはありがたいな。
以上より
症例登録の具体的なプラン
専攻医1年目:J-OSLERの腎臓以外の症例を登録して、J-OSLERのほうの疾患群を早めにクリアする
専攻医2年目:J-OSLER-JINに使い回すための腎臓症例を片っ端から登録する。他科ローテ中でも、腎臓症例があれば登録しておく。(腎臓内科の指導医に相談するのを忘れない)
こういったプランが良さそうですね。
他にも、症例登録についてはこちらの記事にまとめています。
病歴要約のポイント
②J-OSLERの病歴要約では、腎臓症例はなるべく使わない
J-OSLERの病歴要約では、腎臓症例はなるべく使わないようにしましょう。
病歴要約について
- J-OSLERでは29症例
- J-OSLER-JINでは22症例
作成する必要があります。
病歴要約は、主訴、現病歴から考察に至るまで作るのに時間がかかる作業です。
できればJ-OSLERで作った病歴要約をJINのほうにも使いまわしたいですよね。
しかし、J-OSLERの病歴要約は、J-OSLER-JINに流用できません。
症例登録のほうではOKだったのに・・・学会のケチ(T_T)
腎臓内科で入院する症例は様々な合併症を来していることが多いので、J-OSLERの病歴要約で使いたくなる症例はたくさんあるでしょう。
しかし、J-OSLERで登録した症例は流用できないため、JINで使える症例が減ってしまいます💦
JINの病歴要約で使う予定の症例は、なるべく温存しておきましょう。
③J-OSLER-JINの病歴要約は、透析症例や血漿交換症例をできるだけ入れる
J-OSLER-JINの病歴要約で使う症例は、透析症例や血漿交換症例などを多めに盛り込むようにしましょう。
なぜなら、透析專門医レポートはJ-OSLER-JINの症例をいくつでも流用できるからです。
透析専門医の取得には
- 18症例の病歴要約
を作る必要があります。
透析専門医のレポートで必要な症例は以下のような症例です。
上記に当てはまるような症例については、積極的にJ-OSLER-JINでレポートにして作っておくと良いです。
さらに言えば、JINの病歴要約だけでなく、J-OSLERのときの病歴要約も、透析専門医レポートに全然使いまわしてOKです。
(②の理由で使い回せる症例は少なめかと思いますが…)
積極的に使いまわして時短していきましょう。
※ちなみに、透析専門医の取得には、症例登録160個なんていう訳の分からない義務はありません。
それだけで透析医学会のこと好きになっちゃいそう。
④病歴要約に使った透析/血液浄化症例は、透析機器や透析条件をメモしておく
透析専門医レポートでは、透析機器や透析条件を記載する欄があります。
下の赤線部位です。
拡大してみるとこんな感じ。
そのため、透析専門医の症例で病歴要約にする際は、透析条件についてメモしておくことを忘れないようにしましょう。
病歴要約の作成例をちゃんと提示してくれている透析学会、ありがたいですね。
レポート以外についてのポイント
⑤透析患者さんの剖検症例があれば、必ず1度は参加する
透析患者さんの剖検症例があれば、必ず剖検やCPCカンファレンス(臨床・病理検討会)に参加するようにしましょう。
透析専門医のレポートでは
- 透析症例の剖検例や、死因検討例のレポート
が必須です。
施設によって違いはあると思いますが、剖検症例を経験できる機会は多くはありません。
特に透析した症例の剖検を経験できることは少ないので、もしもその機会があればできるだけ参加していきましょう。
専攻医のときの症例はもちろん、研修医のときに経験した症例でもOK
※数年前までは剖検症例のみがレポートの適応でしたが、最近は条件が緩和されて剖検をしなくても死因検討会を行うことで代用することが可能となりました。
そのため、剖検症例がないまま医師7年めを迎えても、透析専門医の取得が遅れるわけではありません。
しかし、剖検症例のほうが具体的な臓器障害の所見などについてしっかり記載することができるためレポートが書きやすいと僕は思います。
参加できるタイミングがあるなら、めんどくさがらず参加するようにしましょう!
