先日、こんなツイートがプチバズリしました。
【研修医向け】
— おちば@内科専攻医 (@autumnleaveskid) April 22, 2022
腎機能低下してる!ってなって腎臓内科に対診を依頼する時は、
・尿検査(尿定性、尿沈査)
・血液ガス(静脈でOK)
・腹部エコーかCT(形態見るのと腎後性か見たい)
・依頼文に最近の抗菌薬や降圧薬変更あれば記載
をしてくれたら、腎臓内科医は泣いて喜ぶってマックのJKが言ってました🍔
腎機能低下って、何が原因か分からないのにジワジワ進んでくること多いし、下手をすると透析導入になるリスクもはらんでいるし、対応が難しいですよね。
そんな時は腎臓内科へコンサルトすることになります。
今日は「なぜこの4点をしているだけで、腎臓内科が泣いて喜ぶのか」について解説します。
後半には、よくありがちな「腎臓内科コンサルトの時にしなくてもいいこと2選」もまとめています。
小難しい話は抜きにしてざっくり説明するので気楽に読んでください!
腎臓内科に対診する前にしておくべきこと4選
①尿検査
尿検査は、できれば尿定性だけでなく尿沈渣もあると助かります。
尿検査で一番大事なのは
- 尿蛋白が出ているか
- 血尿が出ているか
です。
かなりざっくりですが
■蛋白尿や血尿(+)→腎炎の可能性もあるので腎生検するかも?
■蛋白尿も血尿(ー)→血行動態性変化や間質性腎炎かも?
とイメージできるからです。
ちなみに、尿沈渣を出すのは血尿の評価のためです。
「尿潜血」だけで血尿とは言えません。
ミオグロビン尿やヘモグロビン尿など、別の原因で尿潜血陽性の方もいるからです。
その尿中赤血球をみるには沈渣が必要なんです。
他にも、尿比重や円柱など、いろいろ見れます。尿は情報の宝庫です!
②血液ガス (VガスでOK)
続いては
です。
血液ガスは、その迅速さと情報量の多さで、救急外来で非常に役に立つことが知られていますよね。
腎臓内科が静脈血液ガス検査で知りたいのは、
- pH(アシドーシス)
- イオン化カルシウム
- ヘモグロビン
- カリウム
などなど。
①、②は血液ガスでしか測定できませんし、③④は一般採血と比べて結果が早く知ることができるので確認してます。
①については、腎機能が低下すると、酸が排泄できないのでアシドーシスになりますが、重曹の補充適応を考えるために重炭酸イオンのチェックはマストなんです。
また、②カルシウムも必ずチェックします。
Ca値は厳密にはイオン化カルシウムのほうが正確とも言われているので、生化と合わせて見ることが多いからです。
高Ca血症は、多尿になることから脱水→腎機能低下を起こすことがあるので、必ずチェックします。
高齢者の骨粗鬆症に対してビタミンD製剤が投与された時にありがちです。
また、腎機能低下すると腎性貧血になることがあるので③Hbをチェックします。
加えて、尿からの老廃物が出せなくなるので④カリウムが上がることが多いです。アシドーシスと高カリウム血症は関連しているので、病態を推定する意味でもチェックしておきたい項目です。
ちなみに、Aガスは取るのが大変ですし、よほど酸素化が悪いとかでなければ、静脈血液ガスで問題ありません。
③腹部エコーかCT (腎形態の分かるもの)
は、出しておいてもらえると嬉しいです。
- 腎後性のr/oができる
- 悪性腫瘍のr/oができる
- 腎萎縮してたらCKDが背景にあると推測できる
- 腫大していたら急性期の病態、腎炎や感染など疑える
- 腎生検するときのイメージができる
- 腹水や胸水、血管をみてvolumeの推定に役に立つ
など、腎形態の評価や体液評価に関する情報が手に入るからです。
もしもこの数週間以内に撮ったCT画像がある場合は、無理して撮らなくてもOKです。
CTかエコーか?で悩まれた場合は、どちらでもいいですが、
- 被曝量の少ない
- 生検のイメージがしやすい
などのメリットから、エコーのほうがオススメです。
CTのほうが形態をキッチリ見やすいし時間もかからないというメリットもあるので、どちらでも良いですけどね。
④薬剤の変更歴を紹介文に記載する
最後は、
具体的には、(最低限でも)
- 鎮痛薬
- 抗菌薬
- 降圧薬・利尿薬
をチェックして、ここ最近の開始日と中止日など記載しておいてもらえると助かります。
めんどくさいのは重々承知しています。笑
しかし、腎機能低下の原因として薬剤性はかなり多いです。
「入院中のAKI症例の約15-25%は薬剤が原因」という報告もあります。(Kidney Int 66:1613-21, 2004/ Intensive Care Med 41:1411-23, 2015.)
