2024年に成人肺炎診療ガイドラインが出たらしいけど、呼吸器内科じゃないから読むか悩むなあ…
誤嚥性肺炎含め、内科医なら肺炎をよく診療するけど、最新のガイドラインにはどんなことが書いてあるか、まとめてほしいな。
こんな人のための記事です。
2024年に呼吸器学会から、成人肺炎診療ガイドラインが発表されました。
2017年以降、7年ぶりの改訂らしいです。
今日は、このガイドラインについて、他科(腎臓内科医)の目線からみて大事そうと感じた点をまとめ、実際の肺炎、特に誤嚥性肺炎治療のときに考えるべきことをまとめて解説していきます!
それでは早速やっていきましょう〜!
治療についてのポイント3つ
CQ3 市中肺炎において初期治療が有効なら1週間以内の短期抗菌薬治療を弱く推奨
市中肺炎の治療期間は、初期治療が有効なら1週間以内で終了すべき、とのことです。
だらだら2週間くらい投与する必要はないとのことで、必要以上に投与し続けないよう注意したいですね。
ちなみに、他の肺炎については
●CQ7 NHCAPでは「1週間以内の短期抗菌薬治療を行うかは推奨度決定不能」
●CQ12 HAP(院内肺炎)では「1週間以内の比較的短期間の治療期間を弱く推奨」
とのことでした。
いずれにせよ、短期間での治療が主流であるみたいですね。
CQ4 市中肺炎治療において、βラクタムにマクロライド併用は、重症肺炎なら弱く推奨
市中肺炎の治療で、マクロライド(ジスロマック®)を併用するかどうかについてです。
●重症の市中肺炎→マクロライド併用を弱く推奨
●非重症の市中肺炎→マクロライドを併用しないことを弱く推奨
となっていました。
肺の陰影をみて、非定型肺炎が疑わしいときにカバーしているイメージですが、重症なときは念の為併用しておくという考え方もありなのかもしれませんね。(耐性のリスクもあるので乱用は避けたいですが…)
CQ18 誤嚥性肺炎の治療で嫌気性菌をカバーする抗菌薬の推奨度は決定不能
誤嚥性肺炎で嫌気性菌カバーはルーチンで必要っていう感じではなさそうです。
口腔内常在菌の嫌気性菌くらいならCTRXでもカバーできているといわれていますし、肌感覚でもそう感じるます。
誤嚥性肺炎と一言でいっても色々あるので、エビデンスで言うなら一概に「嫌気性菌カバーは不要!」とは言い切れないのかもしれません。(たとえば、イレウス後の誤嚥性肺炎だったら腸内の嫌気性菌をきちんとカバーしておいたほうがよさそうな気がします)
腎臓内科としては、ABPC/SBTは透析患者の投与の仕方が本によって諸説あり、「透析日は透析後」というコメントを入れる手間もあるので、肝代謝で1日1回のCTRXを選択しがちかも🤔
■ちなみに:誤嚥性肺炎の予後は悪い
今回のガイドラインの「誤嚥性肺炎」の章によると
誤嚥のリスクを有するものは肺炎の再発のみならず,短期間(1年以内)のうちに原因を問わず死亡しやすいことが示されている
らしいです。確かにそんな肌感覚はありますが、患者さんへの病状説明のときに情報提供しておいてもよいかもしれませんね。
検査のポイント1つ
CQ19 肺炎診療において多項目遺伝子検査を弱く推奨
今回のガイドラインでの変更点のひとつで、新たに追加されたCQです。
多項目遺伝子検査とは、1回の検査で一気に複数種類のウイルスを検出できる検査です。
同時に検出を行える微生物:インフルエンザウイルス、コロナウイルス、パラインフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、ヒトライノウイルス/エンテロウイルス、マイコプラズマ・ニューモニエ、クラミジア・ニューモニエ、百日咳菌、パラ百日咳菌及びSARS-CoV-2
めっちゃ便利やな〜
自己負担は3割負担で約5000円くらい(1350点=10割負担で13500円)とのことで、安くはない検査です。(令和6年時点)
