医局をやめて自由に働きたい。でも、医局をやめたらどんな生活が待っているんだろう…
家庭の都合で医局外での働き方に興味があるけど、実際どんな感じなのかしら…
こんな人のための記事です。
医師10年目前後は、専門医を取得したうえで医局を辞める方も多い時期です。
家庭やプライベートの環境を考慮して、一人で就職先を見つけて転職してからの生活は、どのような感じなのか、直接具体的な話が聞けることって意外と少ないですよね。
今回は、医局を実際にやめてホワイト病院で就職したおちばが、就職先でどのような環境だったか、3ヶ月間働いてみた正直な感想を残したいと思います。
ネット上には「医局やめてハッピーライフ!」って感じの記事が多いですが、実際のところ、「早い内に医局をやめるのは万人に向いているわけではない」と感じたので、その点も含めて解説します。
比較的はやめに医局を離脱したい人や、今後のライフプランに悩んでいる人に参考になると思います。ぜひ最後まで御覧ください〜!
おちばのスペックと現状の働き方
J-OSLER第2世代です。内科専門医、腎臓専門医、透析専門医を最短のタイミングで取得しました。
もともと医局に属して働いていましたが、家庭の事情で、現在は医局をやめて働いています。
職場環境としては
●週4常勤+週1非常勤
●当直やオンコールなし
●二次救急の市中病院
という感じです。
医局をやめて3ヶ月ホワイト病院では働いた感想(嬉しかったこと)
①家族時間の最大化ができた
まず、いちばんの目標だった、「家族時間の最大化」が実現できました。これが一番嬉しいです。
家事育児をきちんと妻と分担できるので、企業でゴリゴリ働いている妻のキャリアを応援できるようになりました。
●保育園の送迎にいける
●夜ご飯や寝かしつけも妻と交代で可能
●当直や透析当番で1日中ワンオペを妻にお願いしなくてはいけない日がなくなる
●週末に余裕をもって子どもと公園あそびや旅行に行ける
●両親や義両親に会いに行き、じっくりと時間をすごせる
幼い子とすごせる時間も、両親との時間も、残る人生で意外に少ないといいます。こどもは小学校高学年になる頃には友達と遊ぶようになりますし、両親もいつまで元気でいてくれるかもわかりません。
家族とゆっくり過ごす時間は、何よりも貴重だと実感しています。大事に味わっていきたいところです。
②腎臓内科×総合診療のやりがいを再確認
2つめは、地域密着型の病院で腎臓内科としてのやりがいを再確認できたことです。
僕はもともと興味があった総合診療の分野に力を入れている病院へ勤務しはじめました。
(意外に感じられるかもしれませんが)腎臓分野と総合診療や一般内科の分野の相性はとてもよく、腎臓内科の常勤がいないor少ない病院への就職をすることで腎臓内科としての専門性を発揮することができます。
●一般内科外来で元気で若いのに尿異常がある
●高齢者でeGFRが40くらいの患者さんをどうマネジメントするべきか
●CKD患者の生活指導や食事療法
●低ナトリウム血症や高カリウム血症など電解質異常のコンサルテーション例
●透析直前の患者さんをいつ専門医に送ればいいか
●SGLT2阻害薬(フォシーガ®など)やARNI(エンレスト®)、ジルコニウム(ロケルマ®)など、新薬の使い方
など、腎臓内科であればよく経験する基本的なCKD・透析診療でも、他の科の先生にとって やりづらいと感じたり悩んだり場面は多いようで、いろいろ相談されます。
一見マニアックとされる腎臓分野での基本診療は、一般内科が中心の病院でニーズが多いようです。
これは、先日腎臓内科のツイッタラーであるTT先生もXでpostしており、非常に腹落ちしています。
一般内科を外勤でやって思うのは、腎臓内科ベースで一般内科医として働くのも地域によってはニーズがあるだろうなという事。
— TT(腎臓内科×膠原病内科) (@TT58852391) June 24, 2024
色々な働き方がある診療科なので、内科系をお考えの先生にはオススメですね〜。 https://t.co/VQENwqg7Jp
腎臓内科の最先端の医療として、原発性ネフローゼの治療や腎移植、血漿交換など高度な医療をバリバリ・・・って感じは難しいですが、一つの病院を「CKD管理がきちんとできる病院」に変えていくやりがいを強く感じています。
※腎臓内科を選んだメリット・デメリットはこちらにまとめています
③健康的な生活を手に入れた
時間外労働や当直がなくなったことで、健康になりました。
20歳代のときには感じていなかったのですが、30歳代になると、当直の後の数日はホントに体調崩しやすくなります🤔
当直って、たとえ割と寝れた日であっても、なんだか眠りが浅かったりしますよね…
最近は、
●朝にランニング
●散歩
●宅トレ(妻と)
●睡眠時間7時間確保
など、健康を意識した生活ができるようになりました。
精神的にも身体的にもゆとりのある生活ができています。
今後も続けていきたい所存です!
