一緒に働いている指導医、厳しくてしんどいなあ。
指導医と合わない・・・めっちゃ怒られる
突然ですが、みなさんは指導医とうまく接することができているでしょうか?
指導医との関係は研修生活、専攻医生活を左右する非常に大きいファクターです。
若手医師(特に研修医)の間は、指導医の言うことは絶対です。指導医の許可がなければ診療方針を勝手に決めることはできません。
指導医とうまくやっていれば充実した学びの多い研修ができる反面、性格の合わない指導医に当たった場合は精神的に病んでしまったり、日々ストレスに苛まれることになります。
つまり、
若手医師の職場のQOLを左右する重要な因子=「指導医との関係」
といっても過言ではありません。
「指導医ガチャ」という言葉もあるくらいだよね
研修医のうつ病の有病率は28.8%(JAMA. 2015;314(22):2373-2383)と非常に多いと言われていますが、指導医と接するのが苦痛であれば、仕事をする上で常にストレスにさらされ、うつ病になるリスクになると考えられます。
今回の記事では医師として6年間、様々な指導医の下で働き、かつ研修医の指導もしている経験から、指導医との接し方と対策について考察していきます。
★指導医と働くのがしんどい3つの原因
★ニガテな指導医と共に働くことになった時にできる4つの対策
指導医と関わるのがしんどい理由3つ
若手医師のあいだ、指導医と接することでストレスを感じる場面は少なくありません。
その理由について考えてみます。
①指導医によって診療方針が違うから
指導医によって、言ってることが違う時って一番ツラいよな・・・
一般的に、医師の仕事は
- ガイドライン
- エビデンス
など画一化されたものを行っていくようなイメージがあります。
しかし、実際に決まっているのはあくまで大枠のみ。
- いつ何の検査をするか
- 治療薬をどのようなスケジュールで投与していくか
- マイナートラブルに対してどう対処するか
などはそれぞれの医師に委ねられています。
真実(診療方針)は、いつもひとつ!
・・・って言い切れないのが難しいところです。
診療方針を決める指導医は、自身がそれまで経験したことを踏まえて検査や治療の方針を決めていくので、人によって重視するポイントや細かさが異なっています。
このへんは、臨床ならではの面白さとも言える一方で、臨床経験のない若手医師からすると困ることが多いポイントです。
②指導医によって、求める研修医/専攻医像が異なるから
指導医によって、診療内容だけでなく、研修医や専攻医の仕事のしかたについてのスタンスも異なります。
なにかあったら相談してね。基本は自由にしてもらっていいよ。
という自由を重んじるタイプの先生もいれば、
回診した内容や治療方針を毎日かかさず報告してね!
というキッチリと管理する派の先生もいます。
どちらのスタンスの先生もメリット・デメリットがありますが、
研修医や専攻医は上級医に合わせて仕事のしかたを変える必要があるので大変です。
特に、指導医がゆるゆる派→キッチリ派に変わったときにストレスはハンパない
また、指導医に対して、わからないことを質問するときにも困ります。
特に、厳しい指導医は
- 調べる量が不足している状態で質問→「勉強不足」と怒られる
- 調べるのに時間がかかってから質問→「仕事が遅い」と怒られる
というジレンマに若手医師が陥ることが多いです。
「どのへんまで調べてから質問するのが正解なのか」が指導医によって違うからしんどいんだよな
③指導医のクセが強いから
指導医も人間です。
全ての先生が仏のような優しさと賢さを兼ね備えていればいいのですが、あいにくそんなことはありません。
- 雑用をすぐに押し付けてくる指導医
- 優秀すぎる反面、すぐにバカにしてくる指導医
- 全て自分の思い通りにしないと怒る指導医
- 好き嫌いの激しい指導医
など、いろいろな人がいますよね。
医局やハイパー病院の上層部の指導医たちは、優秀な一方でクセの強い先生は多い印象です。
(もちろん、中には仏みたいな先生もいますが、一握り。)
苦手な指導医とうまく働くための対策4選
様々なストレスを感じる中で、苦手な指導医とうまく関係を築きながら仕事をしていくには、どうすればよいのでしょうか?
