来月は腎臓内科のローテか。なにか予習するために本でも買っておこうかな。
腎臓内科あんまり興味ないけど、無難にローテを乗り越えられる良い本はないかな。
こんな人のための記事です。
研修医なら、いろいろとローテーションするときはそれぞれの診療科の医学書や参考書を読んで事前に予習しておきたい方は多いです。
腎臓内科もそのうちの一つ。
しかし、腎臓内科の医師は少ないうえ、医学書についての情報は多くありません。せいぜいAmazonのレビューくらいでしょうか。
今回の記事では、現役の腎臓内科専攻医である僕が、20冊以上腎臓関連の書籍を読み漁った経験をふまえて
- 興味のある度に応じて
- 時間的・金銭的にコスパの良い
- 必要性の高い知識をカバーしている良書
を紹介していきます。
わかりやすく面白い入門書から、ディープな内容まで学べるシブめの本までご紹介します。
前回は、無難にローテを乗り切りたい人向けでした。
今回は後編「腎臓内科に興味がある人向け」です!
前回よりもさらに腎臓に興味がある人に向け、厳選して紹介していきますね。
腎臓内科をローテで持っておきたい本 後編
興味ある度★★★☆(腎臓内科と他の科で進路を悩んでる)
①考える腎臓病学
・腎臓内科の「病態を考える」という過程に興味がある
・腎臓の知識の全体像をさっくり読める本がほしい
・問題・症例べースで勉強したい
1冊目は、「考える腎臓病学」。
この本の特徴は、とにかく病態を考える力をつけることができること。
マニュアル本とは一線を画しており、腎病態について考えることを目的とした本です。
実用的でない腎生理の知識ばかりなら、意味が無いのでは・・・?と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
「知識そのものよりも考え方を学んでほしい」と筆者の序文にあるように、いっぱい考えさせられますが、この本を読めば病態生理がいかに臨床に結びついているかを知ることができます。
- 多尿の初期症状が夜間尿なのは、なぜなのか?
- 糖尿病性腎症はなぜ早期から高カリウム血症になりやすいか?
- 腎不全でみられる出血傾向は、どのような原因によるものか?
など、素朴な疑問に病態生理を使ってロジカルに解説しています。
知的好奇心がくすぐられるというか、読んでいくうちに目からウロコがボロボロと落ちていきます。
専攻医1年目のときに本屋で何気なく立ち読みし、あまりにも鮮やかな解説にとんでもなく衝撃を受け、レジにダッシュしたことを今でも覚えています・・・。笑
もう一点、この本の魅力は、問題と解説ベースであること。
本の大半が問題と解説、ときどき本文が入るという形で、読者を考えさせやすいつくりとなっています。
わかりやすい症例や素朴な疑問が大半なので難しすぎず、読み進めやすいです。
考える腎臓病学=「腎臓を考えることが楽しくなる1冊」
②シチュエーションで学ぶ 輸液レッスン
・輸液・電解質異常のキホンを学べる1冊が欲しい
・専攻医まで使える内容の輸液の本が欲しい
2冊目は、シチュエーションで学ぶ輸液レッスン。
「輸液レッスン」とありますが、電解質異常の考え方についてもしっかりと記載があるので使い勝手が良いです。
また、会話形式で進んでいくのでテンポが良く読みやすい。
「入門書」とはいえ、シチュエーション・ケースごとにどうするか考えさせる構成になっているので、実用性が高いといえるでしょう。
輸液についてこの本を繰り返し読めばかなり自信がつくはずです。
※第3版が2021年に出てさらにパワーアップしています。専門医試験にも対応した深いレベルの内容まで知ることができるので、長く使える一冊です。
シチュエーションで学ぶ輸液レッスン=「輸液電解質を学ぶ上で必携の書
③レジデントのための血液透析患者のマネジメント
・血液透析のキホンが知りたい
・透析についての本を1冊持っておきたい
3冊目は、「血液透析患者のマネジメント」です。
題名通り、血液透析の基本的なマネジメントについて知ることができます。
どうしてもローテーションの数ヶ月で透析の深いことについて学ぶのは難しいかもしれませんが、かといって何も勉強しないのは不安・・・という方にピッタリです。
カンファレンスや透析処方などで役に立つことはもちろん、将来的に透析バイトなどをすることになっても使えるはず。
さらにこの本は、3000円弱と医学書にしては比較的良心的な価格ですし、薄めなので読み切るのも容易です。
内容も無駄が少なく、最低限に必要な知識に絞られています。
透析に携わるなら、マストな1冊だと思います。
レジデントのための血液透析患者マネジメント=「透析を診る不安を一読で解消する最強の入門書
興味ある度★★★★(腎臓内科に行くつもりの人向け!)