薬剤性の腎障害の例としては
- 鎮痛薬:ロキソニン定期で腎障害
- 抗菌薬:バンコマイシンやピペラシリンタゾバクタムで腎障害
- 降圧薬/利尿薬:夏場に脱水+血圧低下で腎障害
などが多いですね。
他にも、②で述べた骨粗鬆症に対してビタミンD製剤を始めた途端に高Ca血症と脱水になった高齢女性のパターン(いわゆるミルク・アルカリ症候群)もよく遭遇します。
とにもかくにも、薬剤歴を聞かずにAKIの診療はできないです。
薬の変化については、処方した主科の先生が一番正確に分かっているはずなので、詳しく書いてもらえると助かります。
また、他院で処方されている薬が分からなければ、診療情報提供依頼をかけてもらえるだけでも非常に嬉しいです。
ちなみに:コンサルト前にしなくてもいいこと2選
①とりあえず自己抗体の測定
とりあえず腎炎のスクリーニングとして、適当に自己抗体出しといたよ!
こういった感じで、免疫学的な検査を出してくださる先生がいます。
が、別に不要です。
もちろん原因を探るヒントにはなります。
しかし、状況に応じてこちらで追加しなければいけないことも多く、その場合に採血結果の時系列データが見にくくなってしまったり、もう一度他に外注の検査を出して二度手間になってしまったりすることが多いです。
むしろ先に述べた①〜④の情報を忘れないようにしておいてもらえると嬉しいです!
②とりあえず薬を入れる
とりあえず、腎機能が下がってきているのでSGLT2阻害薬とARNIを入れておきました!あとよろしくお願いします!
という紹介状を見たことがあります。
とりあえず「生」的なノリで、AKIの患者さんに腎保護薬を入れるのはやめましょう。
最近はCKDの腎機能悪化スピードを抑えられるとして、「腎保護薬」が色々と使われています。
しかし、CKDに「効く」からと言って、腎機能悪化が進行中の患者さんにSGLT2阻害薬やACE阻害薬/ARB/ARNIなどを処方しても、すぐに良くなるわけではありません。
なんなら、脱水を来している場合などでは更なる腎機能悪化の原因になり得ます。
腎機能悪化している場合はむやみに新薬を追加せず、コンサルトするのがいいと思います。どうしても使ってみたいときは、ひとこと腎臓内科に相談してみると良いかもです。
まとめ
①尿検査
②血液ガス
③腹部エコーかCT
④薬剤の変更歴の記載
①とりあえず免疫学的スクリーニング検査
②とりあえずの腎保護薬
これを知っているだけで、研修医なら十分合格レベルだと思います。
是非、次のコンサルトからやってみてもらえたら嬉しいです!
※たまに誤解されるのですが、腎臓内科は「採血尿検査だけ見てサラッと診断!(バーン!)」みたいな神業は、できません。笑
画像検査で腎形態をみたり、腎機能の経過をグラフにして変曲点を探したり、薬剤の変更歴を調べたりと地味な情報収集作業を積み重ねて、病態を推理して、ベターな選択肢を考えるという非常に地味な診療科なんです。(泣)
上記のように必要な検査を出してくださったり、情報をまとめておいてもらえるとスムーズに診療がすすみますので、よろしくおねがいします!
参考になれば嬉しいです!
■おすすめの本
●極論で語る腎臓内科
AKIについても最初の章に述べられています。
重要なポイントを絞って分かりやすく書いていますし、通読しやすい厚さなので、腎臓内科ローテの前には読んでおくとよいと思います。
●むかしの頭で診ていませんか?腎臓・高血圧診療をスッキリまとめました
たぶん専門外の開業医さん向けに書かれた本だと思うんですが、その優しい語り口調と内容のシンプルさが絶妙で、研修医にも丁度いい感じです。
疑問とそれに対する答えがセットになっていますし、ひとつひとつのチャプターが短いので、素朴な疑問にスッと答えてくれる本なので好きです。
■こんな記事も書いています。
ARNIについて本を読んでまとめてみました。
「忙しい内科専攻医が、なるべく効率よく、J-OSLERを終わらせる」というコンセプトで記事を作りました。テンプレもいくつか用意しているので参考にしてみてください。
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