KDIGO 2025 IgA腎症・IgA血管炎ガイドラインまとめ(腎臓内科医がおさえるべき変更点と日常臨床へのアクション)

専攻医

IgA腎症の新薬が出過ぎててアップデートが大変だ…

専攻医

2025のKDIGOガイドライン読まなきゃと思ってたけどまだ読めてない…何がどう変わったのか、わかりやすいまとめはないかな。

こんな人のための記事です。

今回の記事では、AIに手伝ってもらいながらKDIGO2025ガイドラインをまとめてみました。(おちば的な補足、気づきやコメント、茶々入れをときどきしています)

特に、腎臓内科医の視点で、2021版からの変化と日常臨床での使いどころに焦点をあてています。


目次

はじめに

2025年10月、KDIGOからIgA腎症(IgAN)とIgA血管炎(IgAV、旧称ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)のアップデートガイドライン(Kidney International 2025;108(Suppl 4S):S1–S71)が公表されました。

本ガイドラインは2021年版 KDIGO 糸球体疾患ガイドラインの第2章を焦点を絞ってアップデートしたものです。

2021年以降に承認された新薬(Nefecon・sparsentan)の登場と、SGLT2阻害薬のエビデンス蓄積により、IgANの治療戦略は大きくパラダイムシフトしています。

この記事では、2021年版との主な違い日常臨床で今すぐ動けるアクションポイントに絞って解説します。


🔑 2025年版の最大のポイント:「2つの治療ターゲットを同時に攻める」

2025年版で最も強調されているのが、IgANにおける腎機能喪失の2つのドライバーを同時に治療するという考え方です。

ドライバー①:IgA特異的な傷害(IgA-IC形成と糸球体傷害)

  • 病原性IgA1(galactose-deficient IgA1: Gd-IgA1)の産生を抑制する
  • Nefecon(標的放出型ブデソニド) が主役
  • → 全身性ステロイドも抗炎症効果で寄与
おちば

IgAの出どころを抑える、ということは、言うなれば、薬剤版の扁桃摘出みたいなイメージ?(ターゲットは扁桃じゃないけど)

ドライバー②:IgAN誘発性のネフロン喪失への腎内応答

  • 糸球体過剰濾過、蛋白尿のTI傷害、高血圧→ RAS阻害薬、SGLT2阻害薬、sparsentan、生活習慣修正、血圧管理

2021年版では主に「ステロイドをいつ使うか」が焦点でしたが、2025年版では複数の薬剤を組み合わせて2つのドライバーを同時に制御するという治療戦略が確立されました。


📋 2021年版 vs 2025年版:主な変更点一覧

1. 治療介入の閾値:0.5 g/dへ引き下げ

2021年版2025年版
治療検討の蛋白尿閾値1 g/d以上0.5 g/d以上(治療中・非治療中を問わず)

臨床アクション:蛋白尿が0.5 g/d以上あれば、RASi最適化だけでなく追加治療を検討する。「1 g/d未満だから様子見」はもう通用しない。

おちば

JASNに載っていた論文の影響でしょうね〜。0.5g以上あれば、積極的に治療していきましょう


2. 治療目標の明確化

蛋白尿目標:最低でも0.5 g/d未満、理想的には0.3 g/d未満

eGFR低下速度1 ml/min/年未満(生理的範囲)に抑える

血圧目標≤120/70 mmHg(2021年の130/80から更に厳格化)

臨床アクション:蛋白尿0.5 g/d未満を達成しても、さらに0.3 g/d未満を目指す姿勢が求められる。血圧は120/70以下を目標に。


3. 新薬の追加:Nefeconの位置づけ確立

推奨グレード 2B

Nefecon(経口ブデソニド、商品名Tarpeyo/Kinpeygo)は、腸管パイエル板での病原性IgA産生を選択的に抑制します。NefIgArd試験で蛋白尿減少と eGFRの低下抑制が示されました。

おちば

ちなみに、ブデソニドってなんかで聞き覚えあるような…という方、正解です。そう、シムビコートやパルミコートに入ってるICSですね!アレは吸入!あとは、潰瘍性大腸炎に、コレチメントっていう内服ブデソニドが2023年に承認されてるらしいです。ただ、今回のネフェコンはまた別薬として出るみたいですね〜

使用上の注意点(Practice Point)

