俺は内科になりたい!進む診療科も決めた!けれど、残った研修医2年目のローテーション、自分の進む診療科以外も回っておくべきだろうか
J-OSLERが始まって、専攻医でも他の内科をローテしてもいいよって言われてるけど、症例集め以外にローテするのって意味あるのかな…
こんな人のための記事です。
研修医の皆さんは、自分で診療科を選べる時期が一定期間あるかと思います。
最近はJ-OSLERの導入によって、専攻医になっても色んな診療科をローテすることもできるようになりました。
とはいえ、自分の進む予定の診療科の勉強をするだけでも大変なのに、あえて他の診療科を勉強する意味って実際あるんでしょうか?
むしろ、自分の進む診療科だけ選んで勉強して、早く一人前になったほうがいいのでしょうか?
今回は、医師8年目という立場から思う、ローテーションや他科の勉強について個人的な意見をまとめてみたいと思います。
結論:できるだけ自分の診療科「以外」を回るのがおすすめ!
まずは、結論から!
僕は、自分のの診療科をローテーションするのをおすすめします👌
理由は3つ!
①他科へのコンサルトがうまくなる
②薬の整理がうまくなる
③外来の時間が短縮できる
1つずつ解説していきますね。
理由①他科へのコンサルトがうまくなる
1つめの理由は、「他科へのコンサルトがうまくなる」という点です。
他科の知識がいちばん役に立つのはコンサルトのときです。
なぜなら、正確なコンサルトをすることで、必要としている対応・答えを得られるからです。
例をあげてみます。
僕は腎臓内科の専門外来をしています。腎機能低下はどの科の先生もよく直面することなので、コンサルトをいただくことが多いです。
そのときに、
腎機能悪化してます、オナシャス
と言われた場合と、
タンパク尿と血尿を背景に急激に悪化する腎障害です。長年の糖尿病歴がありますが、血尿を伴っていることもあり、糖尿病性腎症を背景に何らかの腎炎が発症しているのではないかと考えております、オナシャス
と言われた場合では、どちらがやる気が出るでしょうか?
当たり前ですが、圧倒的に後者ですよね。
正確な情報を得ることで次にどんな動きを取ろうかイメージしやすくなり、コンサルトされた側の負担がかなり減ります。
また、コンサルトの返事も丁寧に書いてくださることが多いので勉強にもなり、次のコンサルトがさらにうまくなる、といういい感じのフィードバックになり一石二鳥です。
理由②薬の整理がうまくなる
2つめの理由は、「薬の整理が上手になるから」です。
他の診療科をローテーションして知識を得ると、ある程度その診療科で当たり前なことを学ぶことができます。
他科の常識を知ることで、ひとりで主治医として診療するようになってからも、お薬が必要かどうかの判断ができるようになります。
「ポリファーマシー」ってやつですね。いらない薬があれば切るのは当然ですよね。
急性期病院で調整/処方された薬は、他の病院に移ってからも漫然と続けられることは多いです。これは、担当した先生がやる気がないからではなく、「急性期病院の医師が出したから大丈夫だろう」という安心感と、「下手に薬を変えて悪くなったときに責任が取れない」という心理があるようでした。
高齢の患者さんは既往が多く、たくさんの診療科にかかる分、いろんな薬が漫然と投与されていることがあります。
油断するとあっという間に薬は増えていくから、常にこの薬は本当にいるか?を考える必要があると実感があります。
そんなときに役立つのが、他科の知識です。
「前立腺肥大症のopeをして随分経っているが、ずっとこのタムスロシンは必要なのか?」
とか
「心筋梗塞でPCIしてからもう2年くらい経っているのに、バイアスピリンとエフィエントが続いてるのって一般的ではないよね…」
とか。
こういった疑問は、少しでも他の診療科を勉強したりローテしていたら浮かんでくるはず。
(逆に、勉強がわりとおろそかな先生ほど、自分が正しい!という気持ちが強くひとりで突っ走りがちだったりすることも…)
もちろん、ひとりであれこれ決めるのが難しければ、他の科の先生に相談すればよいだけです。
知識がある→疑問が湧いてくる→他科の先生に相談するきっかけになるんです。
薬を減らしたり整理することは、患者さんの満足度が上がったりアドヒアランスに繋がります。
ついでにいうと、入院患者では6種類以上内服している方が2種類以上おくすりを減量することができた場合は「薬剤総合評価調整加算」っていう加算も取れる事が多いので病院の経営にも良いですよ!
理由③外来が速くなる
3つめは、「外来が速くなる」です。
救急外来は、内科医にとっては自分の守備範囲でない疾患もいっぱいみないといけない場なので大変です…
そんな中で他科の知識や経験は、意思決定を速くするのに役立つのはいうまでもありません。
また、一般内科外来や専門外来をしていても、「最近夜間の頻尿で困ってて…」「最近皮膚が荒れてて…」など、自分の診療科のこと以外のちょっとした相談をされることがあります。
そういう軽症に対してぱっと対応できる引き出しがあると、シンプルに便利ですよね。
「これは絶対専門の先生に振らねば!」というラインがわかっていれば、すぐに他科につなぐ意思決定ができます。
忙しい中であれば他科に振ってしまうこともありますが、すぐになんでも「専門の先生のところへいけ」というのは自分のスキル向上につながりませんし、患者さんの受診診療科が増えて負担になることがあります。
外来は年次を重ねるにつれてスピードが大事になってきますし、一般内科寄りの外来をする病院で働く機会も増えてくる人もいます。
そんなときに、研修医のときにローテしたときに聞いた、指導医の何気ない一言が自分を救ってくれることがありますよ!
注意点:すべてを抱え込まない
ここまで読んでいただいたうえで注意点があります。
それは、「すべてを抱え込まない」ことです。
他の診療科の勉強をしたからといって、自分で全てを判断したり、症例を紹介せずに抱え込みすぎると、患者さんは困るし、他科へのコンサルトが遅くなってしまうしで、誰の得にもなりません。
抱え込みすぎるのはナンセンス。
他科ローテの知識は、あくまで自分の守備範囲を把握するためのツールとして割り切って勉強しましょうね✊️
まとめ:他科のローテは役に立つ
自分の進路以外の診療科のローテーションをしたり、他科の勉強することは次のようなメリットがありオススメです。
①コンサルトがうまくなる
②薬剤の整理がうまくなる
③外来が速くなる
ただし、「すべてをかかえこみすぎない」という点にだけ注意しておきましょう。
ちなみに、最近ぼくは泌尿器科の本を読んで、前立腺肥大症の薬のつかいかたを勉強しましたが、非常に役立っています。(もっと早く知っておきたかった…!)
みなさんがもし参考になった本があったり、ローテーションしてよかった!という診療科があればコメント欄で教えてください♪
■おすすめの本
・RANGE(レンジ)知識の「幅」が最強の武器になる
いろいろな分野の知識の組み合わせの強みや、専門特化をあえてしないことによる強みを様々な例を取り上げながら説明しています。
専門特化しすぎた知識は、意外にも「自分は正しい」という考えにつながり、盲点となってしまうリスクがあるみたいです。
「万年研修医」ということばもありますが、常に新しい知識や考え方を吸収していく姿勢でありたいですね。(医学以外のことについてもアンテナを張り続けたいと最近はよく思っています。)
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