自分の経験を踏まえて効果のあったものをお伝えします。
①指導医を観察し、分析する
なんで指導医とうまく話せなかったりイラつかせてしまったりするんだろう?
怒られたり、叱られたり、うまく接することが出来ていないときは「なぜダメなんだろう…」と自分のことに注意がいきがちです。
しかし、そんなときはあえて、自分ではなく指導医を意識して観察してみましょう。
- 何に対して怒られているのか
- どんな人が上手にコミュニケーションを取っているのか
- 何をしたら上司が喜ぶのか
など、「傾向と対策」を分析してみるとよいです。
たとえば、上司を2タイプに分類する方法があります。
【エモーショナル・タイプ】直情的、感情を豊かに表現する、勢い任せ、体育会系、共感・共有を大切にする、感動屋、結果だけでなく経緯も評価、自らの体験やノウハウを自分の感性で語る。
【ロジカル・タイプ】抑制的、理論を重視する、用意周到、沈着冷静、ムダや言い訳を嫌う、ロジカルな議論には反応してくれる。
(「上司のタイプ別接し方」をマスターすれば仕事は劇的にうまくいく より引用)
上司がどのようなタイプか分類すると、どのようなコミュニケーションを取れば良いのか考えるのに役立ちます。
ぼくは過去に、ロジカルタイプの指導医に対して、エモーショナルタイプ向けな接し方をした結果、めちゃくちゃコミュニケーションに難渋した経験があります💦
タイプ分類することを知っていれば、もっとスムーズに話ができたように思います…
対策①
◉指導医をしっかり観察し、傾向と対策を練る
◉どんなタイプの性格か、分類してみる
②同僚たちと相談する
指導医を観察することは重要ですが、自分の考えだけではなかなかうまく行かないことも多いです。
そんなときは、学年の近い先輩後輩や同僚と相談してみましょう。
あーー、俺もそのミスやらかしたことあるわ〜。
あの先生、輸液については厳しいもんな!
あの先生は、自分なりのアセスメントを話すことを重視するから、ただ「教えてください」というより、間違ってもいいから自分なりの考えをきっちり話したほうがいいよ。
などなど、同じ経験をしているメンバーから客観的な意見をもらえるので参考になるはずです。
※ここで注意したいのは、決して他人と比較するべきではないということです。
あいつは上級医と仲良くやってるのに、俺なんか・・・(T_T)
というマイナス思考になると、ますますドツボにハマってしまいますので注意してみてください。(経験談)
対策②
◉同僚(近い学年の先輩後輩、同期)と相談して意見をもらう
③指導医との接し方を工夫する
実際にいろいろな情報をあつめたら、コミュニケーションのとり方も工夫してみましょう。
ここでは、
- 話しかけるタイミング
- 話し方
- 話す内容
に分けて説明しますね。
話しかけるタイミング
指導医と「いつ、どのように話しかけるか」は意外と難しいです。
特にハイパーめな病院では、
- 指導医は基本的に忙しい
- →気軽に話しかけるのは気が引ける
- →かといって、勝手に診療をすすめることもできない
というジレンマに陥ることも多いです。
悩んだあげく指導医に電話したら、外来中でめちゃくちゃ怒られた
というエピソードは、研修医”あるある”ではないでしょうか。
かといって、指導医に気を使うあまり指導医へ主体的に話しかけに行かなければ
- 何も教えてもらえない
- やる気がないと思われる
など、良いことは一つもありません…
では、積極的に指導医から話を引き出すにはどうすればいいのでしょうか?