⑥定期的に腎臓学会や透析学会で学会発表をしておく
透析専門医に必要な要件のひとつに「規定の単位を取得しているか」という項目があります。
透析専門医取得には
- 30単位
を取得していることが必要です。
単位とは、学会参加、学会発表、論文作成、セルフトレーニング問題、e-ラーニングによって得られるものです。
これらのうち、学会発表と学会参加はコスパが圧倒的に良いです。
透析学会の総会に参加するだけで10単位ですし、さらに筆頭演者で発表したら追加で20単位がもらえます。
腎臓学会に参加しても単位数はゲットできます。
ちなみに
腎臓専門医の取得には、
- 腎臓関連の学会に最低3回参加すること
- 学会発表か論文発表を、合わせて2件おこなっていること
が必要とされています。
そのため、腎臓学会や透析学会には定期的に参加して、可能な限り学会発表もしておくようにしましょう。
⑦透析に関する論文を早めに1本書いておく
透析に関する症例の論文(ケースレポートなど)は、なるべく早めに1本書いておくのがおすすめです。
透析専門医の取得には
- 論文業績(ケースレポートなど)を1つ作り、資格の申請締切日までにアクセプトされていること
が必要とされています。
よくある流れとしては、学会発表で使った症例をそのまま論文化(ケースレポート作成)するパターンです。
腎臓関連の学会誌なら何でも良い(腎と透析、透析会誌、腎臓学会誌など)ので、とにかく一つに提出することができればOKです。
ただし、論文はなかなか一朝一夕で作る訳にはいきません…。
実際、透析専門医を取得できる学年なのに、論文が作れていないせいで足踏みしている先輩方をちらほらと見たことがあります。
良い症例と巡り会えなかったり、執筆に手間取ったりと、なかなかスムーズにいかないことが多いからです。
初期研修医のうちでも専攻医の序盤でも、とにかくケースレポートのネタがあれば早めに一つ書いておくようにしましょう。
※自分で書いていなくても、「共同著者に入らせてもらっておく」だけで専門医を取得することはできます。
透析専門医を受けたいタイミングでもしも自分で論文を作れていなくても、自分が診療に携わった症例で、他の人が作った論文が腎臓関連の学会誌などにアクセプトされていればこの条件はクリアとなります。
誰も自分の周りの人が作っていない場合は、自分で作る必要があるので、早めにやっておきましょう。
まとめ
この記事では、腎臓専門医、透析専門医の取得をしたい専攻医・研修医向けに、具体的な注意点やポイントを解説しました。
専門医の取得はあくまで目的ではなく手段です。
できるだけコスパよく取得し、自分の本当にやりたいことに使える時間をふやせるように工夫していきましょう。
一緒にがんばりましょうね
■おすすめの本
・この局面にこの一手! Dr.長澤直伝! 腎臓病 血液透析の定跡
たくさんの腎臓に関する名著を書いておられる長澤先生の新版です。
この定跡シリーズは全て大好きなんですが、今回のが一番役に立つかもしれません。
透析は、エビデンスが少ない分、割とファジーな部分をどう学ぶかが難しい分野だと感じています。
そのファジーさとの付き合い方まで、わかりやすい口調で教えてくれている、最高の入門書だと思います。
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コメント
コメント一覧 (3件)
記事参考にさせていただいております。内科(腎臓)専攻医 5年目医師 の者です。突然のご質問失礼致します。
学会発表についてですが、例えば透析学会発表1回分を
腎臓内科専門医、透析専門医のそれぞれのタスク1回分として
重複カウントできますでしょうか?
ちろう先生
いつもお読みいただきありがとうございます!
「1回の学会発表を、実績として腎臓専門医の申請の時と、透析専門医の申請の時のいずれにも使うことができるか」ということですよね?
可能です!
透析専門医と腎臓専門医はそれぞれ認定している組織が異なります。
なので、どちらかで使ったらもう片方で使えない、ということは(2023年度の時点では)特に言われてないです。
もしも不安であれば、透析専門医委員会の問い合わせ先(senmon-4@jsdt.or.jp)や、腎臓専門医の問い合わせ先(nishimura@jsn.or.jp)へ確認のメールをしてみても良いと思います。
いずれも返事は迅速に、かつ割とフランクに返してくれますよ!(^^)
参考になれば幸いです!
おちば
おちば先生
お返事遅れてしまいすみません。
質問の件、大変ご丁寧にお返事ありがとうございます😭
非常に助かりました。
今後もブログ応援させていただきます!ありがとうございました。