医局をやめて分かったデメリット(辛かったこと)と対策
さて、続いては、医局を離れたデメリットや辛かったことと、その対策をお伝えします。
①孤独を感じる
まず最初にして最大のデメリットとして、「孤独感がある」という点です。
4月の段階ではバタバタしていて孤独を感じることも少なかったのですが、徐々に一人で色々とこなせるようになってきて、5月頃には寂しくて、けっこう鬱でした。
いわゆる5月病ってやつですね。笑
これは、単純にひとり腎臓内科をしているから話し相手や相談相手がほしい、という要素だけではありません。
病院の同僚はやさしいし、仕事内容が特段大変というわけでもないのに、理由がよくわからないのですが、とても憂鬱になっていたんです…
ある医局をやめた方で、医局をやめてストレスから解放されたはずなのに、なぜか胃潰瘍になったというエピソードを聞いたことがあります。この方は、「他の人が急性期病院で忙しく働いているのに、自分はホワイトな環境で働いていいのだろうか」という罪悪感でストレスを感じていたようでした。
自分もこれに近いように感じていて、X(旧ツイッター)などSNSで他の先生のキラキラとしたツイートを見ていて、「自分は最先端の医療から落ちこぼれてしまったかも・・・ 」と他人と比較して悲しくなってしまっている状況でもあったように思います。
つまり、人と比較していたことがストレスの原因だと考えています。
みなさんも経験あると思いますが、人と比べることは、向上心を生むことがある反面、落ち込みやすくなったり精神的に病みやすくなったりします。
職場がどうであれ、家族との時間や一人の時間さえ増やせば、幸福度が上がるはず!…と思っていましたが、意外とそんな単純ではないんですよね。
仕事を通じた人間関係は、自分の人生を彩ってくれる重要な要素なんだと再認識しました。
これまでの人間関係も、新しい人間関係も、大切にしたい!
ということで、これの対策としては以下のようなことを実践しています。
①スタッフ(医局のほかの先生、透析室スタッフ、病棟スタッフ)と主体的に関わりにいく
②他の病院の医師とのつながりを大切にする(後述)
③SNSを見すぎない(人と比べてしまうため)
②時間内は意外と忙しい
2つめのデメリットは、ホワイト病院とはいえ、意外と時間内は仕事が忙しいことです。
上述しましたが、当直やオンコールの免除をすることで、生活リズムがかなり整ったと感じています。
ただ、これまで雑務をおこなっていた残業や当直オンコールがなくなりました。
日常業務(外来の予習や書類作業など)をかたづけるバッファとしての役割があったのです。
腎臓内科の主戦場は、病棟だけでなく外来+透析室があり、予習は業務時間内にする必要が出てきます。
当直やオンコール、透析当番を含めて概ね週5-6勤務していた以前の勤務と比べて、週4で時間内の業務をしている現在、明らかに合計の労働時間は少なくなりましたが、それらの合間に予習や書類作業を終わらすことができなくなりました。
また、病棟で急変が起きようものなら、予習どころではないのでなかなかにハードな状態です。
・・・とはいえ、もともとの病院(大学など)と比べて仕事内容や患者の重症度は低めですし、同僚は優しく協力してくださるので、なんとかやっていけています。
忙しさへの対策としては、
①時間内はとにかく集中してやり切る
②仕事の中での無駄をなくす
ということを意識しています・・・(当たり前のことですが)
僕は個人的に、多少いそがしいほうが生き生きするので、暇すぎるより全然ハッピーなんですが、「医局やめてのんびり過ごしたい」みたいな人は職場さがしちょっと大変かもです…。
③自分から勉強する必要性を実感
3つめは、「自分から勉強をする必要性がある」という点です。
いや、別に医局にいても勉強はしないといけないんですけどね。