ここで生きてくるのが、先程までの観察、そして同僚との相談で得た「傾向と対策」です。
- 指導医が外来や処置でいつ忙しいか
- どの病棟にいつ現れ、どのくらい滞在しているのか
など基本情報を揃えることが重要です。
また、話しかけ方にも注意しましょう。
余談ですが、相談するのは病棟でカルテを打っているときがおすすめです。具体的な話し方を説明しますね。
具体的な話しかけ方
具体的な話しかけ方としては、
- 指導医のいる病棟に行く(あるいはスタンバイしておく)
- 指導医のカルテの隣の席に座り、カルテを打つ(隣が空いていなければ近くで。)
- 様子を伺いながら「先生、〇〇さんについてなのですが・・・」と話しかける
がおすすめ。
この方法のメリットとしては、
- 横から指導医の様子を観察できる=話しかけるタイミングを読みやすい
- 座って話すので、じっくりと話せる=得られる情報が多い
- 心理学的にも横に並んで話すことで、親密な関係を構築しやすい(←「スティンザー効果」)
があります。
・・・たかが指導医との話し方なのに、そこまで考えなくてもよくない?と思う方もいるかもですね。
しかし、上記のことを頭に入れた上で実際に指導医と接してみると、実感として話しやすさが変わってきます。
自然にできている人もいますが、もしも意識したことがない人は、ぜひ試してみてください。
話す内容
うまく話しかけられたとしても、話す内容が不適切な場合は、良好な関係を築くのは難しいです。
典型的な指導医からの怒られポイントは、
- 自分なりのアセスメントがない
が多いです。
はじめはとりあえず話せることができれば合格です。
話しかけられるようになったら
- たとえ間違っていてもいいから、自分なりに考えていることを話す
- 「考えている感」を出しながら話す
を意識してみましょう。
※この「間違っていてもいい」は重要です。
医療現場は、命に関わるため失敗は基本的に許されませんが、「指導医にコンサルトする中で間違いを犯す」のは問題ありません。
もしも100%正しいことが最初からできるのであれば、研修医や専攻医の期間なんて要りませんよね
指導医からは間違いを指摘されてへこむかもしれませんが、失敗をするぶん次に生かしていけるので逆に成長への近道と言えます。
◉指導医と話すタイミング/話しかけ方/話す内容を工夫してみる
◉間違っていてもいいので、自分の考えていることを話す
④逃げる
上記のように頑張って対策してもなお、指導医にやたら怒られたり、教えてもらえなかったりしてストレスが大きい場合があります。
率直に言ってヤバい指導医の可能性が高いです💦
そんな指導医と一緒に仕事している場合は、自分の精神面が壊される前に逃げることも選択肢に入れるべきです。
研修医であれば、同じ病院の中でもローテーションがあるので他の指導医に変更になるのを待てばOK。
問題なのは、専攻医の場合。
ぼくは一時期、ニガテな指導医からひたすら叱られ続けた結果、体重が5kgも落ちて夜間も眠れず早朝覚醒する=うつ状態になってしまったことがありました。
しかし、別の病院に異動になった途端、体調が改善し精神状態が治った経験があります。
特にすでに入局してしまった専攻医の場合、その病院にいる限りは同じ指導医を避けることができない可能性が高いです。
そんなときは、早めに逃げ道を考えておきましょう。
具体的には、知り合いのツテを使って他の病院を就職先として探してみたり、早めにマイナビDOCTORや医師転職ドットコム
転職サイトに登録するのは無料ですし、定期的に求人情報を紹介してくれるので、目を通すだけで自分の医師としての相場を知ることができます。
待遇の良い求人は多いので、「もしも、今の病院で働きたくなくなっても大丈夫だ」という精神安定剤にもなります。
◉指導医との仕事をするのがしんどすぎるなら、早めに転職も選択肢に入れる
まとめ:指導医と関わるのはしんどい
◎指導医と接するのがしんどい理由
- 指導医によって診療方針が違う
- 指導医によって求める研修医/専攻医像が違う
- 指導医のクセが強い
- しっかり観察
- 同僚と相談
- 接し方を工夫
- それでもダメなら逃げる(転職する)
参考になれば幸いです!
■おすすめの本
・失敗の科学
医療現場は、失敗した場合に「ただ非難する」という一番やってはいけない指導が横行しています。
しかし、本来は、失敗から学ぶことこそが一番の本質だと思います。
この本では、なぜ失敗が重要なのか?どう失敗を活かすか?など(医療現場などでの)具体的なエピソードも踏まえて詳しく書かれています。
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