  • 9ヶ月間のコース治療。治療終了後に効果が持続するかは不明
  • 追加コースのデータは未集積
  • 国・地域によって承認状況が異なる(日本での承認状況は確認が必要)
  • 全身吸収される微量ブデソニドによる副作用に注意(軽微・可逆性が多い)
おちば

Nefeconの副作用は、旭化成のホームページによると、末梢性浮腫(17%)、高血圧(12%)、筋痙攣(12%)、にきび(11%)、頭痛(10%)、上気道感染(8%)、顔面浮腫(8%)、体重増加(7%)、消化不良(7%)、皮膚炎(6%)、関節痛(6%)、白血球数増加(6%)らしいです。そんなひどいものはなさそうね。

Nefeconが使えない場合:減量ステロイド療法(後述)が代替として推奨される。

ただし…IgA腎症は人種差がある疾患として有名です。諸悪の根源(の1つ)であるGd-IgA1が、海外では腸管免疫(=GALT)でできる人が多いと言われているのに比べ、日本人では扁桃から出てる率が高いとされています。ということは、Nefeconが日本人に必ずしも有効ではないかも…?今後のエビデンスに期待!


4. ステロイド療法:「減量プロトコル」が明確化

推奨グレード 2B(Nefeconが使えない場合)

2021年版の高用量ステロイド(0.8-1.0 mg/kg/d)から、TESTINGトライアルのデータを踏まえた減量プロトコルが推奨されます。

具体的なレジメン

  • メチルプレドニゾロン **0.4 mg/kg/d(最大32 mg/d)**を2ヶ月間
  • その後、4 mg/dずつ月1回減量し、合計6〜9ヶ月で漸減終了
  • プレドニゾン換算:メチルプレドニゾロン1 mg = プレドニゾン/プレドニゾロン1.25 mg
おちば

日本国内では、もともとIgA腎症にそんなに高用量のステロイドは使っていなかったイメージ。(Pozzi法なら30mgスタート)

必須の併用対策

  • PCP(ニューモシスチス肺炎)予防
  • B型肝炎キャリアには抗ウイルス薬
  • 消化管・骨保護は国のガイドラインに従う

ステロイドリスクが高い患者の特徴(慎重に)

  • eGFR < 30 ml/min/1.73m²
  • 糖尿病・前糖尿病
  • 肥満
  • 潜在感染(ウイルス性肝炎、結核)
  • 活動性消化性潰瘍、コントロール不良の精神疾患、骨粗鬆症、白内障

5. SGLT2阻害薬の推奨追加

推奨グレード 2B

DAPA-CKD・EMPA-KIDNEYトライアルのサブグループ解析から、IgAN患者でもSGLT2阻害薬が腎機能低下抑制・心血管イベント抑制に有効と判断されました。

注意事項

  • これらの試験では参入時にRASiの最適化が必須ではなかった
  • 試験参加者は平均年齢50歳前後、eGFR 43 ml/min前後と、NefIgArd/PROTECTより高齢・腎機能が低い集団
  • 若年でeGFR > 60 ml/min/1.73m²の患者でのベネフィットは不確実

臨床アクション:特に中等度以上のCKD(G3〜)、糖尿病合併、心血管リスクが高いIgAN患者にはSGLT2阻害薬の追加を積極検討。

おちば

結構前から言われてましたよね。ただ、RASiと比べたらSGLT2iのほうがまだ歴史が浅いし、病態的にもSGLT2i単剤で保存的にみるとは今の時点ではならなさそう。


6. Sparsentan(DEARA)の推奨追加

推奨グレード 2B

Sparsentanは、RAS遮断薬とエンドセリン受容体拮抗薬の2重作用を持つ薬剤(DEARA: dual endothelin angiotensin receptor antagonist)。PROTECT試験で、最大用量に up-titrate されたRASiと比較しても有意な蛋白尿減少とeGFR低下抑制が示されました。

使用上の重要な注意

  • RASi(ACEi/ARB)との併用は禁忌(sparsentan自体にRAS遮断作用を含むため)
  • 妊娠可能な女性には確実な避妊と月1回の妊娠検査が必須(胎児毒性リスク)
  • 国・地域によって承認状況が異なる
おちば

RAS阻害薬に追加作用があるっていう意味では、エンレスト的なイメージでしょうか(スパルセンタンは合剤ではないですが)。若い方によく出すだろうから、血圧あまり下がらなければいいなあ

似たような非免疫学的な薬でちょっと新しいものとして、アトラセンタンがあります。こちらは選択的にエンドセリンを拮抗してくれるものなので、RASiとSGLT2iと併用出来ます!


