【TURNIP研究】レオカーナは血行再建術適応の乏しい慢性下肢虚血の60%に創傷治癒効果がある

目次

透析患者の下肢壊疽にレオカーナ(LDLアフェレシス)を使われることがあるが…

■透析患者の包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)に対して、ときどきレオカーナを使用される方がいます。

★CLTIの定義:虚血性足潰瘍・壊疽でABI<0.9、SPP<40mmHgの場合
 または他のモダリティにより重症虚血が指摘された場合

■透析医としては、自分から「レオカーナやるぞ!」というよりは、循環器の先生から指示されたから、とりあえずしておくか…みたいな感じになりやすいです。疾患頻度の割に、きちんと勉強する機会は意外に少ない印象です。

■今回の記事では、どのような病状の患者に適応となるのか?実際の治療効果はどうなのか?について、効果を示した論文を取り上げました。

Efficacy of Rheocarna®, a Novel Apheresis Device, in Patients With No- or Poor-Option Chronic Limb-Threatening Ischemia

結論

【TURNIP研究】血行再建術の適応のない/治療反応性の乏しい包括的慢性下肢虚血(CLTI)患者において、1年間の創傷治癒率は60.7%であった。

背景

■包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)に対する第一選択治療は血行再建術であるが、血行再建術が選択できない(あるいは選択できない)患者に対する確立された治療法はない。

■本研究では,血行再建術が選択できないCLTI,あるいは血行再建術の効果が不十分なCLTIに対するレオカーナ®の有効性を検証した。

方法

■多施設レトロスペクティブ観察研究では、2021年3月から2022年3月の間にレオカーナによるアフェレーシスを受けた無手術CLTIまたは反応不良CLTI患者(221肢)(平均[±SD]年齢71±10歳、男性70.1%、糖尿病76.5%、透析87.8%、ラザフォードカテゴリー6、26.4%)を分析した。

■主要評価項目は1年間の創傷治癒率であった。

結果

■1年後の創傷治癒率は60.7%で、四肢救済率、再介入が不要となった率、全生存率、無切断生存率はそれぞれ83.4%、69.2%、70.2%、61.3%であった。ベースライン時、歩行不能、駆出率の低下、血中アルブミン濃度の低下は、創傷治癒率の低下と独立して関連していた。

■レオカーナによるアフェレーシス後、C反応性蛋白、フィブリノゲン、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値は有意に低下し、足関節上腕血圧比(ABI)と皮膚灌流圧(SPP)は有意に上昇した(すべてP<0.05)。

■抗凝固薬:ヘパリンが86.4%、ナファモスタットが17.2%(どちらも使っている症例もあるため合計すると100%超えます)

CRPの推移:レオカーナ前は3.65±4.33、レオカーナ後は1.80±2.75

■血管造影での血流評価:36人のうち、88%が改善、13.9%が変化なし。

Limitation

■後ろ向き観察研究→selectionバイアスがあるかもしれない(治癒が無理そうな人は選んでいないかもしれない)

■治療ストラテジー(どのadjuvant therapyを行うかやレオカーナ導入のタイミング)は施設ごと、医師ごとに違う。

結論

■CLTI患者に対して、レオカーナは創傷治癒率を高めるかもしれない。

おちば的補足と感想

■レオカーナの日本人に対する研究であり、患者背景、設定条件、有害事象など読むだけで勉強になりました。

■Table1にありますが、下肢虚血に対する重症度の分類としてRutherford分類、WIFI分類、GLASS分類など様々です。丸暗記は不要かと思いますが、それぞれどんな項目を評価しているか、ざっくりでも覚えておきたいですね。別記事でまとめたいです。

■カネカのMRさんから「炎症が高いとレオカーナできない」と言われたことがあります。感染を全身に広げてしまうから…とのことでしたが、具体的にどのくらいの炎症ならダメなんや?と疑問でした。この論文の患者背景をみるとCRP3-4前後なら施行されているので、そのくらいの患者さんでなら適応となりうることがわかって少し安心(?)しました。

■抗凝固薬は、ヘパリンでもナファモスタットでも良さそうですね。

■治療開始後の血圧低下(15-30分)には注意が必要です。ACE阻害薬は併用禁忌なので、心カテ後の患者さんなどでは注意しましょう。

■前もって使用の基本を知りたい場合は、日本フットケア足病医学会の適正使用指針2021に目を通しておくのがよいです。

■LDLアフェレシスとは言っても、ネフローゼ症候群に対するリポソーバーとは別物なので、初学者は注意です。

■ちなみにですが、TURNIPとは、英語で(植物の)カブという意味らしいです。なんでそんな名前にしたんやろ🤔

おちば

今後もCKDや電解質、透析、生活習慣病についての論文を読んでいきますので、お付き合いいただけたら幸いです!

最後まで読んでいただきありがとうございました!(^^)

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

アラサーの男性医師。内科専門医/透析専門医/腎臓専門医。
腎臓内科医として市中病院で勤務しつつ、フルタイム妻と一緒に実家遠方子育て中。(育児休業後)
忙し過ぎる若手医師向けに、医師のキャリア・専門医試験/レポート対策・仕事のコツ・医学の勉強などお役立ち情報を発信しています。
医師として頑張りたい、けれど家庭やプライベートも同じくらい大切にしたい!
そんな人の力になれたら嬉しいです。
趣味は音楽、読書、公園巡り。

コメント

コメントする

目次