ただ、ガイドラインでは、原因微生物の同定により抗菌薬適正使用率を改善させる可能性があるとして、「弱く推奨」となっております。
都道府県によっては入院症例でないと保険適応切られるという話もありますが、僕の働いている病院では結構よく使われています。
肺炎予防のポイント2つ
CQ20 肺炎の予防に口腔ケアを弱く推奨
肺炎の予防には、口腔ケアは重要です。(当たり前かもですが)
誤嚥性肺炎の患者さんが入院したら嚥下リハビリや口腔ケアはルーチンで依頼を出しておきたいですね。
※ちなみに、口腔ケアは1日の中でも「夜」が大事みたいです。
口腔内細菌数は日内変動があり、夜間〜朝にかけて一番多いのと、誤嚥自体が夜間に起きることが多いと言われているからです。
※また、口を乾燥させないことを意識するのも大切みたいですね。(高齢者は唾液が少なくなっていることが多いため)
3種類のワクチンについて
肺炎の予防として、口腔ケア以外にもワクチンも推奨されていました。
●肺炎球菌ワクチン
●インフルエンザワクチン
●RSウイルスワクチン
の3種類が記載されていました。
肺炎球菌ワクチンは65歳以上(CKDなど基礎疾患あれば60歳以上)で接種できるので、患者さんに医師から推奨しておくことが重要です。
肺炎球菌ワクチンといえば、「ニューモバックスかプレベナーか?」で悩むことが多いと思います。
2024年9月版の65歳以上の肺炎球菌ワクチン接種の考え方 のページがわかりやすいので、フローチャートに応じて判断でよいかと思います!
また、RSウイルスワクチン(アレックスビー®、アブリスボ®)は2024年に高齢者(60歳以上)へ適応が追加されたとのことで、これも結構ホットな話題ですね。
腎臓内科的にも、CKDガイドライン2023にも、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチン、B肝ワクチンの接種が重要であると言及されていました!ワクチンは医師がすすめないと なかなか打ってくれないことも多いので、ぜひ外来で推奨していきたいですね。
ちなみに:「抗コリン薬リスクスケール」は薬の変更の判断材料になるかも
ガイドラインには載っていませんでしたが、2024年に日本老年医学会が「抗コリン薬リスクスケール第2版」というものが できています。
高齢者に頻用される抗コリン作用のある薬剤のリスクを正確に評価し、抗コリン薬による有害事象を減らすのが目的だそうです。
高齢者は薬がたくさん入っていることが多いので、抗コリン作用の強い薬が多い場合は、整理していきたいですね。
ガイドラインをふまえた誤嚥性肺炎の診療ポイント
ガイドラインをふまえて、肺炎、とくに多くの人が担当する誤嚥性肺炎をみたときのポイントをまとめてみました。
誤嚥性肺炎の患者が入院したらやるべきこと
●嫌気性菌のカバーは必須ではない。患者に応じて判断。
●治療期間は、HAPなら1週間以内。NHCAPは推奨期間なし。
●抗コリン薬リスクスケールなどを参考に、薬の整理を。
●口腔ケア/嚥下リハビリはルーチンで依頼
誤嚥性肺炎の患者の家族・介護者に説明すべきこと
●口腔ケア(特に夜が重要、乾燥させない)の推奨
●再発のリスクが高いことを説明
●予後が悪いことを説明(原因を問わず1年以内に死亡しやすい)
●打っていなければワクチンを推奨する(肺炎球菌、インフルエンザ、RS)
おちば的感想とまとめ:成人肺炎診療ガイドライン読んでみた
おちば的には、「新しい知らないことがたくさん書いてある」というよりは「肌感覚で言われていることの再確認」という感じでした。
ただ、こういう文献がまとまっているものを読むことで、診療の正確性の再確認ができるのに加え、検査や予後について詳しくなれるので、患者さんへの病状説明がより具体的になるように思いました。
肺炎(特に誤嚥性肺炎)はどの診療科にいても必ず経験する疾患といっても過言ではありませんよね。
ぜひ一読しておくことがオススメです〜!
■関連記事
コメント