④保存期腎不全の診かた
・腎臓内科に進むことを考えている
・CKD患者のマネジメントについて興味がある
4冊目は、保存期腎不全の診かた。
CKD患者さんのマネジメントは、貧血、体液調整、電解質、酸塩基平衡など、一般的な患者さんとは異なる点が多いです。
現在は高齢化が進んでおり、どの内科でもCKDの知識が必要となってくるはず。
この本では、
- CKDの患者さんの身体診察
- 検査結果の解釈
- 糖尿病性腎症や高血圧性腎硬化症など疾患ごとの臨床的な特徴
- AKIの対応やネフローゼの鑑別診断
など、基本的なことから応用的な知識まで渡ってわかりやすく記載されています。
この本を書いたのは、電解質の本として有名な「体液電解質異常と輸液」の作者の一人である柴垣先生。こちらも超ロングセラーとしていまだに人気の一冊です。
「保存期腎不全の診かた」も2006年に発行された少し古い本ですが、いつ読んでも色褪せない腎疾患診療のコツがぎっしり詰まっていますよ!
保存期腎不全の診かた=「CKD診療でいつでも役に立つ、色褪せない1冊」
⑤レジデントのための腎臓病診療マニュアル
・腎臓内科のわかりやすいマニュアル本が欲しい
・それぞれの疾患や病態の詳しめな解説が欲しい
・腎臓内科専門医試験の対策になる本を持っておきたい
5冊目は、レジデントのための腎臓病診療マニュアル。
マニュアル本は中身が薄いものや、逆に詳しすぎて使いにくいものが多いですが、僕はコレが一番わかりやすく、しっくりきてます。
作りはいたってシンプルで、それぞれの病態に対するアプローチを専門の先生が書いているのですが、その執筆陣がとにかく豪華。
「シチュエーションで学ぶ輸液レッスン」の作者である小松先生、「保存期腎不全の診かた」の柴垣先生、「体液電解質異常と輸液」の深川先生など)が錚々たるメンバーが名を連ねています。
けっこう分厚いので、通読するというよりは調べ物として使う感じです。
また、研修医の先生にとっては、かなり先の話になるかもしれませんが、腎臓内科専門医試験の対策としても使っている先生は多いです。
#腎臓専門医試験対策
— TT(腎臓内科医) (@TT58852391) November 18, 2022
“レジデントのための腎臓病診療マニュアル”という本が、自分的には“青チャート”的な位置付けなんですが、学会誌セルトレがそれを遥かに凌駕してくる。。。
これは“赤チャート”にも手を出す必要があるかも知れん(南学先生 プロフェッショナル腎臓病学⬇️) pic.twitter.com/5fWlhmYjNh
レジデントのための腎臓病診療マニュアル=「わかりやすさと豪華さNo.1のマニュアル本」
⑥腎臓内科外来実況中継
・腎臓内科の外来でどんなことをしているのかが知りたい
・腎臓内科の外来を任される予定である
最後は、腎臓内科外来実況中継です。
この本を作っている長澤将先生は、他にも「カニでもわかる腎生理」「誰も教えてくれなかった血液透析」などさまざまな著書を作っています。(どれも読みやすい良書です)
本書は、腎臓内科の外来という視点にフォーカスを当てた新しい本です。
腎臓内科の診療は急性期病院にいると集中治療や透析管理ばかりのイメージかも知れませんが、実際には外来でのマネジメントがかなり重要となります。
- GFR低下で紹介された患者をどう対応するか?
- 栄養指導はどうするか?
- 透析について説明するのはいつが良いのか?
などなど、外来医師なら一度は悩む内容について、エビデンスやガイドラインを引用しつつまとめてます。
腎臓内科はもちろん、研修医や他の科の先生でもわかるくらいシンプルにまとまっていて、非常にコスパの良い本です!外来見学も楽しくなりそう。
腎臓内科外来実況中継=「腎臓内科外来のモチベーションをアップさせる最高の武器」
まとめ:やっぱり腎臓内科は面白い!
①考える腎臓病学
②シチュエーションで学ぶ 輸液レッスン
③レジデントのための血液透析患者マネジメント
④保存期腎不全の診かた
⑤レジデントのための腎臓病診療マニュアル
⑥腎臓内科外来実況中継
初期研修のローテで回るのは長くて2-3ヶ月、下手すると1ヶ月でローテが終わってしまいます。
その期間に腎臓の全てを学ぶのは難しいでしょう。
それでも、コスパのよい良書を読んでおくと後々にきっと役立つはずです。
ぜひ、自分に合う1冊を見つけてみてください!
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