7. 推奨されない治療の整理(エビデンスなし)

扁桃摘出術

  • 日本の後ろ向き研究・日本腎臓学会ガイドラインでは推奨
  • 非日本人患者には推奨しないと明記(2025年版でも変わらず)
おちば

非日本人では使わない=日本人においては効果がある可能性は残っているんですよね。体感でも血尿蛋白尿が良くなる人もいるし…まだ今後のエビデンス蓄積に期待!

以下の薬剤は、非中国人患者への使用は推奨されないと明示

  • ミコフェノール酸モフェチル(MMF):中国での試験でのみ有効性を示す3試験があるが、非中国人ではエビデンスなし。ただし、中国人患者でステロイドとの併用(スパーリング)は許容。
  • ヒドロキシクロロキン:中国での小規模試験のみ。非中国人への根拠なし。
  • アジスロマイシン、アジオチオプリン、シクロホスファミド(急速進行例を除く)、抗凝固薬、抗血小板薬、フィッシュオイル(RPGNを除く)

🗺️ リスク層別化:International IgAN Prediction Toolsを活用する

2025年版では、国際IgAN予測ツール(オンラインで無料使用可能)の積極的な活用が推奨されています。

  • 腎生検時または生検後1〜2年以内のデータを入力
  • 「7年以内にeGFRが50%低下または腎不全に至るリスク」を計算
  • 成人版・小児版、生検時・生検後のバージョンが利用可能

入力項目:年齢、人種(白人/中国人/日本人/その他)、収縮期/拡張期血圧、蛋白尿(g/d)、eGFR、RASi使用の有無、免疫抑制歴、MEST-Cスコア(M/E/S/T/C)

重要な注意点:このツールは「どの治療がより効果的か」を判断するためのものではなく、進行リスクを患者と共有するためのものです。特定の治療法の選択根拠には用いられません。


⚡ 特殊な状況のアップデート

急速進行型IgAN(RPGN)

  • 定義:3ヶ月以内にeGFRが50%以上低下(AAV・抗GBM病などを除外後)
  • 治療:KDIGO 2024 ANCA関連血管炎ガイドラインに準じてシクロホスファミド+全身ステロイド
  • リツキシマブの使用は現時点でエビデンス不十分

ネフローゼ症候群を呈するIgAN

  • MCD(微小変化型腎症)様の所見を伴う場合はMCDとして治療
  • 増殖性変化を伴うネフローゼは通常のIgAN進行リスク群として治療

妊娠・妊娠計画

  • 妊娠前にRASi、SGLT2阻害薬、sparsentan、Nefecon、ステロイドの中止を計画
  • 授乳中はSGLT2阻害薬・sparsentan禁忌。RASiが必要ならエナラプリルが選択肢
  • 妊娠計画前に腎保護治療を十分に行っておくことが望ましい

🧒 小児IgAN:アップデートポイント

  • 小児(18歳未満)には成人と同様のエビデンスが欠如→個別対応
  • RASiは蛋白尿 > 200 mg/dまたはPCR > 200 mg/g(20 mg/mmol)で全例開始
  • ステロイドの適応:PCR 500–1000 mg/gが3〜6ヶ月のRASiでも持続する場合など
  • ステロイドの用量:プレドニゾン 2 mg/kg/d(最大60 mg/m²/d) で4週間→漸減5〜6ヶ月

💉 IgA血管炎(IgAV):腎炎の管理

2025年版での重要な強調点

「腎炎予防目的でのステロイド投与は推奨しない(1B)」

これは2021年版から変わらない推奨ですが、2025年版でも特に強調されています。腎外症状のみ(孤立性腎外IgAV)の段階でステロイドを予防的に使うのはエビデンスがなく、むしろ推奨されない(グレード1B = 強い推奨)。

おちば

うーん、予防でのステロイドなんて今まで使ったことない。

IgAV腎炎(IgAVN)の治療戦略

IgAVN at risk(蛋白尿 ≥ 0.5 g/d)の管理目標はIgANと同様:

  • IgA-IC形成の抑制(ただし、Nefeconのような実証された治療はIgAVNでは未確立)
  • ネフロン喪失への応答を管理:RASi + SGLT2阻害薬 ± 生活習慣修正
  • 血圧目標:≤ 120/70 mmHg(第一選択はRASi)