一人で診療科をやっていたり、他に同じ診療科の医師がいても高齢な先生が多いなどであったりする場合、自分の診療が一般的なものとずれてしまっていないかどうかのチェック機構がどうしても働かなくなるため、気付かないうちにレベルが落ちていかないかが心配です。
医局にいれば、カンファレンスも盛んだし自動的に新しい情報が入りやすいですが、医局の外だと情報がシャットダウンされてしまっていることが多いです。油断したら、ヤブ医者まっしぐらです。
これを避けるために生涯学習を続けていく必要性を感じています。
対策としては、
①アプリなど習慣化ツールを導入して論文や医学書を読む習慣をつける
②Xで知り合いになった他の病院の腎臓内科の医師と知識を共有
③もともとの医局の知り合いと情報共有をする場を設ける
④ブログやXなどで勉強内容を発信してアウトプット
などで予防したいと考えています。
もちろん、最先端でバリバリやるレベルを維持するのは難しいかもしれませんが、そこはもともと目標ではなく、あくまで標準的な専門医としての診療レベルを落とさないことが目標なので、そこに関しては努力を続けることで実現可能なのではないかと考えながら日々過ごしています。
今後も末永く僕のアウトプットに付き合っていただけたら嬉しいです…!
医局をやめるか悩んでいる人へ
どのタイミングで医局を辞めるかを考え始めた段階で、同時並行で情報収集を始めておくのがオススメです。
医局を辞めることを考えた場合に、どんな職場があるのか、どんな働き方がよいのかを一人で考える作業は大変です。
そんな場合は、転職サイトに登録するのが手っ取り早いです。
いわば医療転職のプロといえるエージェントを使って情報を絞ってもらう作業を任せるのは有効な手段です。
転職活動を早めに始めておき、情報を集めておくことで、「相場よりも良い条件の職場がある」「自分のやりたいことに近い職場がある」などの転職先をすぐに見つけられるようになるはずです。
「転職サイトこそ、たくさんあって選ぶのが大変だよ!」
という人に一つだけ絞ってオススメするなら「医師転職ドットコム
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【リクルートドクターズキャリア】 | 希望する働き方や目的をきちんとヒアリングし、求人の傾向や相場などを踏まえて転職先をオススメしてくれる。 |
まとめ
医局をやめて3ヶ月間ホワイト病院で働いた、正直な感想でした。
やはり医局をやめると、人間関係の再構築や、知識のアップデートが大きな課題となります。
…でも、これは10年目で医局をやめても、20年目で医局をやめても、30年目で医局をやめても、ついて回る問題だと思います。むしろ、早くこの課題と出会えているのはある意味ラッキーかもしれないとここ最近思い始めました(ポジティブすぎ?笑)
今後も、自分なりに工夫しつつ、他の人との人間関係を大切にしていきたいです。
そして、転職後の経験についてもっと記事を書いていきたいと思っています。
参考になれば嬉しいです♪
おすすめの本
・グッドライフ
最近でた幸福に関する85年間の縦断研究をもとにした本です。
人間関係は幸福度に関連しているという研究結果を中心に、幸福度について解説しています。
職場でもプライベートでも、人間関係はほうっておくといつの間にかなくなっていきます。特に男性は、他の人に頼ることをマイナスイメージに捉えることが多いため、気づけば連絡を取り合える知り合いがいなくなっていた…なんてことになる人も多いようです。
職場でのつながりの大切さ、そして人間関係を維持する力(「ソーシャルフィットネス」)が重要であること、その方法のアイディアなど、様々な論点について言及されていました。めっちゃおもしろいです。
医局をやめるか悩んでる人も、既にやめた人も、必読です👍
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