ステロイドを使う場合は、IgANと同様の減量プロトコルを用い、PCP予防を必ず付加。

急速進行型IgAVN(RPGN)

  • KDIGO 2024 ANCA関連血管炎ガイドライン準拠(シクロホスファミド+ステロイド)
  • 肺・消化管・皮膚などの重篤な臓器外合併症がある場合は個別に判断
  • 血漿交換は腎炎単独では推奨できないが、重篤な腎外合併症では報告例あり

📌 日常臨床でのアクションサマリー

場面2025年版のアクション
IgANの診断時International IgAN Prediction Toolで進行リスクを定量化し患者と共有
蛋白尿 ≥ 0.5 g/d追加治療を検討(0.5 g/dが新しい閾値)
全患者RASiを最大忍容量まで増量(1B:強い推奨)
血圧管理目標 ≤ 120/70 mmHg
Nefecon使用可能な場合9ヶ月コースを検討(2B)
Nefeconが使えない場合減量ステロイド(メチルプレドニゾロン0.4 mg/kg/d→漸減)+PCP予防(2B)
中等度CKD/CV高リスクSGLT2阻害薬を追加(2B)
高蛋白尿・高進行リスクSparsentan(RASi代替として、2B)
日本人患者で適応あり扁桃摘出術±パルスステロイドを検討(非日本人には推奨しない)
RPGN合併シクロホスファミド+ステロイド(KDIGO 2024 AAV準拠)
孤立性腎外IgAVステロイドの予防投与は行わない(1B)
妊娠計画中の患者RASi・SGLT2i・sparsentan・Nefeconは中止。妊娠前に治療を最適化

まとめ:2025年版が変えたもの

KDIGOが2025年版で最も伝えたいメッセージは、IgANはもはや「ステロイドか様子見か」ではなく、複数薬剤を組み合わせて2つのドライバーを同時に制御する疾患になったということです。

Nefecon・SGLT2阻害薬・sparsentanという新たな選択肢が加わり、蛋白尿の目標も0.3 g/d未満、血圧は120/70以下へと基準が引き上がりました。一方でこれらの薬剤の承認状況や薬価は国によって大きく異なるため、日本での使用可能な薬剤を確認しながら治療戦略を立てることが重要です。

また、IgAVについては、「予防的ステロイドはしない」という基本的な立場に変化はなく、治療に際してはIgANに準じたアプローチが推奨されています。

ぜひ今日から、外来・病棟でのIgAN患者に対して0.5 g/d基準国際予測ツールの活用から始めてみてください。


参考文献 Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) IgAN and IgAV Work Group. KDIGO 2025 Clinical Practice Guideline for the Management of Immunoglobulin A Nephropathy (IgAN) and Immunoglobulin A Vasculitis (IgAV). Kidney Int. 2025;108(4S):S1–S71.


この記事は2025年KDIGOガイドライン(Kidney Int 2025;108(Suppl 4S))に基づいて作成しています。臨床判断は必ず最新情報と個々の患者状況を踏まえてください。

************

最後まで読んでいただきあリがとうございました!記事の作成はClaudeに手伝ってもらいました📝

IgA腎症は、若い方に多い慢性糸球体腎炎であり、絶対に外来で見逃したくない&きちんと治療したい疾患ですよね。

ちなみにIgA腎症のHOTな話題としては、NEJMの2026年2月号でアタシセプトとシベプレンリマブの第三層試験(RCT)の結果が出たことがあります!

まだまだ目が離せない領域ですね。今後も治療の進歩に期待です!

おちば

疑問点・議論などあれば遠慮なくコメントをどうぞ〜

■おすすめの本

・この人、腎生検していいんかなあ…と悩んだらこちらを参照しましょう。(学会ホームページでも読めます)

・腎病理の本で一番好きなのはこちらです。専門医試験の前にも熟読しました。

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医師のキャリア・育児との両立の悩みについてなどはnoteで書いたりしています。

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この記事を書いた人

アラサーの男性医師。内科専門医/透析専門医/腎臓専門医。
腎臓内科医として市中病院で勤務しつつ、フルタイム妻と一緒に実家遠方子育て中。(育児休業後)
忙し過ぎる若手医師向けに、医師のキャリア・専門医試験/レポート対策・仕事のコツ・医学の勉強などお役立ち情報を発信しています。
医師として頑張りたい、けれど家庭やプライベートも同じくらい大切にしたい!
そんな人の力になれたら嬉しいです。
趣味は音楽、読書、公園巡り。

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